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〇139 婚約破棄のされ方がひどすぎて、周りの人が国を変えるほど優しくしてきた
しおりを挟むそれは王子主催のパーティーで起こった。
「お前との結婚は飽きた! 婚約を破棄する!」
まさか「飽きた」なんて理由で婚約を破棄する人がいるとは思わなかった。
大声で発言したのはこの国の王子だ。
私の婚約者、いやだった人。
思い付きで言ったとしか思えない発言だ。
まさかこんなに愚かだったなんて思いもしなかった。
めまいがしてふらついていると、王子が私をつきとばしてきました。
「きゃっ」
そしたら、近くのテーブルにぶつかって、食べ物や飲み物まみれになってしまった。
まわりの人達がこの惨状に気が付いて、視線を向けてくる。
しかし、王子はそんな事まるで気に留めていない。
「お前は面白くないしつまらない。他の女を婚約者にしてもらうよう父上に頼んでおくからな」
「そんなっ。私は王子の伴侶にふさわしいふるまいを心がけていたのに」
人の上に立つ者にはそれなりの責任が伴う。
だから、精一杯努力して、王子の伴侶としてふさわしいふるまいを心がけてきた。
けれど、そんな行動は王子にとってつまらないものだったようだ。
しかしこうなってしまっては仕方がない。
私は国の未来を憂いて、王子に問いかけた。
「では、どのような方を新たな伴侶に考えているのですか?」
「そうだな。お前が事あるごとに追い払っていたあの金髪の女なんてどうだ?」
「その方は!」
その女性は、平民だ。
玉の輿を狙っていて、貴族に近づいては男を駄目にしていると聞く。
だから、王子に近づかないようにしていたのに。
「平民の女性が王宮に入るとなると、色々と戸惑われる事があるかもしれませんが」
「お前の気にする事ではない。やはりつまらないな。もっと、俺を愛していたとか振り向いてくださいとか言えないのか?」
私は歯をくいしばる。
元からこの王子の事は好きではなかった。
けれど、国のために我慢して、付き合っていたのだ。
私には好意を寄せていた男性がいたが、彼と歩む道は諦めていた。
「もう良い、去れ。お前と話す事は何もない」
しばらくその場でぼうっとしてたら、警備の兵士につまみだされてしまった。
建物の外で、これからどうしようかと考えていたら、そこに多くの人が話しかけてきた。
「ひどい王子だ。これまでのお嬢様の献身も知らずに」
「あなたが気に病む必要はないわ。これからは良い人と巡り合えるように応援するから」
「お前が悔しい想いをした分だけ、いや倍にしてあの王子にぎゃふんと言わせてやる」
彼等は、今まで私に仕えてきた執事に、付き合いのあった友人、よく話をする貴族の青年だった。
その他にも、パーティーに参加していた紳士淑女たちが口々に励ましの言葉を贈ってきた。
「みんな、ありがとう」
やがて彼らの怒りの矛先は、横暴な王子と、それを許していた王へ向かっていく。
「こんな国、間違ってる!」
「ああ、そうだ。俺達で変えようぜ!」
「人々の上に立つにふさわしいのは誰か、それはもう皆分かっているだろ!」
そして、話の流れは思わぬ方向に転がっていってしまった。
それから数日後、血気逸った者達が王宮を占拠し、王と王子を牢屋に閉じ込める事件が起きた。
長らく国を留守にしていた第二王子も参加しての、王騒動だった。
そして、その影響で王位継承権がなかった第三王子が王になる事が決まった。
第三王子は、聡明で、人望も厚い。
そのためかつての王や王子のように、思い付きで人を動かしたり、自分の我儘で国民に迷惑をかけたりすることはなかった。
それから私は、なぜか第三王子の伴侶となっていた。
第三王子は、かつて胸に秘めていた人である。
新しい国を治める第三王子の伴侶になるなら、私しかいないと声があがったためだ。
こうして、私は婚約破棄された後に優しくしてくれた人たちによって、かつて諦めて幸せをつかんだのだった。
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