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「あたし、もう一度優花さんに会ってくる。なにか聞けるかもしれないし」
近くの定食屋で昼食を食べたあと、朝陽はそう言うと町長の屋敷に向かって歩き出した。
どうやらまだ奥さんを怪しんでいるらしい。
たしかに実行犯は無理でも計画ならできる。あれだけのやり手だ。なにか奥の手を隠していてもおかしくない。
なによりもう時間がなかった。今から新しい容疑者を見つけるのは骨が折れる。
人間はそう簡単に自分で出した答えを諦められない。俺がまだ作家にしがみついているのはただの惰性かもしれないな。
朝陽は無駄なことをしていると思っているが、俺だって当てがあるわけでもなくただ彷徨っていた。
館長はうるさかったが収穫はあった気がする。
この町にはトロッコが走っていた。ならホテルの地下にあったあのドアの向こうはその名残だろう。
なにかが分かりかけている。もしかしたら事件を解く為の材料は全て揃ってるのかもしれない。
だけど俺の頭じゃ分からない。
あれに似ている。特大のジグソーパズルに。小さいのなら解けるのに、大きくなると途端に訳が分からなくなる。あの感覚そっくりだ。
あとなにか一つ。その一つがあれば俺はこの事件を解ける気がする。でもそのなにかが分からず、歩み続けた。
祭りでなにかするのか太鼓の音が聞こえる。それに混じって木下さんの選挙演説が微かに聞き取れた。
「猫神のルールを終わらせれば若い人達は戻ってきます! 戻ってくるんです!」
そんな簡単な話じゃないだろう。
ルールがなくなっても若者は田舎から出て行く。仕事もないし、なにより夢がないからだ。
故郷を捨てる理由なんてなんでもいい。ただここにいる未来と都会にいる未来の自分を天秤に掛けて、傾いた方へ行くだけだ。
俺の天秤は今どちらに傾いている?
この事件が解けなければ今の編集部との縁は切れる可能性が高い。そしたら持ち込みかまた新人賞に投稿しないといけなくなる。 新人賞の倍率は百倍以上。場合によっては千倍を超える。
狭き門を通り抜けても売れなければまた落とされ、再び山の麓から頂上を目指さないといけない。
今の俺にそれができるだろうか?
実力だけじゃない。やる気の問題もある。
俺の中にある火は若い頃より随分火力が落ちた気がする。それを再び熱くできるだろうか?
そんな心配もあった。
俺はダメだな。成功だけを考えろって言われたのに、気が付くとすぐそれ以外を見てしまう。
何度だって顔を上げないと。それができない人間に先はない。
スーパーまで戻ってくると木下さんはまだ叫んでいた。
「若者を取り戻す! 戻って来たい町にします!」
木下さんは少しだが慣れてきたらしく、はっきりと自分の主張を言えるようになっている。
悲しいことに足を止めて聞く人は誰もいないけど。
窓越しだがスーパーの店員や客が迷惑そうにしているのが見えた。
それでも今は逆境に立ち向かう木下さんを応援したくなる気分だった。俺が応援しても一票も増えないとしても。
時間は確実に過ぎていく。いつもそうだったはずなのに、リミットが設けられた途端、まるで流れが見えるような気がした。
締め切りに追われる作家の気分だ。それも今は懐かしい。あの頃は大変だったけど、仕事があるだけ幸せだったんだろうな。
できるならあの頃に戻りたい。
「…………………………ん?」
なにか引っかかった。なんだ? なにに引っかかった?
そこへ木下さんが背中を押すように叫んだ。
「戻ってくる! 再び若者達が戻って来られる町にするため! どうかよろしくお願いします!」
戻ってくる…………。戻る…………。
「…………………あ。ああっ!」
なにに引っかかっていたか分かった気がする。
でも確認しないと。どうやって?
そうだ朝陽。朝陽はどこだ?
俺は急いでホテルに戻り、受付のスタッフに聞いた。
「朝陽は? あいつ帰ってきたか?」
「え? いえ。まだ見てませんが」
「なんでこんな時にいないんだよ」
俺はスマホを取り出すがあいつの番号が入っていない。
「くそ!」
その後、俺は町長の屋敷に行ったが朝陽はいなかった。
この町のどこかにいるはずだ。そう思って町中を走り回って朝陽を探したが、結局見つからないまま太陽が沈んだ。
近くの定食屋で昼食を食べたあと、朝陽はそう言うと町長の屋敷に向かって歩き出した。
どうやらまだ奥さんを怪しんでいるらしい。
たしかに実行犯は無理でも計画ならできる。あれだけのやり手だ。なにか奥の手を隠していてもおかしくない。
なによりもう時間がなかった。今から新しい容疑者を見つけるのは骨が折れる。
人間はそう簡単に自分で出した答えを諦められない。俺がまだ作家にしがみついているのはただの惰性かもしれないな。
朝陽は無駄なことをしていると思っているが、俺だって当てがあるわけでもなくただ彷徨っていた。
館長はうるさかったが収穫はあった気がする。
この町にはトロッコが走っていた。ならホテルの地下にあったあのドアの向こうはその名残だろう。
なにかが分かりかけている。もしかしたら事件を解く為の材料は全て揃ってるのかもしれない。
だけど俺の頭じゃ分からない。
あれに似ている。特大のジグソーパズルに。小さいのなら解けるのに、大きくなると途端に訳が分からなくなる。あの感覚そっくりだ。
あとなにか一つ。その一つがあれば俺はこの事件を解ける気がする。でもそのなにかが分からず、歩み続けた。
祭りでなにかするのか太鼓の音が聞こえる。それに混じって木下さんの選挙演説が微かに聞き取れた。
「猫神のルールを終わらせれば若い人達は戻ってきます! 戻ってくるんです!」
そんな簡単な話じゃないだろう。
ルールがなくなっても若者は田舎から出て行く。仕事もないし、なにより夢がないからだ。
故郷を捨てる理由なんてなんでもいい。ただここにいる未来と都会にいる未来の自分を天秤に掛けて、傾いた方へ行くだけだ。
俺の天秤は今どちらに傾いている?
この事件が解けなければ今の編集部との縁は切れる可能性が高い。そしたら持ち込みかまた新人賞に投稿しないといけなくなる。 新人賞の倍率は百倍以上。場合によっては千倍を超える。
狭き門を通り抜けても売れなければまた落とされ、再び山の麓から頂上を目指さないといけない。
今の俺にそれができるだろうか?
実力だけじゃない。やる気の問題もある。
俺の中にある火は若い頃より随分火力が落ちた気がする。それを再び熱くできるだろうか?
そんな心配もあった。
俺はダメだな。成功だけを考えろって言われたのに、気が付くとすぐそれ以外を見てしまう。
何度だって顔を上げないと。それができない人間に先はない。
スーパーまで戻ってくると木下さんはまだ叫んでいた。
「若者を取り戻す! 戻って来たい町にします!」
木下さんは少しだが慣れてきたらしく、はっきりと自分の主張を言えるようになっている。
悲しいことに足を止めて聞く人は誰もいないけど。
窓越しだがスーパーの店員や客が迷惑そうにしているのが見えた。
それでも今は逆境に立ち向かう木下さんを応援したくなる気分だった。俺が応援しても一票も増えないとしても。
時間は確実に過ぎていく。いつもそうだったはずなのに、リミットが設けられた途端、まるで流れが見えるような気がした。
締め切りに追われる作家の気分だ。それも今は懐かしい。あの頃は大変だったけど、仕事があるだけ幸せだったんだろうな。
できるならあの頃に戻りたい。
「…………………………ん?」
なにか引っかかった。なんだ? なにに引っかかった?
そこへ木下さんが背中を押すように叫んだ。
「戻ってくる! 再び若者達が戻って来られる町にするため! どうかよろしくお願いします!」
戻ってくる…………。戻る…………。
「…………………あ。ああっ!」
なにに引っかかっていたか分かった気がする。
でも確認しないと。どうやって?
そうだ朝陽。朝陽はどこだ?
俺は急いでホテルに戻り、受付のスタッフに聞いた。
「朝陽は? あいつ帰ってきたか?」
「え? いえ。まだ見てませんが」
「なんでこんな時にいないんだよ」
俺はスマホを取り出すがあいつの番号が入っていない。
「くそ!」
その後、俺は町長の屋敷に行ったが朝陽はいなかった。
この町のどこかにいるはずだ。そう思って町中を走り回って朝陽を探したが、結局見つからないまま太陽が沈んだ。
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