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〇44 今までずっと不幸な人生を送ってきた宝石姫は、皆に支えられて幸せになる
しおりを挟む私ルティア・アルゲイルは、今までずっと不幸な人生を送ってきました。
不幸な目にばかりあってきたのです。
私は特殊体質なので、宝石を作り出す事ができます。
だからなのでしょう。
そのせいで、多くの人に利用されたり、攫われたりしてきました。
盗賊や海賊、富豪の元など。
色々な人のところを転々としてきたので、もはや生みの親がだれなのかすらわかりません。
虐げられているうちに、記憶をなくしてしまったようです。
過去の事で、覚えていたのは、自分の名前がルティアと名付けられた事だけ。
不幸な運命から解放される時がくるまで、私は自分の心と体を守るために、新しく主人になった人のいいなりになっていました。
私の主人はころころ変わりましたから、誰かに忠誠を誓ったり、愛情を注いだことはありません。
それどころか、顔も名前も覚えていません。
今となっては、それでよかったと思っていますが。
とにかく、私は不幸でした。
私のあだ名は宝石姫ですが、私の人生はまったく輝きのない人生だったのです。
しかし、そんな私にも幸せな時間が訪れたのです。
とある盗賊団に捕まっていた私は、ある国の騎士団の手によって助けられました。
身よりのない私はその騎士団のある、優しい国によって保護されて、不幸な目に遭う事がなくなりました。
宝石を作り出すことができる特殊な体質だと言う事は、彼等も分かってしまいましたが、しかし私を利用することはしませんでした。
それからは普通の生活を送れるようになりました。
毎日ご飯を三食食べられる事が、あんなに素晴らしい事だとは思いませんでした。
毎日誰にも邪魔されずにぐっすり眠れる事が、あんなにも心地の良い事だとは知りませんでした。
毎日、誰かと話をする事が出来る事が楽しかったとは分かりませんでした。
そんな生活に慣れる頃には、私は成人する年になっていましたが、その年になってようやく人並みの生活を送る事が出来るようになったのです。
爪痕が深かったのでしょう。
しかし、私は乗り越えました。
周りの人の優しさのおかげで、悪夢を見てうなされる事もなくなりましたし、過去の事を思い出して涙を流す事も少なくなりました。
そんな私は、自分を助けてくれた騎士団の力になりたいと考えました。
だから、騎士団の人達に頼み込んで、備品の管理をしたり、任務の日程管理なども行う様になりました。
常識とは無縁の生活を送ってきましたから、普通の手伝いをするのも大変でしたが、頑張って仕事を覚えました。
そんな日々はとても、素晴らしく、私は充実した時間をすごす事ができました。
騎士団の人達は男の人ばかりでしたが、女の子であった私をいつも可愛がってくれて、お菓子をくれたり遊び相手になってくれたりしました。
そして、数年後。
一般的な常識を身に着けた私は、国の財政難の時に力を貸すことに決めました。
その時は、非常時に対する出費がかさんでお金が足りなくなったみたいです。
数か月前にあった災害の影響で、あちこちの国民が困っていたので、そのせいでしょう。
騎士団を動かしていくためのお金も足りなくなったと聞きます。
だから私は、不自然ではない数の宝石をつくりあげて、お城の偉い人達の部屋の前に置いておいたのです。
そうしたら、偉い人達に感謝されてしまいました。
私は感謝されたくてしたわけではありません。
だから戸惑ってしまいました。
これまでに力を使って、誰かから感動されたことはあっても、感謝されたことはありませんでした。
でも、不幸しか呼ばなかった私の子の力は、使いようによっては人を助ける事ができるのだと、その時初めて知りました。
私はとても嬉しくなりました。
生きていてよかったと、心から思えるようになったのです。
その後、様々な所が少しだけ潤って、お金のない厳しさがほんのちょっとだけ和らいだとききます。
本当はもっとたくさん、恩返しで助けたかったのですが、高価で無料なものをたくさん生み出し過ぎると、経済状態がおかしくなり、人々の生活に悪影響を及ぼすと言う事なのでやめました。
それに、一定期間で生み出せる宝石の数はきまっていたので、それ以上は出したくても出せないのです。
数年後。すっかり国の一員となった私の元には、多くのお見合い相手が現れました。
予想していなかったので、私と結婚したいという人が大勢いたことに驚いてしまいました。
私は、その中の一人の男性と趣味があったので、お付き合いをすることになりました。
騎士団に新しく入った新人の男性の方です。
彼は、宝石をうみだせる事を知っても、その力を利用しようとは思いませんでした。
他の人とくらべてお金儲けしたり、贅沢をしようとしたりする欲がすくなかったので、私は安心して彼の傍にいられたのかもしれません。
だから、私はその人に好意を抱いて、一緒に過ごしたいと思うようになったのです。
そしてその人と結婚した私は、その男性と家庭を気づいて、子供を授かり、幸せな人生を過ごしました。
宝石姫がその国にいた事は、どの歴史書にも記述されていません。
私を助けてくれた人たちが、私の存在を隠してくれたおかげです。
だから、盗賊の元から助けられた日から、ずっと幸せに生きる事ができました。
私を助けてくれた人達には、感謝してもしたりないくらいです。
助け出された日から支えてくれた人たちにも。
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