それは奇妙な町でした

ねこしゃけ日和

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 しばらく周囲を歩いてから夕飯の時間が近づいてきたのでホテルへ戻ることにした。
 まだ神社とか温泉に行ってないけどそれは明日にしよう。
 ホテルで酒を飲んだら高いだろうから節約のためスーパーに寄って発泡酒を一本買った。つまみも買おうと思ったけどばあさんにもらったビーフジャーキーがあることを思い出して手を引っ込める。
 早く本が売れてつまみくらい気軽に買いたいもんだ。
 レジに向かうと珍しいものがいた。若者だ。
 三人組の若い男がカゴを酒とつまみ、総菜なんかでいっぱいにしてはしゃいでいる。
 こっちはビールを買うか発泡酒を買うかで三分悩んだのに良い身分だ。
 声はうるさいし、見た目も金髪やピアスやアクセサリーで騒がしいが、この町で初めてまともに見た若者だから我慢してやろう。
 ただ香水の匂いだけは我慢できず、俺は顔の前で手を動かした。
 すると三人組の一人、金髪が気付いた。
「なに?」
「え? いや。べつになにも」
 しまった。絡まれると厄介だな。
 するともう一人のピアスが匂いを嗅ぎだした。そして残りのアクセサリーを付けた男に近づき、頭を叩く。
「お前くせえよ。香水付けすぎだっていつも言ってんだろ」
「そうか? わり」
 アクセサリー男は自分の匂いを嗅ぐが分かってなさそうだった。
 そこまで悪い奴でもなさそうだ。なんていうかある程度自制が利いている。俺は少し興味を持った。
「君達って地元の人?」
「そうだけど」金髪が答えた。「あんたはどっかから来たの?」
「鎌倉から」
「へえ。すげえじゃん。鳴くよウグイスだっけ? なんかそんなんだよな? どこか分からないけど」
 それは平安だと思っていると男達は一斉に笑い出した。俺は苦笑するしかない。
「その、聞きたいんだけど、君達も猫神様を信じてるの?」
 猫神に反応してレジのおばちゃんがちらりとこちらを見た。
 若者達は顔を見合わせ、含みのある笑みを浮かべた。
 金髪の男は笑うのを我慢しながらもしきれていない。
「まあ、なんとなくは? って感じかな」
 そこで会計が終わり、男達は二万円以上払った。
「じゃあね。鎌倉の人~」
 金髪に手を振られ、俺も軽く手を挙げた。
 発泡酒を台に置くとレジのおばちゃんは呆れていた。
「あんまりあの子達と関わらない方がいいよ」
「え? なんでですか?」
 おばちゃんは出口を見て男達が外に出たのを確認してから言う。
「昔からこの辺りで有名な不良グループだからね。暴走族のまねごとみたいなことして」
「へえ」
「まあ今は落ち着いたみたいだけどね。それも全部町長のおかげだよ。騒音がうるさいのでどうにかしてくれってみんなで頼みに行って、そしたら町長があの子達を説き伏せてくれたの。今じゃそこの運送会社で働いてる」
「ならよかったじゃないですか」
「そうなんだけど、でも今も噂はあるみたいよ。隣町にいる昔の不良仲間とつるんでるとかって」
 おばちゃんはイヤそうな顔をするが、不良が地元の友達と遊ぶなんてよくあることだ。今は働いているんだし、そこまで邪険にしなくてもいいだろう。
 俺は適当に相槌を打つと百八円を払って発泡酒を片手にスーパーを出た。
 そう言えばあいつらもねこに挨拶したり、猫神像に頭を下げたりするんだろうか? もしそうだったらなんとも拍子抜けな不良だ。
 俺は笑いを堪えながらホテルに戻った。
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