路地裏のアン

ねこしゃけ日和

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 あれから少し経った。
 真広は午後からのシフトにしてもらい、休日も月曜と金曜に変えてもらった。
 真理恵は相変わらず派遣の仕事に勤しんでいる。
 今日は日曜日。真広が午後から夜まで働いている間、真理恵は小白の面倒を見ていた。
「いい加減にしなさい!」
 古い家に真理恵の声が響いた。さっきから小白は家の中を走り回っていた。そのせいで家のあちこちがギシギシと軋む。
「やめん」
 真理恵は腰に手を当て、小白を見下ろした。
「ああそう。理由を聞きましょう。この家を解体しようとする言い分を」
「ねこになるために必要だから。キャットトレーニング」
 小白は堂々と答えるが真理恵は眉をひそめる。
「トレーニングはいいことね。だけどそれを家の中でする必要はないでしょう?」
「それはない。でもしかたなくここでやってる。マリエが出るなって言うから」
「……そうね。じゃあ公園に行きましょう」
 すると小白は目を輝かせた。
「行く。ねこは公園に行くもの」
「そうなの? ああ。でもそうかもしれないわね。砂場とかによくあるし。どちらにせよこのままだと兄さんが帰ってくるまでにこの家はなくなってしまうわ」
「それはかわいそう」
「ええ。本当に。ほら。帽子を被って。脱げないようにね」
 真理恵は小白に準備をさせるとスマホと財布を持って家から出た。そして記憶の彼方にあった公園の場所を思い起こし、そちらへ足を向ける。
 真理恵の大きな歩幅に合わせ、小白は少し後ろをついて行った。
 十分もすると広いとも狭いとも言えないサイズの公園が現れた。それは真理恵がまだ小さい頃に兄と通っていた公園だった。
「……遊具が減ったわね」
 はっきりとした記憶はないが、昔より随分殺風景になっていた。そして消えた遊具を思い出すとそれは楽しかったが危なかったものばかりだった。
 少し前の真理恵なら過保護だと思っていたが、今なら安全の方が大事だという意見もある程度は同意できた。
 小白は真理恵を見上げた。真理恵は「気を付けて」と言って送り出す。
 小白が遊具の方に走っていくと真理恵は小さく溜息をついた。これじゃまるで……。
 既に何人かの子供達が公園で遊び、日陰のベンチにはその保護者が座っていた。
 真理恵が日の当たっているベンチに座ろうとすると母親達と目が合った。真理恵はどういう顔をしていいか分からず、とにかく微笑を浮かべて会釈した。すると母親達も同じように笑い、会釈する。
 ベンチに座ると真理恵はそれだけで疲れた。それもこれも真広があんなことを言い出すからだと思った。
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