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ロビーで待っている間に外はすっかり暗くなった。
パパはさっきから丸くなって寝ている。
俺はとにかく早く帰ってこいと苛立ちながら朝陽を待っていた。
どこにいる? 全部探したぞ。用があって帰ったのか? いや、それはない。チェックアウトはまだなんだからこの町にいるはずだ。
「どこにいるんだよ」
苛立っても意味がないと分かっていても指先でソファーの肘掛けを叩くのが止まらない。
もう一回探しに行くか? でもすれ違ったら無駄だし。
どうしようか悩んでいた時だった。朝陽がどこからか帰ってきた。
俺は寝ていたパパを抱き上げ、入り口からご機嫌そうに入ってくる朝陽に駆け寄った。
「朝陽!」
「わ! なに?」
いきなり名前を呼ばれて朝陽は驚いていた。
「どこ行ってたんだよ?」
「優花さんと隣町のレストランに。旦那の愚痴で盛り上がっちゃって。そのまま温泉入ってきちゃった。見て。肌つやつや。まだ二十代でいけるでしょ?」
「いけるか! いいから早く部屋行くぞ!」
「は? なんで?」
「いいから!」
俺は朝陽を引っ張ってちょうど来ていたエレベーターに乗り込んで。ドアが閉まると朝陽は困惑していた。視線をキョロキョロと動かす。
「な、なんなのよ……? まさか一回一緒に寝ただけであたしに惚れたとか?」
「寝言は寝て言え。俺が確認したいのはビデオカメラだよ」
「ビデオ?」
四階に着くと俺は朝陽を引っ張って部屋まで連れて行った。急いで鍵を開けてもらい、中に入る。
そしてベランダのドアを開けるとビデオカメラを持って部屋に戻った。
「これってどうやって見るんだ?」
「SDカードに保存してるからパソコンで見られると思うけど」
「じゃあ貸してくれ。早く!」
「なによもう……」
朝陽は渋々鞄からノートパソコンを取り出し、立ち上げた。
そこにSDカードをぶっさして百時間近く撮ってあった動画を見始めた。
「倍速とかできないのか? 百倍速くらい」
「多分できるけど、それ全部見る気? と言うかなんで見てるの?」
「説明するのが難しいな……」
俺は言葉を探しながら拘束で流れ出した動画に目を凝らした。動画のほとんどは静止画のようになにも動かない。
「……小説ってさ。なんで書けてるか分からないことあるよな?」
「は? どういう意味?」
「いやだから、書いてる時と書き終わって読んでる時じゃ全然見え方が違うだろ? なんでこれが書けたのか分からない時ってないか?」
「ああ。そういう意味。そうね。あるかもね。書いてる時は目の前の物語に集中するけど、書き上げると俯瞰で見られるから」
「そう。それに似てる」
「似てるってなにが?」
「だから今までは目の前のことしか見てなかったんだよ。その裏側にある流れというか、物語を意識してこなかった。だけどふと冷静になると見えたんだ。この事件の裏にある物語が。ちらりと」
「それとこのビデオになんの関係があるの?」
「ないかもしれないし、あるかもしれない。それを確認するために見てるんだ」
「なにそれ?」
朝陽は呆れて肩をすくめた。
膝の上に置いていたパパは高速で動く動画が面白いらしく、テーブルに前足を掛けて画面を注視している。
俺も見逃さないように画面を見つめた。頭の中の言葉がぼそぼそと口から出る。
「プラス1。プラス2。マイナス1。マイナス2。プラス1。プラス2。プラス3。マイナス1。マイナス2……」
そして全ての動画を見終わった時、確信した。
「やっぱりだ。一台多い。となると……」
俺はすぐさまスマホで検索を始めた。そして確信すると思わず立ち上がった。
「そういうことか……。なんなんだよこの町はっ!?」
「なによいきなり叫んで……」
朝陽は俺が正気じゃないと思っているらしく、警戒していた。
「今何時だ?」
「え?」朝陽は腕時計を見た。「八時五分だけど。あ。そろそろ夕食行かないと食べられなくなっちゃうわ。どうする?」
「なに悠長なこと言ってるんだ!」
「な、なによ……。なにか起きるの?」
俺は窓の外を見つめた。そこには猫神像が小さく見える。
夜のせいかライトが間接的に当たっておどろおどろしさを醸していた。
俺はゴクリとつばを飲み込んで言った。
「このままだと、三人目が殺されるかもしれない」
パパはさっきから丸くなって寝ている。
俺はとにかく早く帰ってこいと苛立ちながら朝陽を待っていた。
どこにいる? 全部探したぞ。用があって帰ったのか? いや、それはない。チェックアウトはまだなんだからこの町にいるはずだ。
「どこにいるんだよ」
苛立っても意味がないと分かっていても指先でソファーの肘掛けを叩くのが止まらない。
もう一回探しに行くか? でもすれ違ったら無駄だし。
どうしようか悩んでいた時だった。朝陽がどこからか帰ってきた。
俺は寝ていたパパを抱き上げ、入り口からご機嫌そうに入ってくる朝陽に駆け寄った。
「朝陽!」
「わ! なに?」
いきなり名前を呼ばれて朝陽は驚いていた。
「どこ行ってたんだよ?」
「優花さんと隣町のレストランに。旦那の愚痴で盛り上がっちゃって。そのまま温泉入ってきちゃった。見て。肌つやつや。まだ二十代でいけるでしょ?」
「いけるか! いいから早く部屋行くぞ!」
「は? なんで?」
「いいから!」
俺は朝陽を引っ張ってちょうど来ていたエレベーターに乗り込んで。ドアが閉まると朝陽は困惑していた。視線をキョロキョロと動かす。
「な、なんなのよ……? まさか一回一緒に寝ただけであたしに惚れたとか?」
「寝言は寝て言え。俺が確認したいのはビデオカメラだよ」
「ビデオ?」
四階に着くと俺は朝陽を引っ張って部屋まで連れて行った。急いで鍵を開けてもらい、中に入る。
そしてベランダのドアを開けるとビデオカメラを持って部屋に戻った。
「これってどうやって見るんだ?」
「SDカードに保存してるからパソコンで見られると思うけど」
「じゃあ貸してくれ。早く!」
「なによもう……」
朝陽は渋々鞄からノートパソコンを取り出し、立ち上げた。
そこにSDカードをぶっさして百時間近く撮ってあった動画を見始めた。
「倍速とかできないのか? 百倍速くらい」
「多分できるけど、それ全部見る気? と言うかなんで見てるの?」
「説明するのが難しいな……」
俺は言葉を探しながら拘束で流れ出した動画に目を凝らした。動画のほとんどは静止画のようになにも動かない。
「……小説ってさ。なんで書けてるか分からないことあるよな?」
「は? どういう意味?」
「いやだから、書いてる時と書き終わって読んでる時じゃ全然見え方が違うだろ? なんでこれが書けたのか分からない時ってないか?」
「ああ。そういう意味。そうね。あるかもね。書いてる時は目の前の物語に集中するけど、書き上げると俯瞰で見られるから」
「そう。それに似てる」
「似てるってなにが?」
「だから今までは目の前のことしか見てなかったんだよ。その裏側にある流れというか、物語を意識してこなかった。だけどふと冷静になると見えたんだ。この事件の裏にある物語が。ちらりと」
「それとこのビデオになんの関係があるの?」
「ないかもしれないし、あるかもしれない。それを確認するために見てるんだ」
「なにそれ?」
朝陽は呆れて肩をすくめた。
膝の上に置いていたパパは高速で動く動画が面白いらしく、テーブルに前足を掛けて画面を注視している。
俺も見逃さないように画面を見つめた。頭の中の言葉がぼそぼそと口から出る。
「プラス1。プラス2。マイナス1。マイナス2。プラス1。プラス2。プラス3。マイナス1。マイナス2……」
そして全ての動画を見終わった時、確信した。
「やっぱりだ。一台多い。となると……」
俺はすぐさまスマホで検索を始めた。そして確信すると思わず立ち上がった。
「そういうことか……。なんなんだよこの町はっ!?」
「なによいきなり叫んで……」
朝陽は俺が正気じゃないと思っているらしく、警戒していた。
「今何時だ?」
「え?」朝陽は腕時計を見た。「八時五分だけど。あ。そろそろ夕食行かないと食べられなくなっちゃうわ。どうする?」
「なに悠長なこと言ってるんだ!」
「な、なによ……。なにか起きるの?」
俺は窓の外を見つめた。そこには猫神像が小さく見える。
夜のせいかライトが間接的に当たっておどろおどろしさを醸していた。
俺はゴクリとつばを飲み込んで言った。
「このままだと、三人目が殺されるかもしれない」
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