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〇96 戦闘狂ゲーマーは乙女ゲームの過酷シナリオを大歓迎しています
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「うっ、頭が痛い! 知らない記憶が流れ込んでくる!」
私は、魔物と魔族をぶっ倒しているときに前世の記憶を思い出した。
前世でなかなかいないハードな乙女ゲームプレイヤーだった私は、なんやかんやあって天界みたいな場所で、神様と会い、この世界に転生してしまったらしい。
転生処理は雑で、どこに転生させるかは詳しく教えてもらえなかった。
退屈していた神様が、お遊びでやったような感じだったから。
でも、それで転生した先が、残酷な乙女ゲームの世界ってどういうことよって思ったわ。神様の常識を疑うわね。
一般人だったら、頭抱えて白目むいてたでしょうね。
だってその乙女ゲームーー
「世界の終わりに真実の恋を」、通称セカ恋は、とにかく死人が出まくるシナリオだもの。
数ある乙女ゲームの中では、残酷すぎる乙女ゲームとして、有名だった。
そんな世界に放り込まれたら、ふつうは引くし、嘆くし、不幸だと思うだろう。
なにもそんなところに放り込まなくたって、いいじゃない。
と、天を呪うかもしれない。
しかし、雑に放り込まれたことに対しては思う事があるものの、私にとってはそれほどひどい環境ではなかった。
むしろ大歓迎だ。
この世界に、戦闘狂が生まれたのは幸いかもしれないわね。
強い敵をさくっと倒す快感はすばらしいし、苦労の末難敵を打ち倒すのも達成感があっていい。
生粋のバトル狂いだったこの私は、戦うすべがもう身についているようだったし。
生き残る方法で悩むことはなかったから、幸い。
だからこの転生、前向きに考えることにするわ。
恋愛をしながら過酷な戦場で命のやり取りって、スリル満点でとっても素敵じゃない。
運に任せて崖から飛び降りたり、敵地で味方と離れ離れになって生きるか死ぬかのサバイバルをしたり、仲間にまぎれこんだスパイと命がけの駆け引きをしたり。
なんて素敵な日常なのかしら。
「お前はいつも楽しそうだな」
「なんでそんな風に笑っていられるんですか?」
「お姉ちゃんは、戦場にいる時いつも楽しそうです」
これらのセリフは攻略対象達からいただいたものだ。
彼らとは、様々な戦場を共にした、気の置けない関係だ。
だが、危険を楽しむ私の性格だけは理解できないでいるようだった。
こんな過酷な乙女ゲームの登場人物なのに、そこらへんはまともなのよね。
「私は、根っこからの戦闘狂なので、強者と戦えるのがうれしいんですよ。難所も難易度が高ければ高いほど燃えます」
「そっ、そうか」
「さっ、さすがの胆力ですね」
「お姉ちゃん、ちょっと怖いよ」
若干引いてるような雰囲気もあるが、それ以外は特に思うところはないようで。
戦場で困ったときは真っ先に駆けつけてくれるし、逆にこちらが助けたときもきちんと感謝してくれる。
そんな感じだから、恋愛中には発展しないかと思われたが、そうでもないらしい。
「俺とお前は違う価値観だけど、それでお前が持っている良さがそこなわれることはねぇよ。仲間思いのお前は本当にいいやつだしな」
「そうです。意見が異なるものを切り捨てた挙句が、今回のこの人族と魔族との争いですからね。同じ轍は踏みたくないものです」
「どんな性格でも、お姉ちゃんが良い人だってことは変わらないよ! だから大好き!」
それぞれからプロポーズの言葉と贈り物を渡されてしまった。
正直かなり以外だ。
私は前世でも血の気が多くて、喧嘩っ早い性格だった。
それで人付き合いが壊滅していたから、ゲームにのめりこむしかなかったのに。
おそらく、女性なのに喧嘩ばっかりで、血の気が多くて、トラブルメイカーだったから付き合ってられなかったんでしょうね。
それは、あの人と人との距離が離れがちな現代社会では、仕方のないことだとは思う。
せめて生まれる時代が違えばとか思ったが。
ないものねだりをしてもしょうがないと、あきらめていた。
「みんな、ありがとうございます」
けれどこの世界では、ありのままの自分でいられる。彼らとの交流は私の枯れた心の一部を、やさしく満たしてくれた。
だから、彼らの言葉に精一杯誠意で答えようと思ったのだが、今まで恋愛なんて眺めるだけでしてこなかったため、どうにも勝手が分からない。
「つきあうって何をすればいいのですか?」
「別に無理して考える必要ねぇんじゃねぇ? 俺は、一緒にいれたらそれでいいし」
「恋をしている人って、普通なにしてるのでしょう?」
「それは、まあ。相手のことを考えたり、相手が喜ぶことを考えたり、ですね」
「うーん。恋愛って、具体的にどう育んでいくのかしら」
「よくわかんないけど、いっぱいあそんだり、いっぱいお話したりすればいいんじゃないかな」
けれど、彼らはそんな私にも優しくしてくれた。
相変わらず私は戦闘狂で、戦うことに楽しみを感じる性格のままだけど、彼らと一緒にいるのは心地よくて、楽しい。
今は彼らの気持ちに向き合うこともうまくできないでいるけれど、いつかきちんと答えが出せればいいなと思った。
私は、魔物と魔族をぶっ倒しているときに前世の記憶を思い出した。
前世でなかなかいないハードな乙女ゲームプレイヤーだった私は、なんやかんやあって天界みたいな場所で、神様と会い、この世界に転生してしまったらしい。
転生処理は雑で、どこに転生させるかは詳しく教えてもらえなかった。
退屈していた神様が、お遊びでやったような感じだったから。
でも、それで転生した先が、残酷な乙女ゲームの世界ってどういうことよって思ったわ。神様の常識を疑うわね。
一般人だったら、頭抱えて白目むいてたでしょうね。
だってその乙女ゲームーー
「世界の終わりに真実の恋を」、通称セカ恋は、とにかく死人が出まくるシナリオだもの。
数ある乙女ゲームの中では、残酷すぎる乙女ゲームとして、有名だった。
そんな世界に放り込まれたら、ふつうは引くし、嘆くし、不幸だと思うだろう。
なにもそんなところに放り込まなくたって、いいじゃない。
と、天を呪うかもしれない。
しかし、雑に放り込まれたことに対しては思う事があるものの、私にとってはそれほどひどい環境ではなかった。
むしろ大歓迎だ。
この世界に、戦闘狂が生まれたのは幸いかもしれないわね。
強い敵をさくっと倒す快感はすばらしいし、苦労の末難敵を打ち倒すのも達成感があっていい。
生粋のバトル狂いだったこの私は、戦うすべがもう身についているようだったし。
生き残る方法で悩むことはなかったから、幸い。
だからこの転生、前向きに考えることにするわ。
恋愛をしながら過酷な戦場で命のやり取りって、スリル満点でとっても素敵じゃない。
運に任せて崖から飛び降りたり、敵地で味方と離れ離れになって生きるか死ぬかのサバイバルをしたり、仲間にまぎれこんだスパイと命がけの駆け引きをしたり。
なんて素敵な日常なのかしら。
「お前はいつも楽しそうだな」
「なんでそんな風に笑っていられるんですか?」
「お姉ちゃんは、戦場にいる時いつも楽しそうです」
これらのセリフは攻略対象達からいただいたものだ。
彼らとは、様々な戦場を共にした、気の置けない関係だ。
だが、危険を楽しむ私の性格だけは理解できないでいるようだった。
こんな過酷な乙女ゲームの登場人物なのに、そこらへんはまともなのよね。
「私は、根っこからの戦闘狂なので、強者と戦えるのがうれしいんですよ。難所も難易度が高ければ高いほど燃えます」
「そっ、そうか」
「さっ、さすがの胆力ですね」
「お姉ちゃん、ちょっと怖いよ」
若干引いてるような雰囲気もあるが、それ以外は特に思うところはないようで。
戦場で困ったときは真っ先に駆けつけてくれるし、逆にこちらが助けたときもきちんと感謝してくれる。
そんな感じだから、恋愛中には発展しないかと思われたが、そうでもないらしい。
「俺とお前は違う価値観だけど、それでお前が持っている良さがそこなわれることはねぇよ。仲間思いのお前は本当にいいやつだしな」
「そうです。意見が異なるものを切り捨てた挙句が、今回のこの人族と魔族との争いですからね。同じ轍は踏みたくないものです」
「どんな性格でも、お姉ちゃんが良い人だってことは変わらないよ! だから大好き!」
それぞれからプロポーズの言葉と贈り物を渡されてしまった。
正直かなり以外だ。
私は前世でも血の気が多くて、喧嘩っ早い性格だった。
それで人付き合いが壊滅していたから、ゲームにのめりこむしかなかったのに。
おそらく、女性なのに喧嘩ばっかりで、血の気が多くて、トラブルメイカーだったから付き合ってられなかったんでしょうね。
それは、あの人と人との距離が離れがちな現代社会では、仕方のないことだとは思う。
せめて生まれる時代が違えばとか思ったが。
ないものねだりをしてもしょうがないと、あきらめていた。
「みんな、ありがとうございます」
けれどこの世界では、ありのままの自分でいられる。彼らとの交流は私の枯れた心の一部を、やさしく満たしてくれた。
だから、彼らの言葉に精一杯誠意で答えようと思ったのだが、今まで恋愛なんて眺めるだけでしてこなかったため、どうにも勝手が分からない。
「つきあうって何をすればいいのですか?」
「別に無理して考える必要ねぇんじゃねぇ? 俺は、一緒にいれたらそれでいいし」
「恋をしている人って、普通なにしてるのでしょう?」
「それは、まあ。相手のことを考えたり、相手が喜ぶことを考えたり、ですね」
「うーん。恋愛って、具体的にどう育んでいくのかしら」
「よくわかんないけど、いっぱいあそんだり、いっぱいお話したりすればいいんじゃないかな」
けれど、彼らはそんな私にも優しくしてくれた。
相変わらず私は戦闘狂で、戦うことに楽しみを感じる性格のままだけど、彼らと一緒にいるのは心地よくて、楽しい。
今は彼らの気持ちに向き合うこともうまくできないでいるけれど、いつかきちんと答えが出せればいいなと思った。
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