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「逃げてっ!」と叫んだのはようやく来た朝陽だった。
きっとこの状況を見て反射的に声を出したんだろう。パパを抱いたまま神社の外で心配そうに叫んでいた。
俺が朝陽の方を向いた時だった。
大きめのプシュッという音がして、俺の背後でなにかが壊れた。
なんだと思って後ろを向くと祭りののぼり旗を支えている水の入ったプラスチックの重りに穴が開いている。
俺がハッとして振り向くと大槻さんの持っている銃から煙が上がっていた。
「きゃあああああぁっ!」
朝陽が悲鳴を上げる。その視線は俺の方を向いていた。
視線の先では俺の脇腹辺りで服が引き裂かれている。
撃たれた? そう思った瞬間恐ろしくなり、俺は反射的に屈んだ。
だがすぐにそれが狙いだと気付いた。
顔を上げると大槻さんはいなかった。
「ど、どこに消えた?」
「あそこあそこ!」
教えてくれたのは木下さんだった。神社の方を指差しているが暗くてよく見えない。
「どこっ!?」
「階段だ! あそこにある階段があっちの大きな階段に繋がってるんだよ!」
「と言うことは神社に向かったのか。でもなんで?」
「きっとあれだ。神社の裏から逃げる気だよ。あそこは山道に繋がってるから。ここらの山は複雑だから入り込まれたら見つけられないぞ!」
見つけられたとしても夜の山で殺人犯を追いたくない。
でも逃げられるのはダメだ。必ず次の死人が出る。
「追うぞ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
駆けつけた朝陽は心配していた。
「警察なら呼んでおいたから待ってましょうよ。相手は銃を持ってるのよ?」
「怖いのはナイフの方だよ。あれはただの脅しだ」
「脅しって撃ったじゃない!」
「かすっただけだ」
俺は撃たれたところの服をめくった。そこにはホテルに出る前、保険で入れておいたビーフジャーキーの袋に傷がついている。
「え? ダサ。なんでそんなもの巻いてるのよ?」
「ナイフ対策にだよ。いいから追うぞ!」
「なに言ってるのよ? そんなことしたら殺されるわよ!?」
「逆だ。殺せないんだよ。あの人は」
「……は?」
ポカンとする朝陽を置いて俺は階段へと向かった。
後ろからサイレンの音が聞こえてくる。足止めできれば大槻さんを捕まえられるだろう。
俺は階段の上にライトを向けた。すると横道から大槻さんがやってくる。
相変わらず優しく笑ったまま銃をこちらに向け、放った。
すると持っていたライトのガラスがパリンと音を立てて割られ、中身が潰され光が消えたせいで姿が見えなくなる。
「ひいっ!」
俺はびっくりして体を縮ませながらライトを手放した。震えながら手を見るが、痺れるだけで怪我はしてない。
ホッとしていると暗がりから大槻さんが階段を登る足音だけが聞こえた。
俺の後ろで朝陽は怯えながら聞いてくる。
「ほ、本当に追うの?」
「……お前は待ってろ。万が一があったら危ないからな」
「う、うん……。あ!」
「え?」と俺が振り向いた時、パパが朝陽の腕から飛び降り、階段を登っていった。
「おい! パパ! 待て!」
俺は慌ててパパを追って行く。
視界の端で木下さんがこっちに向かって来ているのが分かった。
「危ないぞ! 警察に任せるんだ!」
木下さんは心配しながら階段を登ってくる。
そうこうしている間に大槻さんはスタスタと階段を登り切り、余裕を持って振り返った。
灯籠に照らされたその笑みは一見穏やかさと好奇心と狂気が内包しているように見えるが、その奥にあるのは虚無な気がした。
登り切るまでがんばっても四十秒はかかる。その間に山へと逃げ込まれた完全に終わりだ。そしてそうなる可能性はかなり高かった。
今から捕まえるのはほとんど不可能だろう。それでも俺は大槻さんを追って階段を登った。
理由は自分でも分かりきっていない。
ただ上げるとすればこの奇妙な物語がどんな終わりを迎えるのかが知りたかったから。そう表現するのが正しいだろう。
あと十秒で階段を登りきれるいうところまで到達した時だった。
俺の前を走っていたパパがピタリと止まり、そして突風が吹いた。
きっとこの状況を見て反射的に声を出したんだろう。パパを抱いたまま神社の外で心配そうに叫んでいた。
俺が朝陽の方を向いた時だった。
大きめのプシュッという音がして、俺の背後でなにかが壊れた。
なんだと思って後ろを向くと祭りののぼり旗を支えている水の入ったプラスチックの重りに穴が開いている。
俺がハッとして振り向くと大槻さんの持っている銃から煙が上がっていた。
「きゃあああああぁっ!」
朝陽が悲鳴を上げる。その視線は俺の方を向いていた。
視線の先では俺の脇腹辺りで服が引き裂かれている。
撃たれた? そう思った瞬間恐ろしくなり、俺は反射的に屈んだ。
だがすぐにそれが狙いだと気付いた。
顔を上げると大槻さんはいなかった。
「ど、どこに消えた?」
「あそこあそこ!」
教えてくれたのは木下さんだった。神社の方を指差しているが暗くてよく見えない。
「どこっ!?」
「階段だ! あそこにある階段があっちの大きな階段に繋がってるんだよ!」
「と言うことは神社に向かったのか。でもなんで?」
「きっとあれだ。神社の裏から逃げる気だよ。あそこは山道に繋がってるから。ここらの山は複雑だから入り込まれたら見つけられないぞ!」
見つけられたとしても夜の山で殺人犯を追いたくない。
でも逃げられるのはダメだ。必ず次の死人が出る。
「追うぞ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
駆けつけた朝陽は心配していた。
「警察なら呼んでおいたから待ってましょうよ。相手は銃を持ってるのよ?」
「怖いのはナイフの方だよ。あれはただの脅しだ」
「脅しって撃ったじゃない!」
「かすっただけだ」
俺は撃たれたところの服をめくった。そこにはホテルに出る前、保険で入れておいたビーフジャーキーの袋に傷がついている。
「え? ダサ。なんでそんなもの巻いてるのよ?」
「ナイフ対策にだよ。いいから追うぞ!」
「なに言ってるのよ? そんなことしたら殺されるわよ!?」
「逆だ。殺せないんだよ。あの人は」
「……は?」
ポカンとする朝陽を置いて俺は階段へと向かった。
後ろからサイレンの音が聞こえてくる。足止めできれば大槻さんを捕まえられるだろう。
俺は階段の上にライトを向けた。すると横道から大槻さんがやってくる。
相変わらず優しく笑ったまま銃をこちらに向け、放った。
すると持っていたライトのガラスがパリンと音を立てて割られ、中身が潰され光が消えたせいで姿が見えなくなる。
「ひいっ!」
俺はびっくりして体を縮ませながらライトを手放した。震えながら手を見るが、痺れるだけで怪我はしてない。
ホッとしていると暗がりから大槻さんが階段を登る足音だけが聞こえた。
俺の後ろで朝陽は怯えながら聞いてくる。
「ほ、本当に追うの?」
「……お前は待ってろ。万が一があったら危ないからな」
「う、うん……。あ!」
「え?」と俺が振り向いた時、パパが朝陽の腕から飛び降り、階段を登っていった。
「おい! パパ! 待て!」
俺は慌ててパパを追って行く。
視界の端で木下さんがこっちに向かって来ているのが分かった。
「危ないぞ! 警察に任せるんだ!」
木下さんは心配しながら階段を登ってくる。
そうこうしている間に大槻さんはスタスタと階段を登り切り、余裕を持って振り返った。
灯籠に照らされたその笑みは一見穏やかさと好奇心と狂気が内包しているように見えるが、その奥にあるのは虚無な気がした。
登り切るまでがんばっても四十秒はかかる。その間に山へと逃げ込まれた完全に終わりだ。そしてそうなる可能性はかなり高かった。
今から捕まえるのはほとんど不可能だろう。それでも俺は大槻さんを追って階段を登った。
理由は自分でも分かりきっていない。
ただ上げるとすればこの奇妙な物語がどんな終わりを迎えるのかが知りたかったから。そう表現するのが正しいだろう。
あと十秒で階段を登りきれるいうところまで到達した時だった。
俺の前を走っていたパパがピタリと止まり、そして突風が吹いた。
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