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〇146 隣国のお姫様になる私は、婚約破棄の代償を手紙で叩きつける。愚かな王にも分かるように必要なとこだけ書きましたよ。
しおりを挟むどうも。
細かい事は省いてさっさと本題に入ります。
婚約破棄された私です。
ええ、大勢を集めたパーティーでありもしない罪を擦り付けられたうえに、断罪されて、唾をはかれた私です。
貴方の元婚約者の。
とても屈辱的だったので、しばらく夜も眠れませんでした。
枕を引き裂いて恨んでも、ちっとも心が晴れませんでした。
けれど、どうしようもない駄目男の事なんて、さっさと忘れるに限るでしょう?
ですから、次の恋を探す事にしました。
お隣の国の王子は、貴方と違って優しくて良い人です。
しかも貴方と違って、恰好良いですし、貴方と違ってプライドより大切な物をきちんと守れる人です。
ああそうそう。貴方と違って多くの人にも慕われていますよ。すごいですよね。
そんな王子と、お付き合いさせていただいている私は幸せ者です。
毎日毎日、仲良くお散歩したりお話したり、貴方とは一度もしなかった事をしてます。
婚約者として、これから王子を支えていくつもりですから、応援してくださいね。
途方にくれて、みじめな女になっていなくてごめんなさいね。
面と向かって報告できないのがつまらない所ですけど、貴方なんかにはこれで十分ですね。
最後に話した時は、私の顔など一秒たりとも見たくないと言っていましたし。
それ以前だって、つまらない顔を見せるな、視界から消えろと喚いていましたし。
言いたい事は色々とありますが、それは今度会う時までとっておく事にしますわ。
それはおそらく、一か月くらい後の事になるでしょう。
それまでにお体をお大事にしてください。
そういえば、貴方が無くしたと騒いでいた国宝、私の荷物に紛れていましたわ。
手紙の前で怖い顔をしないでくださいな。わざとじゃないんですのよ。ええ。
国を追放する時、早く荷物をまとめろとせっつかれていたので、よく確認しなかったのが盲点ですわね。
確か、これがないと、王と認められないでしたかしら?
大変ですわね。
あら。他にもまだ言う事がありましたわ。
そういえば、貴方の国の騎士が一人いなくなっているのでは?
国を守る期待の剣、救国の剣士と言われるほどの騎士だから、さぞ大変な騒動になっているのではないでしょうか。
でも、安心してくださいな。
彼は無事、私の傍にいますから。
貴方のような主の下では働いていられないと言っていたので、一緒にこちらに来ていただいたんです。
顔を見て安心したいところでしょうけれど、残念ながらこちらも予定が詰まっているので。
一か月後を楽しみにしていてくださいね。
あらあらあら。まだありましたわ。
私ったら、うっかりね。
これじゃあ、おまけの方が本文より長くなってしまいそう。
驚かれるかもしれないですけど私、外交に出ている貴方のご両親と会いましたわ。
追放された後、偶然ばったり出会ったんです。
貴方の横暴な行いを聞いて、たいそう気をもんでいらっしゃいますけれど、まだやらなければならない仕事があるとかで。
あちこち走り回っています。
けれど、ちょうど一か月後に、私たちと一緒にそちらへ向かう事になりました。
その時を楽しみに待っていてくださいね。
久しぶりに、懐かしい貴方の顔をこの目で見られる日を楽しみにしてますわ。
馬鹿な貴方にも分かるように、分かりやすく必要な所だけ書きました。
読めましたよね? えらいえらい すごいすごい よくできまちたねー
俺は、その手紙を握りつぶして喚いた。
周りにいた人間があれこれ言って来るがどうだっていい。
あの女ぁ!
あいつは元からこういうこざかしい真似が得意だった。
あんまりにも知恵がはたらくものだから、難癖をつけて俺の下から追い出してやったと言うのに。
遠くにいても俺を困らせるのか!
怒り狂っていると、俺の元に駆け寄ってくる奴がいた。
この手で張り飛ばされたいのか、と思ったがどうやら何か非常事態が起こったらしい。
そいつは俺にこう言って来た。
「王子! 先ほどなぜか一斉に送られてきた「故郷からの手紙」を受け取った騎士や使用人たちが、みな王宮から出て行ってしまいました!」
それはおそらく故郷からの手紙なんかじゃない。
俺は握りつぶされたその手紙を、床にたたきつけた。
「あの、クソ女があぁぁぁ!」
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