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〇41 悪役令嬢に惚れないでください
しおりを挟む「好きだ!」
「愛してます」
「振り向いてくれ!」
攻略対象達よ、悪役令嬢に惚れないでください。
貴方たちが好きになるのは、ヒロインのはずでしょう。
目の前で男性達が、頬をそめてプロポーズしてきた。
けれど、それは受け入れられない。
なぜなら、
悪役令嬢に惚れてもらってはこまるからだ。
君達攻略対象は、ヒロインと共に(相思相愛の男女にしか使えない)愛の魔法を放ってラスボスを倒さなくちゃいけないんだからね。
それなのに、なんで悪役令嬢である私にばかり愛の言葉をささやくんですかね!?
「それを俺の口から言わせるつもりか」
「それを言うのは、しょうしょう恥ずかしい」
「む、言わなければだめなのか?」
えぇー、私なにやったのか自覚してないんだけど。
別に鈍感系でもないんだけどな。
なんて、頭を悩ませていたら、攻略者達がぼそぼそ。
「やっぱり気が付いてないのか」
「でしょうね。まあ、無理もないですが」
「おい、早く誰か言ってやれよ」
えっ、それ何の話?
私がその乙女ゲームの世界に転生したきっかけは、全力で田舎道を走っていたせいだ。
車なんてくるわけないと油断してはねられた。
そんなオチ。
えっ、なんで走ってたかって?
家族と喧嘩して、家出しようとして、ちょっとね。
それで、気が付いたら第二の人生だよ。
人生なにが起こるか全くわからないよね。
はぁ、これからどうしよう。
どうにかヒロインに恋心を向けてもらわないと。
なんて、思っていたら。
「誰か好きな人はいないの?」
ヒロインは「いえ、私は誰からも愛されなくて大丈夫なので」とか言ってきた。
あれ?
乙女ゲームの世界なのに、恋しないの?
主人公でしょ?
原作と性格が違うんだけど。
こっちもおかしい、首をひねるが答えはわからなかった。
すると、ヒロインが何やらぼそぼそ。
「私は、あなた様の近くにいれば、それだけで満足なので。殿方の事なんて興味ないんです」
はぁ。
なんとかうまい具合に、攻略対象達の意識をかえられないものかな。
ここのところ、そればっかり考えてる気がする。
何をするにも、ろくに手につかない。
そんなだからぼーっとしていたのだろう。
建物の近くを通った時、上から鉢植えが落ちたきた。
「きゃあっ!」
ショックを受ける意識。
すると、私の人格は入れ替わった。
「まったく危ないわね。上の階に住むんだったら、鉢植えはきちんと固定しておきなさいよ」
それは、普段の私ではない私。
緊急時に出てくる人格だ。
元の世界ではめったに出てこなかった人格だが、この異世界ではよく緊急事態が起こるのでしょっちゅう入れ替わる。
この世界、乙女ゲームの世界だから、トラブルがつきものなのだろう。
そのたびに私は、人格が入れ替わった状態で、冷静に対処してきた。
それは彼等のハートを射貫いてしまったんでしょうね。
攻略対象から、好かれてしまったのはそのせいだ。
「もう一人のこの私を出さないようにっていうのも無理があるのよね。まだ、シナリオの途中だし、これから先も問題は起きるし」
私は、鉢植えの持ち主がやってくるのを見て、ため息をつく。
冷静な対処をしつつ、相手に優しく厳しく安全対策を指導。
すると数分後、その人は頬を染めてこちらを見つめるようになった。
最近はずっとこんな感じだ。
私が相手を惚れさせて、普段の私がその人から好意を向けられ戸惑う。
そのパターンがおきまり。
「これからどうしたものかしら。この私は普段の私と違って、恋なんて興味ないから本当の愛なんて育めないわよ」
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