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〇13 少女るちあと宝石の物語
しおりを挟むそれは人の心を弄ぶ宝石の話。
それは人の心を揺れに揺らすダイアの話。
それは、人の善悪の天秤を狂わす狂気にまみれた凶器の話。
とある鉱山から掘り出された巨大な宝石。
そのダイアには百億分の価値があった。
そして、そのダイア自身もその価値に劣らぬ美しさがあった。
それを見つけた人々は多い。
だからその場で彼等は、誰が発見者になるべきかで争いあった。
後に残されたのは血だまりと骸。
その凄惨な現場を見た者達は、生き残った者達は誰もいかったと言った。
血まみれになったダイヤはそれでもなお美しかった。
多くの人の注目を浴びる異になった百億のダイア。
その宝石を、様々な富豪が手に入れたがった。
百億以上の値段をつけるお金持ち達。
しかし、持ち主は一向に決まらない。
オークションに出されたダイア。
その美し宝石が落札されるたびに、持ち主が謎の死をとげるからだ。
最終的にダイアは国宝として管理されることになった。
めずらしい美術品となった百億のダイア。
国中の人が見学に訪れた。
美術館の前には長蛇の列ができて、来客はひっきりなし。
やがて、怪盗が現れてその宝石を盗んでも、百億のダイアは美術館から姿を消さなかった。
誰かがそれを偽物だと言えば、その人物は翌日にはいなくなっていた。
怪盗に盗み出されたダイア。
宝石収集を趣味にしている富豪。恰幅のよい男性に買い取られた百億のダイア。
そのダイアは人目につかない部屋で、汚れ一つないショーケースの中へ。
その存在は誰も知らないはず、だった。
しかしそのダイアを目撃した妻が、目をくらませる。
一瞬の迷いをすてて、長年連れ添った夫を撲殺。
妻は一夜のうちに荷物をまとめて、行方をくらました。
とある貧しい家庭の夫妻は、路地裏で行き倒れている女性を発見した。
その女性は病死のようだった。
闇医者として活動する夫は、女性を見て判断。
女性が持っていたダイアに気が付いた妻は喜んだ。
しかし夫は妻の手をとめる。
過ぎた富を持つ危険を述べた。
伸ばした手をひっこめた妻は、その場を後にして諦める。
その場から去っていった夫妻は、その余命を全うするまでそれなりの生活を送る事ができた。
夫妻が死ぬ間際。
その娘の少女が、両親を喜ばせようと考えていた。
贈り者に小さな宝石をおくろうと計画を立てる。
宝石を偽造する職人に声をかけた娘は、しかしゴミの区画にあった古びた高級バッグを発見する。
その中に入っていた宝石を見つけだした。
しかし、その大きさゆえどうせ偽物だろうと考えた娘は、百億のダイアを持ち帰らなかった。
ダイアはそのままゴミの山にうもれていった。
やがて数百年の時が流れる。
いくつも時代がうつりかわり、様々な出来事が起きた後、一人の少女が土の中からそれを発見した。
ただの綺麗な石だと思った少女はその宝石を家に持ち帰る。
大昔のゴミ捨て場、その跡地にあったものなど、大した価値がないと思い。
少女の家庭は、ただの珍しい石としてそのダイアを今に飾る事にした。
その石を気にいった少女は、毎日そのダイアを磨いて手入れをし、暇なときに眺める。
しかし少女の家は、通行人のたばこの火の不始末によって、火事になってしまった。
その被害は、かなりの区画まで及んだ。
焼け落ちた家の前で呆然としていた家族は、奇跡的に焼け残った石を見て、藁にもすがる思いで鑑定に出した。
そこで、ダイアの価値が明らかになった。
少女の家は、無事に家事から立ち直る事ができたが、同じような被害にあった家のためにあまったお金を使う事にした。
それでもあまった百億分のダイアのお金は、必要な所に使ってほしいと言う事で寄付された。
少女達はその先何十年、ずっと幸福に過ごす事ができた。
それは人の心を弄ぶ宝石の話。
それは人の心を揺れに揺らすダイアの話。
それは、人の善悪の天秤を狂わす狂気にまみれた凶器の話。
けれど、最初から天秤が定まっている者は例外に。
彼等は宝石の魅力に囚われる事がないだろう。
その目がくらむようなまばゆい輝きに、己の目を細めることがあれど。
見るべき物を前にして、その目をふさぐことはないだろう。
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