古い方・恋愛ジャンル(ほぼ女性向け) 短編まとめ場所

透けてるブランディシュカ

文字の大きさ
127 / 150

〇127 婚約者と価値観があわないので婚約解消したいです

しおりを挟む

 婚約者になった男性が、ちょっとおかしい。

 その婚約者は、私とは少し常識がずれている。

 妻は夫を支える、でしゃばらない。

 そして、いつでも夫をねぎらい、邪魔をしてはいけない。

 反対意見はもってのほか。

 夫をたてて、自らは影にいなければならない。

 そうする事が、婚約者の実家では常識らしい。

 そんな家で育ってきた婚約者は、それはもう見事にその価値観に染まっている。

 婚約した私にも、「妻はでしゃばるな」とか「夫に意見するな」とか言ってくる。

 この人とは、価値観が根本的に会わないと感じた。

 だから、婚約解消しようと思ったのだが。

「夫に恥をかかせるな」

 と止められてしまった。

 じゃあ、どうすればいいのと言えば。

「お前が我慢すればいいだけだろう」と言って話は平行線。

 別に一度決まった婚約を解消する事ぐらいよくある事。

 私の住む地域では、ちょっとどうかと思うけどーー惚れっぽい人達が多くて、特に珍しくもない。

 けれど、婚約者はかたくなに首を縦にふらなかった。

 このままだと、二人とも不幸になる未来が見えているはずなのに。

 価値観を守る事ってそんなにも大事なの?





 だから私は、婚約者の身辺調査を開始。

 これまでにもやってきたけど、婚約解消のためだ。

 ちょっとくらい深く個人情報に踏み入る事になっても仕方ない。

 だってこのままだと、私がぶち切れて婚約者を鈍器で殴打してしまう未来しか見えないし。

 そういうわけで、婚約者の身辺調査を詳しく行った所、でるわでるわ。

 自分達の体面を守るために、もみけしてきた数々のスキャンダルが。

 あらあら、こんなに女性とつきあってたのねふーん。

 ほうほう、そんなに法律をやぶっていたと?

 私はそれを一つ一つ丁寧に集めて、彼に突きつけた。

「私との婚約を解消してくださらないのなら、これをすべて世間にばらします」

 真っ青になった彼はしぶしぶこれを承諾。

 私は晴れて婚約解消で、自由の身になった。

 でもこれじゃ、まだ話は終わらない。




 体面を何よりも大事に思うなら。

 一番確実な方法を選ぶはずでしょうね。

 わざと選んで歩いた夜道。

 そこに、ごろつき共がやってくる。

 こっそり警護していた護衛達が、そのごろつき共を捕まえて、情報を吐かせればーー。

 やっぱり元婚約者様の仕業だった。

 そうよね、物理的に亡き者にしてしまえば、確実だもの。

 元婚約者はそれで、牢屋につながれて、結局自分達が犯した罪をせけんにばらしてしまった。





 本当に価値観の合わない人達だ。

 牢屋で対面した元婚約者が叫ぶ。

「ぼろくなった家柄を拾いあげてやろうと思って、婚約をしてやったのに。無駄に歴史だけある家柄の女のくせに。なんて事をしてくれたんだ」

 彼の言う通り、私の家の名はほとんど力の残っていない。

 没落寸前の貴族の家。

 でも、歴史だけはあるから、成り上がりで新しい貴族になった彼の家には好条件に映ったらしい。

 けれど、彼は思い違いをしている。

「私は別に家のためにあなたと婚約したわけじゃないわ」
「なんだって」

 特に結婚相手にこだわりがあるわけではなかった。

 だから、一緒になる相手は別に平民でもよかった。

 でも、両親や家への情があったから、どうせなら貴族の家に嫁ごうとは考えていたのよ。

「ほんのすこし、たった一パーセント。あなたへの好意があったから」

 子供の頃、社交界で転んでけがをしていた時、彼に助けられたから。

 それだけだったけれど、誰でもいいのなら、それでも十分。

 けれど元婚約者は、きっとそれから変わってしまったのだろう。

 結局こんな事になってしまった。

 牢屋の向こうで目を見開いた彼は、「理解できない!」「家を蔑ろにして、立場も考えずにそんな安っぽい理由で婚約者を選んでいたなんて!」と叫んで私を罵り始めた。





 私はさようなら、と告げて彼に背中を向けた。

 今までの事はすっぱり忘れて。

 次に婚約する相手は、もっと価値観の合う相手にしようと考えながら。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...