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20 護衛兼使用人ゼイ―ド
しおりを挟む足を踏み入れた場所は、地下水路。
顔を顰めるような匂いだが、本当に衛生的にまずいものは流れていないとアリエルには、分かった。
とこどころに、どこで調達したのか分からないが、水を清める魔道具があったからだ。
裏社会に生きる者達は、そういった場所を住処にしているのだろう。
アリエルとシャナが進んでいくと、人の騒ぎ声がした。
暗い水路の奥。
整備用に作られた広い空間に、数人の男性たちがたむろしていたのだ。
アリエル達が近づく前に気配に気が付いていた彼らは、彼女達に挨拶をする。
「俺達に何か用かい?」
アリエルは単刀直入に言った。
「私に雇われてください」と。
目を丸くした彼等は、アリエル達を警戒したが、二人に敵意がない事はすぐに分かった。
となれば、切り換えは早く、仕事の内容についての打ち合わせが始まる。
闇に生きる者として、仕事のえり好みをしてこなかった彼等だが、貴族を相手にすると無理難題が飛び交う事がたまにある。
そういった事態を警戒していた者は多くいたが、依頼された内容がありふれたものだったのは、肩透かしをくらっていた。
そのまま細かい内容をまとめた彼らは、一人のメンバーを彼女の護衛につけた。
そして、ついでとばかりにその場に出されたのは大きめの金貨袋。
ずっしりとした重みのある金貨の袋を差し出された光景は、それが本命だと言わんばかり。
場を取り仕切っていたまとめ役が頭を掻きながら、アリエルに話しかける。
「俺達と話す間に信頼に足る相手か見極めていた所か、それで本当にやばいのはここから先の話って事だな」
アリエルは顔色を変えずに答える。
「護衛の依頼ももちろん本命よ」
「分かってるよ。でなきゃ、詳細をつめたりしないだろうし」
その男の名前はダリエス。
組織クレメンテのまとめ役の一人である。
クレメンテはいくつかの団体に分かれて、行動しているため、リーダーとは別にまとめ役が数人いるのだ。
ダリエスはこの辺りで活動しているメンバーをまとめる人間だった。
癖のある赤茶色の髪に、赤い瞳をした40代ほどの彼は、金貨袋の中身を一瞬だけ確かめて他のメンバーへ渡す。
「お求めの物は? 情報か? それとも追加の仕事か?」
「情報よ。最近この辺にやってきた人間、それもあなたたちと同じ世界の人間の事について調べて」
「かしこまりました」
ダリエス達も見極めが降り、依頼人が信用にたる人間だとこれまでのやりとりで分かってきた。
そのため、追加の依頼も受ける事が決定したのだ。
その後、アリエルとゼイ―ドは顔を合わせた。
ゼイ―ドは他の仕事で拠点を離れていた。
戻ってきたゼイ―ドは、依頼内容を聞いて興味深そうな反応を示す。
アリエルを上から下までジロジロと見たときは、シャナが苦言を呈した程だ。
「人の婚約者にあまり不躾な視線を向けないでいただこうか」
「失礼、まともな教育を受けてないもんで」
「教育の問題ではないだろう」
シャナとゼイ―ドの相性はあまり良くないと、アリエルは考えた。
他の人間に私用かと思ったが、ゼイ―ドの評判は王都にいた頃から聞いている。
そのため、彼以外に任せるという気は起きなかった。
ゼイ―ドはそれで、とこれからの事を確認する。
「俺は、見習いの使用人として屋敷に滞在するって事でいいか?」
「ええ、これからよろしく」
アリエルが差し出した手をゼイ―ドは掴む。
ゼイ―ドはその手をまじまじと見つめて「貴族と依頼で握手したのは初めてだな」と呟いた。
その後、屋敷に戻ったアリエルは、他の使用人たちと交流するゼイ―ドの様子に気を配った。
ゼイ―ドは飄々とした態度が基本だが、仕事で手を抜く人間ではない。
他の使用人たちの言葉をよく聞き、仕事の技術を身に着けていた。
専用の護衛として傍に置くという手もあったが、アリルに情報が筒抜けである可能性も考え、彼の立場を隠す事にしたのだ。
そんな最中、一番仲良くなったのは、チータだった。
ゼイ―ドはよくチータの面倒を見て、仕事を行っている。
「先輩なのに、すぐ追い抜かれてしまいました」
ゼイ―ドは物覚えが早いので、チータがしょんぼりと項垂れる事が多くなった。
その度に「先輩には愛嬌ってもんがあるじゃないか」と励まされてる。
チータが「それじゃあ、アリエル様の役に立てないじゃないですか」と言って怒るまでがワンセットだ。
二人きりになった際に、それとなくゼイ―ドの家族について尋ねてみたら、組織で昔小さい子供の面倒を見ていたと言ったのだった。
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