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しおりを挟む救われないなら壊れてしまえ。
私には一つしかなかった。
たった一人しかいなかった。
大切だと思える人が、それだけしかいなかった。
そうなりたかったわけじゃない。
そうでなければいいとすら、思っていた。
けれど、こうならざるを得なかった。
大切を得る機会をたくさん奪ってきた。
大切なものになるかもしれないものをたくさん切り捨ててきた。
そうしないと生きていけないから。
でも、大切なものがまったくない人生は怖くて、切り捨てたら何のために生きていけばいいのかわからなくて。
だから、私はたった一つだけを視界に入れ続けるしかない。
救われないなら壊れてしまえばいい。
こんな世界は。
救ってくれなかったくせに、復讐されたくないだなんて、なんて虫の良い話だ。
そう恐怖を、報復の可能性を感じているのなら、まだましだ。
けれど、きっとあれらは罪の意識すら抱かないのだろう。
私には妹がいた。
誰よりもできることが少ないバカでのろまで甘ったれな妹だけど。
私にとってはかけがえのない存在だった。
でも、あれらは妹が生きていることをのぞまないから。
私の世界からは失われてしまった。
壊れてしまえばいいのに。
あいつらが一番壊れてしまえばいいのに。
でも、妹が生きていないなら、そんな世界に意味なんてないから。
世界もやっぱり壊れてしまえばいいのに。
雨の日に出かけた。
妹と水たまりの上を歩いた。
私は濡れないようによけて歩いていたのに、妹が水たまりの上を歩いていくのが楽しいというから。
私も一緒にあるいていた。
晴れの日に出かけた。
遠くまで景色がよく見える事に気が付いた。
お絵描きに最適な日だと言っていた。
私は、傘を持って歩かなくてよかったと思うばかりだったけれど、たまには鉛筆を持ち歩くようになった。
曇りの日に出かけた。
たくさん雲があったから、連想ゲームをするのに困らないねと妹が笑った。
私は夏だったら紫外線に困らなくていいやと思うだけだった。
雨が降ったら面倒だなと思うだけだった。
私には見えない世界を見ている。
妹は私の目だった。
色のない世界に色を付けてくれる絵具だった。
目をこらさないと見えないものを見るために、たくさんの虫眼鏡を差し出してくれる存在だった。
そんな妹がいなくなった。
だから、私にとって世界は、ただの情報。
そこに人がいて。建物があって。景色があるだけ。
たった一つ、復讐心と憎しみだけがともり続けているけれど。
救われないなら壊れてしまえばいい。
救ってくれないなら壊れてしまえばいい。
許さない。
許す日なんてこない。
許さない。
少しも、これっぽっちも。
だから全部壊れてしまえばいい。
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