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〇43 お前ら敵同士だろ!なのになんでそんな分かり合ってるんだよ
しおりを挟む俺は目の前の光景につっこみたい。
東の国と西の国の大将が、第三の国の軍に囲まれていた。
だが、二人はあうんの呼吸でこれを撃退していっている。
流れるようなその動作は、少しも互いの行動を邪魔していない。
それどころか、二人の動作は元から二人用の演舞か何かだったかのように錯覚させてしまう。
背中合わせで、互いの状態を見る事もないそれは、完璧だった。
東の国の男大将はモーニングスターで押し寄せる第三国軍を薙ぎ払う。
西の国の女大将は大剣で押し寄せる第三国軍をきりはらう。
その息はぴったりだ。
どちらの国も、自分の背中に通す敵がいない。
「おう! 漁夫の利を求めてやってきた、お前ら! 残念だったな! 俺の背中を抜けられると思うなよ」
「神聖な戦いを第三者に横からかすめとられるわけにはいかない! 私より先に一歩でも進めるとは思わない事ね!」
そんなに連携とれてるけど、お前ら敵同士だろ。
味方じゃないよな。
ついさっきまで、第三国軍に包囲されるまでは、お互いで争いあってただろ。
なんでそんなに息ぴったりなんだよ。
俺は東の国の人間だ。
西の国とは長い間争いあっている。
仲間達は大勢やられたもんさ。
だから許せない。
必ずこの手で西の国の大将の首をとってやる。
そう誓ったんだ。
でも西の国の大将は、女のくせに強かった。
何度挑んでも引き分け以上の結果にならない。
他の敵は、簡単に倒せるのに、なぜかこいつと戦うと肝心な時にモーニングスターの標準が狂うんだ。
もしかして怪しい力でも使っているんじゃないだろうか。
なんだかずっと見つめていると、動機がしてくるし、体も熱が出たように厚くなってくる。
おとぎ話で伝えられている魔女かなんかの生き残りに違いない!
おのれ魔女め!
俺は今までの恨みを忘れないぞ!
次に会った時は必ず倒してやるからな。
私は西の国の人間。
西の国と東の国は、長い間争いあっている。
戦場はいつも膠着状態だったらしい。
けれど、百年の一度の才女と呼ばれたこの私が軍に入ってからは、どんな戦場でも負けた事がなかった。
西の国が東の国に勝つのは、時間の問題だと思ったくらいだ。
けれど、東の国には強い人間もいた。
その男は、モーニングスターを持った男性だ。
どんな急所をねらっても、必ずこちらの攻撃が防がれてしまう。
なんて強者なのだろう。
気を抜いていたらこちらがやられてしまいそう。
油断ならない男だった。
私は戦場でその男を見つけると、その姿をもっとよく見たい、もっと近くに行きたいと思ってしまう。
きっと負けすぎて殺意が大きくなりすぎてしまったのだろう。
憎悪も強くなりすぎて、戦いの判断が鈍ってしまっているのかもしれない。
彼との戦いはこれまでにずっと引き分けだった。
果たして、いつになったら、決着がつくのだろうか。
ああ、またやってる。
東の国の大将も、西の国の大将もきっと気が付いていない。
互いにアイコンタクトをとってるんだけれど、無意識にやっているようだ。
伏兵に気が付いた東の男大将が西の国の女大将に視線をおくって、囮になる。
その間、西の国の女大将が伏兵の背後へ移動していた。
それはまるで、長い間一緒に行動してきたみたいな、連携だ。
第三国の大将である俺は、その光景を見てため息をつくしかなかった。
せっかく俺の先祖が東の国と西の国をいがみ合わせて、後世の子孫である俺達が漁夫の利を狙えるようにしてくれたというのに。
あの分では、それは難しそうだな。
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