古い方・恋愛ジャンル(ほぼ女性向け) 短編まとめ場所

透けてるブランディシュカ

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〇142 HP10の貴族令嬢はひ弱すぎるので、幼馴染に守ってもらわなければならない

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 その貴族令嬢ピーネはひ弱だった。

 なぜなら、ライフポイントが10しかないからだ。

 そのため、誰かに守ってもらわないと生きられなかった。

「きっとこんな弱い私はいつか死んでしまうんだわ。だってライフが10しかないんだもの。ねえ、あなたもそう思うでしょ?」
「そんな事ない。仮にそうだとしても、精いっぱい生きた証はどこかに残るんだ。誰かの記憶に残るんだから。それに、いつか死ぬなんて言葉で、楽しめるはずの今日を楽しまないのは損だよ」

 同じ年ごろの男の子はそういうが、ピーネは納得できない。

 ピーネは雑魚魔物のスライムよりも弱かった。

 攻撃力5のスライムに2回攻撃されたら死んでしまうほどに。

 けれどその代わりに、怪我を治す特殊能力があったため、回復をかけ続ける限り死ぬ事はなかったのが幸いな事だったが。






 そんなピーネを気遣うのは、同じ年頃の男の子バース。

 彼は平民だったが、ピーネの大切な友人だった。

 バースはピーネを守るために、体を鍛え、剣士の学校へ行き、剣士になった。






 なぜなら、その世界は魔物が多くて、人の生活圏内にも頻繁に出没していたからだ。

 普通に道を歩いていても、雑魚魔物とは頻繁に出くわしてしまうため、成長して剣士になったバースはピーネがいる町をしっかりと守ろうと思い、剣の腕をみがいて頑張った。

 しかし、状況は悪化する。

 世界の再果てに封印されていた魔王が復活して、魔物の動きが活性化したからだ。

「ああ、これから一体世界はどうなってしまうんだ」
「この間、うちの畑にも魔物が出たんだ」
「子供を外に出せないわね」

 どこもかしこも、魔物の脅威におびえる日々が続いた。







 そんな中、大規模な魔物のスタンピートが発生。

 ピーネのいる町は、逃げ出す事もできずに、あっというまに魔物の群れに包囲されてしまった。

「これまでにない規模のスタンピートだ」
「俺たちの町なんてきっと、あっという間に蹂躙されてしまう」
「応援の要請は出したが、間に合うだろうか」

 籠城戦が続いたのは、最初の一週間だけ、魔物の侵入を許すようになった後は、あっという間に町の人々が息絶えていった。

 一か八か、避難しようとする者達もいたが、それはかなわなかった。

 街中を堂々と徘徊する魔物たちは我が物顔。

 シェルターを用意できた者達だけは、まだ生存していた。




 そんな中、ピーネがいる貴族屋敷にもその脅威がせまる。

 ピーネはシェルターには入らず、貴族として平民たちを非難させたり、守ったりしていた。

 だから、魔物たちに狙われるのは自然な事だった。

 多くの市民たちをかくまっている屋敷に、魔物の群れがとうとう入り込む。使用人や護衛たちはピーネたちを守ろうとしたが、まるで歯が立たなかった。

 群れを成し、魔王の影響を受けた魔物達には、ちょっとやそっとの抵抗は意味をもたなかったのだ。





 多数の犠牲者を作り出した魔物の群れは、屋敷の奥へ。

 資料庫で、大昔の記録をーー地下の避難経路を調べていたピーネたちの元へとたどり着く。

 ピーネの父が倒れ、母が倒れ、最後にピーネも魔物の牙にかかる。

 そのはずだったが。

「間に合った。遅くなってごめん」
「大丈夫、信じていたわ。あなたが来てくれる事を」

 その寸前で、バースがやってきてピーネを背にかばった。

 状況は絶望的で、街から脱出する事もままならない。

 それでもこれから生き残るとしても、死ぬとしても、この過酷な状況で共に在れる事が二人にとっての幸いだった。

 バースがピーネをかばい。

 ピーネがバースの怪我を治す。

 二人は、互いを守りながら、脅威に立ち向かい続ける。

 そして、永遠とも言える長い時間を耐え切った二人は、生き残った。

 隣町からの援軍がやってきて、魔物を掃討したからだ。







 生き延びた二人はその後、数年後に結婚し、新しい家庭を築いた。

 苛酷なその世界では、今日生きていた者が明日死んでいる事は珍しくない。

 人より死にやすいピーネの前には、さらに険しい道が待っているだろう。

 それでも二人は、いつか訪れる死を恐れて、つないだ手をはなすような事はしなかった。

「バースの言った通りね。私は人より死ぬ可能性が高いけど、今とても幸せで、生きていて良かったと思っているわ」
「それならよかった。俺も、剣士だからいつか死ぬかもしれないけど、君と一緒にいられるなら、いつも幸せですごく満ち足りてるよ」

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