それは奇妙な町でした

ねこしゃけ日和

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 部屋に戻ると夕飯をご馳走してもらった。
「遅かったので値引きしてもらいました。おかげでひじきを追加で買えましたよ」
 ちゃぶ台の上には筑前煮、ひじきの煮物、だし巻き玉子に卯の花が並べられている。
 きっとこの人は日本人より和食を食べていることだろう。
 ルドリックさんからごはんがよそられたお茶碗を受け取ると俺は会釈した。
「すいません。なんか」
「いえいえ。お気になさらず。鮭とばは食事が終わってからお酒と一緒にいただきましょう」
 ルドリックさんは相変わらず笑顔だった。
「えっと、それで頼みっていうのは?」
「おー。そうでしたそうでした。なに、簡単なことです。私がくにに帰っている間、パパを預かって欲しいんです」
「くにって言うとアメリカですか?」
「はい。娘が結婚するのでセントルイスに行ってきます」
「セントルイスって聞いたことあるな。なにがあるんですか?」
「銃とドラッグです」
「……なるほど」
「結婚式が終わったら地元のデトロイトにも寄ってきます」
「デトロイトも聞いたことある。どんな街でしたっけ?」
「銃とドラッグの街です」
 それ以外ないのか?
 ルドリックさんは「まあ、場所によりますけどね」と笑った。
「ですが日本に比べると危険なことに変わりはありません。私が愛する母国から無事に帰ってこられることを祈っていてください」
「……分かりました」
 冗談なのか分からないが、半分本気な気がする。
「どれくらいの期間行くんですか?」
「一週間を予定してますが分かりません。二週間以内には帰ってくると思います。その間パパを頼めますか?」
「それくらいなら」
「よかった。もちろんお礼はします。お土産も期待しててください」
「銃とドラッグ以外でお願いします」
「ハハハ! そうなると探すのに苦労しそうですね」
 ルドリックさんは面白がるが、この人のセンスは普通じゃない。お土産はあまり期待しないでおこう。
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