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〇57 愛と看病
しおりを挟む今日こそはあのツンデレの友人に、風邪薬を飲ませなければ。
でも、あたしが正面から言ってやても無駄だから、今日は策を考えてきた。
私は必要な道具を準備してから、友人の家にお邪魔する。
部屋に行くとその当人は、ぜぇぜぇ言いながらベッドの上で横になっていた。
当然だろう風邪を引いて寝込んでいるのだから。
数日前に、寒い中外出したのが堪えたのだろう。
ベッドの上の友人はとても苦しそうだった。
ここまで症状が悪化したら、普通薬のむでしょうに。
それなのに、そいつはまったく薬を飲んでなかった。
昨日お見舞いに来た時においていった薬が、袋に入ったまま放置されていたからだ。
「何だきたのか」
「きてやったわよ。あんたの友人のあたしが」
あたしが部屋にやってきたのを見て、眠っていたらしい友人が瞼を開いた。
顔をまっかにして苦しそうな様子を見せるなら、変な意地なんて張らずにさっさと薬を服用してしまえばいいのに。
毎回「ほうっておけばそのうち治る」とか言いだすこいつ。
この友人は医者とか薬とか、そういうものには頼りたがらない。
人の手なんか借りるから人間が軟弱になるんじゃい、なんて考えが頭の中にあるのだろう。
あとプライド高いから、弱っているとこ人に見せたくないのだ。
以前、咳が止まらなくなった時もぎりぎりまで病院にいかなかったし。
だからあたしは考えた。
そんな友人にどうやって薬をのませればいいのかを。
思いついたのは、食べ物にまぜる。だった。
病気してたってお腹はすくものだ。
だから、台所にあがりこんで作ったおかゆにこっそりまぜてみたのだが……「苦い」「ですよねー」そっこうでばれた。
ちっ、だめだったか。
もうちょっと工夫が必要だったようだ。
これは作戦を練り直す必要があるな。
あたしはスポイトを用意して、あいつが寝るまで待機する。
「おい、いつまで居座る気だ」
「おかまいなく」
「後ろ手に隠しているアイテムは何だ」
「気にせずに」
「気にするにきまっているだろ。寝ている間に変な物を口にねじこむんじゃない」
ちっ、勘の良いやつめ。
「まったく何が不満なのよ。あんたに倒れられたままじゃ気が気じゃないから薬をのませようとしているのに」
「ふん、薬なんぞの力を借りずとも、俺は回復してみせる」
「いつかはするだろうね、そりゃ、ただの風邪なんだから」
「何が言いたい?」
「苦しそうなあんたの姿を見せられてる私の身にもなりなさいよね」
「え……?」
仕方ない、最終手段。
押して駄目なら引いてみろだ。
「あたしは想い人であるあんたの心配もしちゃいけないのかしら? で、聞くわよ。いつまで心配かけさせるつもり?」
「……仕方ないな。今回だけだぞ」
心の中でガッツポーズ。
やっぱりどんないじっぱりな奴でも、人を思う愛情には勝てないもんだね。
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