16 / 67
16
しおりを挟む
食事が終わると小白はお風呂に入って歯を磨いて布団に入った。
寝付きがよく、気付いたら眠っている。
真広と真理恵はそれを確認してから居間でお茶を飲んでいた。
「伯父さんから連絡はあったんですか?」
「いや、なかったよ。でもきっと連絡してくるさ。その時にどうやってあの子を帰せばいいか聞くよ。僕が車で送ってもいい」
真広が寂しそうにするので真理恵はやれやれといった感じになる。
「まあでも強い子でしたね。普通ならあれくらいの子供が知らない人の家に泊まれば泣き出してもおかしくないですし」
「そうだな。うん。多分、慣れてるんだろうな」
「慣れてる?」
「大変だったってことだよ」
真広は溜息をついた。真理恵は微かに眉をひそめた。
「なにか聞いたんですか?」
「いや。ただ、その、分かったそうだ」
「なにが?」
「ねこになる方法が」
真理恵は益々眉をひそめた。真広は肩をすくめる。
「ねこに聞いたらしい。赤いねこに」
「そんなのただの妄想ですよ」
「かもしれない。だけど、そうじゃないかもしれない」
「ねこの言葉が分かるって? そう言ったんですか?」
「いや」真広はかぶりを振った。「なにも言わなかった。でも分からないとも言ってない。それにそれはどうでもいい。あの子は大変だった。そしてこれからも」
しんみりする真広に真理恵は姿勢を正して苦笑した。
「なにが言いたいの?」
真広は問いに答えなかった。ただ黙って自分の意思を示す。そういう男だった。
真理恵はうんざりしそうになったが、それでもこの兄を責める気にはなれなかった。
真理恵は真広の言いたいことをなんとなくは分かるが、現実的ではないとも思っていた。現実的な問題も、気持ちの面も、頭の片隅にある選択肢を取るにはあまりにも壁となる。なによりようやく訪れた平穏が崩れ去るのが恐ろしかった。
「なんにせよ。明日が最後です」
真理恵はそう言うが、真広はやはりなにも言わなかった。
寝付きがよく、気付いたら眠っている。
真広と真理恵はそれを確認してから居間でお茶を飲んでいた。
「伯父さんから連絡はあったんですか?」
「いや、なかったよ。でもきっと連絡してくるさ。その時にどうやってあの子を帰せばいいか聞くよ。僕が車で送ってもいい」
真広が寂しそうにするので真理恵はやれやれといった感じになる。
「まあでも強い子でしたね。普通ならあれくらいの子供が知らない人の家に泊まれば泣き出してもおかしくないですし」
「そうだな。うん。多分、慣れてるんだろうな」
「慣れてる?」
「大変だったってことだよ」
真広は溜息をついた。真理恵は微かに眉をひそめた。
「なにか聞いたんですか?」
「いや。ただ、その、分かったそうだ」
「なにが?」
「ねこになる方法が」
真理恵は益々眉をひそめた。真広は肩をすくめる。
「ねこに聞いたらしい。赤いねこに」
「そんなのただの妄想ですよ」
「かもしれない。だけど、そうじゃないかもしれない」
「ねこの言葉が分かるって? そう言ったんですか?」
「いや」真広はかぶりを振った。「なにも言わなかった。でも分からないとも言ってない。それにそれはどうでもいい。あの子は大変だった。そしてこれからも」
しんみりする真広に真理恵は姿勢を正して苦笑した。
「なにが言いたいの?」
真広は問いに答えなかった。ただ黙って自分の意思を示す。そういう男だった。
真理恵はうんざりしそうになったが、それでもこの兄を責める気にはなれなかった。
真理恵は真広の言いたいことをなんとなくは分かるが、現実的ではないとも思っていた。現実的な問題も、気持ちの面も、頭の片隅にある選択肢を取るにはあまりにも壁となる。なによりようやく訪れた平穏が崩れ去るのが恐ろしかった。
「なんにせよ。明日が最後です」
真理恵はそう言うが、真広はやはりなにも言わなかった。
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。
「だって顔に大きな傷があるんだもん!」
体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。
実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。
寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。
スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。
※フィクションです。
※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる