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病院の窓から空を見つめながら高野は深く溜息をついた。
「お前らに出会ったのはそんな時だった。本当は葬儀になんていかないつもりだったんだよ。姉さんはわがままで、いつも俺のことを見下してたからな。だけど最後くらい顔を出すことにした。小白の母親の時は葬儀にすら出られなかったからな。一応肉親だ。ないと思うけど、後悔したくなかった。でも行ってよかったよ。お前らに会えたからな」
真理恵は不思議がった。
「……その、どうしてわたし達なんです?」
高野はフッと笑った。
「あの姉さんのワガママに最後まで付き合ったんだ。優しくないとできない。あの子にはちゃんとした人の優しさを感じながら育って欲しかった。少なくともあの子の母親ならそうしたはずだ」
高野は俯いて「……俺にはできない」と寂しそうに呟いた。
真広と真理恵は複雑そうな笑みを浮かべて互いに顔を見合わせた。なんであれ結局二人は高野の思う通りに動いていた。あるいはそれ以上かもしれない。
それが嬉しいような悔しいような気がして、なんだか変な気持ちになる。
すると高野はゴホゴホと咳をしだした。無理して話しすぎたからだが、それでも話さなければいけないことだった。
真理恵は心配して「看護婦さんを呼んできます」と言って病室を出た。
残った真広は静かに伯父を見つめた。そして自分が甘かったことを知る。
真広は自分の方が小白を幸せにできると思ってここに来た。だが実際伯父ほどの覚悟があるのかと聞かれれば今はまだ首を縦には振れない。
おそらく高野は病気のせいで仕事をクビになったのだろう。それでも小白を育てるために日雇いに出てなんとか暮らしていた。
非正規の真広もいつそうなるか分からないので気持ちはよく分かった。不安だから体を動かし、そのせいで益々壊れていく。その悪循環から逃れられない。
だけどそれは一人ならだ。誰かが協力すればもっと楽になれる。
残酷な事実だが、問題は誰も助けてくれないとことより、助けを求めることが下手なことにある。
真広もまた誰かを頼るということが下手な男なので高野のつらさは理解できた。
だからこそ、自分がなにをすべきなのかもよく分かっている。
「小白を養子にしようと思っています」
それを聞いて高野は目を見開いて真広を見た。そして安心したようにその瞳を閉じた。
「…………そうか」
「そうです」
「よかった」
高野は溜め込んでいた不安を吐き出すように深く息を吐いた。
バトンは渡され、今度は真広が不安になる。
「……もちろん、あの子次第ですけど」
高野は微笑んだ。
「大丈夫だ。あれは強い」
それは小白のことを信じているから出る言葉だった。
真広もその通りだと思う。小白には一人で生きていけるだけの力がある。あんなに小さいのにしっかりとした軸があった。大人にだってそれはない者が多い。
「……今度連れて来ます。お見舞いに」
「いや、いい」
「でも」
「もう、別れは済ました」
「え?」
驚く真広はテーブルの上にテレフォンカードが置いてあるのに気付いた。カードには既に穴が空いていた。
高野はまた窓の外を見つめた。先ほどまでの天気がウソのように青空を分厚い雲が覆っていく。明るかった景色がどんどん暗くなっていった。
「……さっき、お前らが来る前に電話したんだ。そこで言っておいた。これからはお前らと暮らすようにって。俺はまた一人に戻る。一人で生きて、一人で死んでいく。そんな人間がこれから幸せになる奴の足を引っ張るわけにはいかない」
高野はこれから起こる全ての出来事を受けて入れているようだった。
その覚悟に真広は思わず黙り込む。
看護婦が来る前、高野は最後に言った。
「あとは頼んだ」
「お前らに出会ったのはそんな時だった。本当は葬儀になんていかないつもりだったんだよ。姉さんはわがままで、いつも俺のことを見下してたからな。だけど最後くらい顔を出すことにした。小白の母親の時は葬儀にすら出られなかったからな。一応肉親だ。ないと思うけど、後悔したくなかった。でも行ってよかったよ。お前らに会えたからな」
真理恵は不思議がった。
「……その、どうしてわたし達なんです?」
高野はフッと笑った。
「あの姉さんのワガママに最後まで付き合ったんだ。優しくないとできない。あの子にはちゃんとした人の優しさを感じながら育って欲しかった。少なくともあの子の母親ならそうしたはずだ」
高野は俯いて「……俺にはできない」と寂しそうに呟いた。
真広と真理恵は複雑そうな笑みを浮かべて互いに顔を見合わせた。なんであれ結局二人は高野の思う通りに動いていた。あるいはそれ以上かもしれない。
それが嬉しいような悔しいような気がして、なんだか変な気持ちになる。
すると高野はゴホゴホと咳をしだした。無理して話しすぎたからだが、それでも話さなければいけないことだった。
真理恵は心配して「看護婦さんを呼んできます」と言って病室を出た。
残った真広は静かに伯父を見つめた。そして自分が甘かったことを知る。
真広は自分の方が小白を幸せにできると思ってここに来た。だが実際伯父ほどの覚悟があるのかと聞かれれば今はまだ首を縦には振れない。
おそらく高野は病気のせいで仕事をクビになったのだろう。それでも小白を育てるために日雇いに出てなんとか暮らしていた。
非正規の真広もいつそうなるか分からないので気持ちはよく分かった。不安だから体を動かし、そのせいで益々壊れていく。その悪循環から逃れられない。
だけどそれは一人ならだ。誰かが協力すればもっと楽になれる。
残酷な事実だが、問題は誰も助けてくれないとことより、助けを求めることが下手なことにある。
真広もまた誰かを頼るということが下手な男なので高野のつらさは理解できた。
だからこそ、自分がなにをすべきなのかもよく分かっている。
「小白を養子にしようと思っています」
それを聞いて高野は目を見開いて真広を見た。そして安心したようにその瞳を閉じた。
「…………そうか」
「そうです」
「よかった」
高野は溜め込んでいた不安を吐き出すように深く息を吐いた。
バトンは渡され、今度は真広が不安になる。
「……もちろん、あの子次第ですけど」
高野は微笑んだ。
「大丈夫だ。あれは強い」
それは小白のことを信じているから出る言葉だった。
真広もその通りだと思う。小白には一人で生きていけるだけの力がある。あんなに小さいのにしっかりとした軸があった。大人にだってそれはない者が多い。
「……今度連れて来ます。お見舞いに」
「いや、いい」
「でも」
「もう、別れは済ました」
「え?」
驚く真広はテーブルの上にテレフォンカードが置いてあるのに気付いた。カードには既に穴が空いていた。
高野はまた窓の外を見つめた。先ほどまでの天気がウソのように青空を分厚い雲が覆っていく。明るかった景色がどんどん暗くなっていった。
「……さっき、お前らが来る前に電話したんだ。そこで言っておいた。これからはお前らと暮らすようにって。俺はまた一人に戻る。一人で生きて、一人で死んでいく。そんな人間がこれから幸せになる奴の足を引っ張るわけにはいかない」
高野はこれから起こる全ての出来事を受けて入れているようだった。
その覚悟に真広は思わず黙り込む。
看護婦が来る前、高野は最後に言った。
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