古い方・恋愛ジャンル(ほぼ女性向け) 短編まとめ場所

透けてるブランディシュカ

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〇56 愛だったのか分からない

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「あんたなんて育てたくなかったのに!」

 ぶたれた頬が痛くて、涙を流した。

 私は追い立てられるようにして家を出ていく。

 外は雨が降っていて、寒かった。

 母の機嫌がなおるまで、どれだけ外にいなければならないのだろう。

 離婚した夫に似た娘なんて、愛せるわけがなかったのだ。





 私は母に嫌われていた。

 だから幼い頃から、よく折檻された。

 家から出されたり、食事を抜かれたりする事は頻繁にあった。

 私は、そんな境遇にずっといた。

 でも、そんな私を助けてくれる幼馴染の男の子がいた。

 家から追い出されたら、一緒にそばにいてくれたり、ご飯をぬかれたら、自分のおやつをくれた。

 だから私は自然とその男の子の事が好きになった。

 小学生になって、他の子供と遊ぶようになった時は、嫉妬したけど。

 私はその子にふさわしくないんだと思って、何も言わなかった。

 男の子は明るくて、優しくて、思いやりがあって、元気で、良い所しか見つからなかったから。

 多くの人と仲良くなれて当然だと思った。

 中学生になった時は、我慢するのが大変だった。

 ずっと彼の事を見ていたくなったし、かまってほしくなった。

 必死で我慢して、ただの幼馴染のままでいようと努力した。

 高校生になった時、男の子に彼女ができた時は頭がおかしくなりそうになった。

 おもいつめて、頭の中にあった事を実際に行動にうつそうと思った事もあった。

 でも、しなかった。

 偶然の事故が、男の子とその彼女を奪い去ったからだ。

 同じ時期に、母親も病で死んで、私は色々なものから解放された。

 けれど、同じだけ空虚になった。





 あれは愛だったのか分からない。

 ただの執着だったかもしれない。

 でも、男の子が困っていたら、私は何でもしてあげたいと思っていたし、辛い事もあったけど、男の子の事を考えている時は幸せだった。

 男の子に命の危機が訪れたら、身を挺して助けてあげたいとも思っていた。

 あれは愛だったのだろうか。

 それとも、唯一の心のよりどころに見せる、ただの執着だったのだろうか。


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