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〇04 醜悪な姫と憎しみの騎士
しおりを挟む「ずっとあなたをこうして閉じ込めてやりたいと思っていました」
暗闇の中、牢屋の中でうずくまる様にしている姫君は、悲しそうな瞳でこちらを見ながら「どうして」と呟く。
「どうして、こんな事をするの」
「どうして? 分からないのですか、本気で。わたしはずっと貴方を憎んでいたのですよ。きれいごとしか言わないその口を、きれいごとしか見ないその瞳を、きれいごとを信じ切っているその能天気な頭をね」
憎々しい姫は、まったくこちらの事を信じようとしない。
未だに演技か何かだと思っているようだ。
それか、長年忠実だった自分の騎士が、こんな蛮行に走るような悲劇的な理由でも考えているのかもしれない。
だとしたら「お笑い草だ」、救えない。「もう少し人間味のある反応を期待していたのに」泣き叫びもしないし、命乞いをしようともしない。
すると姫君は「貴方の事を信じていたいの」と言った。現実が見えていないんじゃないだろうか。
「どうしてこんな事になってしまったの?」
「さあ、あなたがあまりにも愚かだったからではないですか?」
「私が悪いのね。私が貴方にこんな事をさせてしまった」
ああ、「思い上がるのもいい加減にしてほしい」昔から嫌いだった。貴方のそういう所が。「何でもかんでも自分を中心に世界が回っているのだと、そう錯覚している所が」滑稽で、憎らしくてたまらない。
貴方の傍にまでのし上がって来た私の苦労を考えた事があるだろうか。
路地裏で明日死ぬかもしれない日々を必死の思い出生きてきた苦労を。
やっとの事でつかみ取ったその場所で、貴方の傍で、よりによってその時貴方は何と言った。
「私の騎士になって下さらない。貴方はきっと私と出会う為に生まれて来たのよ」
都合の良い頭で考えるな。
全てが全て貴方の為に存在しているわけではない。
中途半端に優しくて、中途半端に偽善者で上っ面の正義を振り飾ず可哀想な、愚かな姫。
父王に守られ、揺りかごの中で過保護に育てられた姫は、一見美術品の様に綺麗な見た目をしているが中身は醜悪だ。
人間というものをまるで理解できていないのだから。
彼女は物語の登場人物。
哀れな境遇に置かれた姫という役柄を演じるように生きているに過ぎない。
姫の瞳を覗き込みながら、「貴方はなぜ、人は憎むのか、争うのかと以前言いましたね」確認する。
「そうね」と、姫は真っすぐに視線を受け止め答える。気持ち悪い。
「けれど、争う事が理解できないと、憎む事が分からないと言った。許してやればいいのにとも」
「そうね」
「貴方は、貴方の世界は美しすぎた。醜悪なほどに。完璧だから、困った事がないから苦労する人間の気持ちが分からない、傍にいる騎士の気持ちも」
「私が悪いのね」
そればかりだ。もうこの姫に用はない。
姫の姿を視界から外して、牢屋から離れる。
「さようなら私の姫、もう二度と会う事は無いでしょう。私は好きでしたよ。貴方の物になるまでは、貴方の事が」
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