路地裏のアン

ねこしゃけ日和

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 翌日の朝。
 三人は朝食を食べ終わると車に乗って海の方へと下った。
 後部座席に乗った小白が窓を開けて外を見ていると真理恵が振り向いて注意する。
「風で帽子が飛んじゃうわよ?」
「うん」
 小白はつばを持つとくるりと後ろに回して外を眺め続けた。
 真理恵は小さく嘆息して前を向き、スマホの地図アプリを触った。
「次は左って言ってますけど」
「そうだな。でもこのまま降りて、そこから国道を曲がるよ。その方が楽だ」
「行ったことあるの?」
「いや。でもまあ、大丈夫だろう」
 何事もきちんとしたい真理恵は不満そうだったが、ここらの道は真広の方がよく知っている。母親を乗せてよく近くの病院に通っていた。
 真広は十八歳で免許を取り、三十五歳になるまで数え切れないほど自宅と病院を行き来している。母親を海に連れて行ってあげたこともある。
 真理恵も運転免許は持っているが基本はバスと電車で通勤しているし、休日に乗ることもない。母親も真広の運転じゃないとイヤだと言うのでほとんどペーパードライバーだ。一緒に病院へ行くことはあったが、良い思い出はほとんどない。
 真理恵は窓の外を見つめた。自宅からそれほど離れていないのに知らない景色ばかりだった。自分がこの町をどう思っているか分かったような気がした。
「あれなに?」
 後ろで小白が尋ねた。真広は軽く振り向いてから小白の指さす方をチラリと見た。
「ああ。あれは船だよ。淡路の方に行ってるんだろうね」
「あわじって?」
「本州と四国の間にある島って言っても分からないかな。まあ、大きな島だよ。あとタマネギがおいしい」
「タマネギは好かん」
 小白には真広の説明は分からなかったが、それでも気になってその船が見えなくなるまで眺めていた。
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