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水族館には家から三十分ほどで着いた。
休日ということもあり親子連れやカップルで賑わっている。
真理恵は「私が出します」と言って入場券を買うため少し緊張して窓口に向かった。
「えっと、大人二人と子供一人で」
「お子さんはおいくつですか?」と窓口の若い女性は笑顔で尋ねる。
「え? いや、その、私の子ではないんですけど。親戚の子で」
「はあ。えっと、幼児ですと無料となっていまして」
「幼児って?」
「六歳までです」
「ああ。じゃあそうです。五才なんで。あれ? だったはず」
真理恵は気になって振り返った。小白は近くの壁に描かれた魚の絵を見つめている。
「あなた何才だった?」
真広は小白に「聞いてるよ」と伝える。
すると小白は真理恵の方を見ずに小さな左手を開いて向けた。
それを見て真理恵は恥ずかしくなり、窓口の女性は笑っていた。
「五才みたいです」
「そうですね。では大人二名で千四百円になります」
真理恵は財布からお金を出し、チケットを買って二人の元に戻った。
「呼んだ時くらいこっちを見なさい」
真理恵は小白にそう言った。
「シャケ探してた。でもおらん」
真理恵は溜息をついた。すると近くを別の親子連れが通る。母親が娘の手を握って歩いていた。真理恵は右手を開け閉めし、小さく息を吐く。
「じゃあ行きましょうか。シャケを探しに」
水族館は思いのほか楽しかった。大人になったので楽しめないと思っていた二人だが、見たこともない魚や生き物に顔がほころぶ。
一方の小白は真剣そのものだった。
「おいしそう。まずそう。食べてみないとわからん。食べてみなくてもわかる」
そう言って水槽を泳ぐ魚を審査していく。
「やめさない」と真理恵は注意した。
「やめん。ねこだから。ねこはこう見る」
真理恵はむっとするが真広は笑っていた。
「まあいいじゃないか」真広は伊勢エビを見た。「たしかにおいしそうだよ」
真理恵は顔をしかめてかぶりを振る。そして呆れて言った。
「もしこの世の全ての子供が男性に育てられたらとんでもない治安になるでしょうね」
真広は苦笑したが、否定はできなかった。
「そうなったら子供の方がしっかりするさ」
「だといいですけど」
真理恵はそう言いながらも自分とは関係ない話だと思おうとした。
それからもふれあいコーナーでヒトデを触ったり、イルカショーを見たりしたが、昼食を食べに入ったレストランで小白は頬を膨らませていた。
「おらんかった。アジもイワシもおったのに」
「そうだな」真広は言った。「多分だけどシャケは飼うのが難しいんだろう。滝とかを用意しないといけないのかもしれない」
「なんで?」
「シャケは滝を登るんだよ。産まれた川に戻るためにね。詳しくは知らないけど」
「ふうん。じゃあシャケは今も戻ってるのか」
小白は納得してボンゴレのパスタをフォークでくるくると巻いた。
真理恵は面白そうにして尋ねる。
「なんでそんなにシャケが好きなの?」
「おいしいから」
身も蓋もない答えだった。
「あとかっこいい。口のところが曲がってる」
「口が曲がってたら格好いいの?」
小白は顔を上げて逆に聞いた。
「かっこよくないの?」
真理恵は少し困りながらも「まあ……、格好いいかもしれないわね」と答えた。そして子供の感性はよく分からないが、自分も昔こんなことを言って大人を困らせていたのかもしれないと考えた。
食事が終わると小白は二人を引き連れて水族館を回った。だがシャケはどこにもいなかった。それでも小白は不機嫌そうではなくなっていた。
「全員帰れてるってことか」
小白は満足そうにして水槽から離れ、二人と共にお土産売り場に向かった。
お土産売り場にはぬいぐるみやキーホルダー、クッキーなどが置いてあった。
「なにか欲しいものはある?」
真広の問いに小白はかぶりを振った。
「いらん」
「なにも? 遠慮しないでいい。ほら。イルカとかラッコとか色々いるよ」
「いらん」
真理恵はアニメとのコラボグッズを指さした。
「ほら。箱ねこですって。四角いねこよ」
「いらん。ねこは四角くない」
顔を見合わせる二人に小白は告げた。
「ねこはものを持たん」
「……なるほど」と二人は納得した。
真理恵は小白を見てあることに気付いて近くにあった野球帽を手に取った。
「じゃあこれは? 帽子ならいいんじゃない?」
「いらん。もうある」
「でもこっちは魚のよ?」
「肉球でいい。ねこだから」
小白の帽子は肉球マークが付いていた。汚れも目立つがお気に入りみたいだ。
二人はなにか買ってあげたい気分だったが小白にそう言われて諦めた。
最後にパネルの前で並び、ぎこちない表情で写真を撮ると三人は水族館を後にした。
休日ということもあり親子連れやカップルで賑わっている。
真理恵は「私が出します」と言って入場券を買うため少し緊張して窓口に向かった。
「えっと、大人二人と子供一人で」
「お子さんはおいくつですか?」と窓口の若い女性は笑顔で尋ねる。
「え? いや、その、私の子ではないんですけど。親戚の子で」
「はあ。えっと、幼児ですと無料となっていまして」
「幼児って?」
「六歳までです」
「ああ。じゃあそうです。五才なんで。あれ? だったはず」
真理恵は気になって振り返った。小白は近くの壁に描かれた魚の絵を見つめている。
「あなた何才だった?」
真広は小白に「聞いてるよ」と伝える。
すると小白は真理恵の方を見ずに小さな左手を開いて向けた。
それを見て真理恵は恥ずかしくなり、窓口の女性は笑っていた。
「五才みたいです」
「そうですね。では大人二名で千四百円になります」
真理恵は財布からお金を出し、チケットを買って二人の元に戻った。
「呼んだ時くらいこっちを見なさい」
真理恵は小白にそう言った。
「シャケ探してた。でもおらん」
真理恵は溜息をついた。すると近くを別の親子連れが通る。母親が娘の手を握って歩いていた。真理恵は右手を開け閉めし、小さく息を吐く。
「じゃあ行きましょうか。シャケを探しに」
水族館は思いのほか楽しかった。大人になったので楽しめないと思っていた二人だが、見たこともない魚や生き物に顔がほころぶ。
一方の小白は真剣そのものだった。
「おいしそう。まずそう。食べてみないとわからん。食べてみなくてもわかる」
そう言って水槽を泳ぐ魚を審査していく。
「やめさない」と真理恵は注意した。
「やめん。ねこだから。ねこはこう見る」
真理恵はむっとするが真広は笑っていた。
「まあいいじゃないか」真広は伊勢エビを見た。「たしかにおいしそうだよ」
真理恵は顔をしかめてかぶりを振る。そして呆れて言った。
「もしこの世の全ての子供が男性に育てられたらとんでもない治安になるでしょうね」
真広は苦笑したが、否定はできなかった。
「そうなったら子供の方がしっかりするさ」
「だといいですけど」
真理恵はそう言いながらも自分とは関係ない話だと思おうとした。
それからもふれあいコーナーでヒトデを触ったり、イルカショーを見たりしたが、昼食を食べに入ったレストランで小白は頬を膨らませていた。
「おらんかった。アジもイワシもおったのに」
「そうだな」真広は言った。「多分だけどシャケは飼うのが難しいんだろう。滝とかを用意しないといけないのかもしれない」
「なんで?」
「シャケは滝を登るんだよ。産まれた川に戻るためにね。詳しくは知らないけど」
「ふうん。じゃあシャケは今も戻ってるのか」
小白は納得してボンゴレのパスタをフォークでくるくると巻いた。
真理恵は面白そうにして尋ねる。
「なんでそんなにシャケが好きなの?」
「おいしいから」
身も蓋もない答えだった。
「あとかっこいい。口のところが曲がってる」
「口が曲がってたら格好いいの?」
小白は顔を上げて逆に聞いた。
「かっこよくないの?」
真理恵は少し困りながらも「まあ……、格好いいかもしれないわね」と答えた。そして子供の感性はよく分からないが、自分も昔こんなことを言って大人を困らせていたのかもしれないと考えた。
食事が終わると小白は二人を引き連れて水族館を回った。だがシャケはどこにもいなかった。それでも小白は不機嫌そうではなくなっていた。
「全員帰れてるってことか」
小白は満足そうにして水槽から離れ、二人と共にお土産売り場に向かった。
お土産売り場にはぬいぐるみやキーホルダー、クッキーなどが置いてあった。
「なにか欲しいものはある?」
真広の問いに小白はかぶりを振った。
「いらん」
「なにも? 遠慮しないでいい。ほら。イルカとかラッコとか色々いるよ」
「いらん」
真理恵はアニメとのコラボグッズを指さした。
「ほら。箱ねこですって。四角いねこよ」
「いらん。ねこは四角くない」
顔を見合わせる二人に小白は告げた。
「ねこはものを持たん」
「……なるほど」と二人は納得した。
真理恵は小白を見てあることに気付いて近くにあった野球帽を手に取った。
「じゃあこれは? 帽子ならいいんじゃない?」
「いらん。もうある」
「でもこっちは魚のよ?」
「肉球でいい。ねこだから」
小白の帽子は肉球マークが付いていた。汚れも目立つがお気に入りみたいだ。
二人はなにか買ってあげたい気分だったが小白にそう言われて諦めた。
最後にパネルの前で並び、ぎこちない表情で写真を撮ると三人は水族館を後にした。
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