古い方・恋愛ジャンル(ほぼ女性向け) 短編まとめ場所

透けてるブランディシュカ

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〇34 友人に裏切られて覚醒した令嬢は、世界各地を駆け回り人々から慕われた後で静かに余生を過ごす

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「力が、みなぎってくるわ!」

 私は、覚醒した。

 転生した悪役令嬢である私は、友人に裏切られた瞬間、限界突破したのだ。

 体中から漆黒色のオーラが噴き出している。




 スキル:虚勢を獲得
 効果:自分のレベルを十以上強くみせる

 スキル:威圧を獲得
 効果:自分より弱い生物の戦意をそぐ

 レベル上限解放
 レベル99の現在からレベル150まで到達可能

 ステータス値
 すべての数値が十パーセントアップ




 この世界は乙女ゲームの世界だ。

 でも、結構シビアな内容になっている。

 恋愛があるところは変わらないんだけど、レベルとかステータスとかスキルとか、そういったものが存在するから。

 バトルやアクションゲーム要素もある。

 だからそんなゲームの世界だから、この世界もおかしな事になっているのかもしれない。

 私が転生した世界には、レベル至上主義なんてものがあったりするのだ。

 貴族に生まれた人間は、元からレベルが高くて出来る事が多い。

 しかし平民に生まれた人間は、レベルが低くて出来る事が少ない。

 そのため、貴族は平民を差別していたのだ。

「レベルが低い平民なんて、無能よ。おーっほっほっほ」という具合に。

 私は悪役令嬢だから、貴族生まれ。

 レベルは当然初めから高い。

 スキルの数も多い(モンスターをあやつるとか、害獣をよせつけるとか、そんな悪役っぽい種類しかないけど)。
 
 そんなわけだから、調子にのっていたんでしょうね。

 前世の記憶を思い出す前の私は、平民である女の子をたくさん虐めていた。

 それで、断罪されて、お家追放になってしまっのだが、それに関してはもう何も言うまい。

 ただの自業自得なのだから。

 悪役令嬢は心を入れ替えて、反省しながらひっそりと辺境で暮らしていた。

 しかし!

 だがしかし!

 立ち直って、素敵な男性を得て結婚を見据えたお付き合いをしていた私は、友人に裏切られてしまったのだ。

 友人に男をとられた!

「だって、あなた悪人だったんでしょ、幸せになる権利なんてないじゃない」って言われながら。

 ぷっちーん。

 きれた!

 その瞬間、私は覚醒して限界突破したのだ!






 そして、当時の私は何を思ったのか、乙女ゲーム内にあるミニゲームをかたっぱしからやり始めた。

 ゲームにあったミニゲームには、畑を荒らす害獣や、人を襲うモンスターを退治していくものがあったから、なんか体を動かす事がやりたかったのだろう。

 今までは、異世界の現実に反映されたそれらを無視していたのだが、限界突破した私なら怖いものなどない。

 けがしたら嫌だとか、襲われたら怖いとか、あまり気にしなくてすむ。

 男を奪われた私は敵を見つけては、なぎ倒してなぎ倒して、ひたすらなぎ倒していった。

 特にメスとかは容赦しない。

 八つ裂きだ!
 串刺しだ!

 魔法スキルで火あぶり、電気びりびりだ!

 途中でドラゴンとかゴーレムだとか、幻獣とか魔界の主とかをふっとばしていったような気がしたけど、どうでもいい。

 何か魍魎みたいな奴とか、死神とか悪霊とかも轢いていった気がするけど、無視無視。

 男を奪われた、この感情をとにかくぶつける先が欲しい。

 前世での私は、めっきり男運がなかった。

 色々な男にだまされ、利用され、お財布扱いされたものだ。

 だから、乙女ゲームのような世界にうまれて、イケメン達にちやほらしてほしいと思っていたのに。

 まさかの悪役令嬢だし!

 記憶を思い出したのが断罪後だし!

 ふんだりけったりだ!

 だから、私は破壊神と化して各地で暴れまわった。

 そのあとは、乙女ゲーム内にあるサーチシステムを使って、猛者をもとめてさすらった。

 サーチシステムとは、自分のレベル数値と近しい人間が付近にいる場合、その人間が地図に点として表示されるのだ。

 円滑にレベル上げをおこなうために用意されたシステムらしいね。

 周辺地図を確認しながら、私は五角に戦える存在を見つけては、決闘を申し込んだ。

 実力が拮抗した者同士だから、戦いはいつもギリギリ。

 けれど、それは私に失恋の痛みを忘れさせてくれるには十分だった。

 やがて私は、戦神と呼ばれるまでになった。

 荒れに荒れた私だが、知名度が上がるにしたがって、慕われる事が多くなった

 強くなる過程で狂暴な生物を倒しまくった影響だろう。

 勲章とかもらったり、褒美とかもじゃんじゃんもらってしまった。

 けれど、私の心はまだ静まらない。

 ついでとばかりに私は、おまけ要素としてゲームにあった、隠しダンジョンに赴いた。

 その乙女ゲームをクリアしたものだけが遊べる要素だ。

 向かったそのダンジョンには、かなり強い生物ばかりがいたので、いろいろたぎった。

 耐久力も抜群。

 ライフも多い個体ばかり。

 これほどうってつけの存在はいない。

 私は、失恋の痛みをこれでもかとぶつけ始めた。

 その内、モンスターとか魔物とか、害獣は私によってこなくなってしまった。

 戦えなくなってしまったが、けれど、その頃にはすっかり気持ちが収まっていた。

 私が纏っていた漆黒のオーラも、小さくなっていたようだ。

 気が済んだので、どこか別の辺境に腰を落ち着けて、新しい生活でも送るかと思っていたら。

 そこになんと、あの裏切りの友がいた。

 友は、結局私から奪った男とは一緒にならなかったらしい。

 ちょうどモンスターを退治し終えたばかりの私と遭遇した友、いや(元)友は悲鳴をあげてその土地から去っていった。

 血まみれになった私を見て、何かただならぬ存在だと誤解したらしい。

 戦いに明け暮れていた私は、もう友の事なんてなんとも思っていなかったが、やりかえせたので少しだけすっきりした。




 それから私は、たまに付近を荒らす害獣やモンスターや良くない生物を退治しながら、静かに余生を送っていった。

 色恋のごたごたに巻き込まれるのはもうこりごりなので、生涯一人で過ごす事にはしていたが。

 なぜか恋愛に興味をなくした途端、求婚してくる男性が多くなったのは、どういう運命なのだろうか。



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