二周目悪役令嬢は、一味違う。 ~ヤンデレ乙女ゲームの世界でヒロインの代わりに攻略対象を導くよう、神様に言われました~

透けてるブランディシュカ

文字の大きさ
41 / 70
第三章 トール・ゼルティアス

第41話 気合を入れて調査します

しおりを挟む


 小屋を出て屋敷に戻った後は、使用人達が寝泊まりする区画へ向かう。

 そして先週罰を言い渡した使用人の一人を説得して、使用人服をもらい、それに着替えた。
 男物だったが、屋敷にそのまま入れば一目見て私と分かってしまうので仕方がない。我慢した。

 私はそうして変装した後、できるだけ目立たないように屋敷の中をこっそりと移動する。

 私がこれまで事故にあった場所、それぞれの現場にいた者達に話を聞きにいきつつ(もちろん口止めするのも忘れず)、猫の影や猫の毛が落ちていたという証拠を集めていった。

 それを、数人と、十数人と繰り返していけば十分な証拠が集まったのだが……同時に、さすがにトールにばれてしまった。

 適当な頃合いを見計らって、私は今は清掃済みの物置へ向かう事にした。

 そこなら、誰にも聞かれずに話をする事が出来るからだ。

 彼はやはり、ついてきた。




 室内で向かい合ったトール。
 彼の姿を、物置の小さな窓からもれてきた陽の明りが、わずかに照らしている。
 薄暗い部屋の中で見る彼の顔は、疲れている様にも、何かを恐れている様にも見えた。
 あるいはその両方なのか。

「お嬢様、出ていらしたんですね」
「ええ、あんな所で大人しくしていられる私じゃないもの」
「貴方という人は、ここの者に狙われている事が分からないんですか」
「分からないわね」

 怒った顔でこちらに近づいてくるトールに、使用人の一人が採取した猫の毛の一部を見せつける。

「貴方が探してる犯人なんてこの屋敷にはいないわ。全部屋敷に住み着いている黒猫の仕業よ」
「猫はそんな手の込んだ事できませんよ」
「できるわよ。状況が証明しているわ」

 だが、トールは人間が犯人だという事を思い込んでいるようで、なかなか納得しようとしない。

 彼は慎重で、かつかなりの心配性だ。
 百パーセントの証拠がない限り、私の監禁を止めようとはしないだろう。

 やはり、こちらの方面からでは説得できない。

 それだけ私の事を心配してくれるのは嬉しいのだが、そのままではお互いが不幸になるだけだった。

「トール、貴方にとってこの屋敷の人達は何かしら」
「家族ですよ、そう思ってました」
「今でもそうよ」
「嘘です。信じられません。私の大事なお嬢様を傷つけよとするなんて」
「じゃあ、そういう私の事も家族だって思ってくれない? 信じてくれないの?」
「……それは、それとは別です」

 トールは否定しなかったが、肯定もしない。
 彼は私の視線から逃れる様に俯いた。

「そもそも私はお嬢様の使用人です、家族にはなれませんから。その枠を超えるというのなら、家族ではなくもっと別の……」

 言いかけて、トールははっとする。
 そして、ゆっくりと頭を振った。

 それは良くない兆候だ。
 あまり追い詰めすぎると、彼が吸血鬼としての力を使ってしまう。
 そうじゃなかったとしても、あの小屋に連れ戻されてずっと監禁され続ける事になるだろう。
 先程のような……比較的自由があった状態ではなく、完全に身動き出来ないようにされて。

 よく親しんだ相手にそんな事をされるのを想像するとぞっとする。
 逆にだから、いままで彼の内面に踏み込めなかったのだ。

 私はトールの気をそらす為に話題を変える事にした。

「トール……彼らが私を狙っているにしても。そもそも、動機がないじゃない」

 私がゲームそのままの悪役キャラで、嫌な人間だったらともかくとして。
 アリシャという人間は、これまでの人生で人に顔を向けられない事はしてこなかったつもりだ。
 それは屋敷の人間達も分かっている。
 彼等を傍で見てきたトールも分かっているはずなのだ。

 けれど、どうしても最後の一押しが足りない。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

ヒロインが迫ってくるのですが俺は悪役令嬢が好きなので迷惑です!

さらさ
恋愛
俺は妹が大好きだった小説の世界に転生したようだ。しかも、主人公の相手の王子とか・・・俺はそんな位置いらねー! 何故なら、俺は婚約破棄される悪役令嬢の子が本命だから! あ、でも、俺が婚約破棄するんじゃん! 俺は絶対にしないよ! だから、小説の中での主人公ちゃん、ごめんなさい。俺はあなたを好きになれません。 っていう王子様が主人公の甘々勘違い恋愛モノです。

乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが

侑子
恋愛
 十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。  しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。 「どうして!? 一体どうしてなの~!?」  いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。

執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~

犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」 前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。 ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを! その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。 「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」 「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」 (…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?) 自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。 あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか! 絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。 それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。 「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」 氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。 冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。 「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」 その日から私の運命は激変! 「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」 皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!? その頃、王宮では――。 「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」 「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」 などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。 悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

【完結】モブの王太子殿下に愛されてる転生悪役令嬢は、国外追放される運命のはずでした

Rohdea
恋愛
公爵令嬢であるスフィアは、8歳の時に王子兄弟と会った事で前世を思い出した。 同時に、今、生きているこの世界は前世で読んだ小説の世界なのだと気付く。 さらに自分はヒーロー(第二王子)とヒロインが結ばれる為に、 婚約破棄されて国外追放となる運命の悪役令嬢だった…… とりあえず、王家と距離を置きヒーロー(第二王子)との婚約から逃げる事にしたスフィア。 それから数年後、そろそろ逃げるのに限界を迎えつつあったスフィアの前に現れたのは、 婚約者となるはずのヒーロー(第二王子)ではなく…… ※ 『記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました』 に出てくる主人公の友人の話です。 そちらを読んでいなくても問題ありません。

処理中です...