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第五章 邪神ミュートレス02
第52話 嵐が過ぎ去った後
しおりを挟む黒猫が去った後、家族と関係者を交えて話し合いが行われた。
使用人達の方も、しっちゃかめっちゃかになってしまった物置の後片付けや、戦闘の影響で壊れているだろう屋敷家具の片付け、あちこちの内装の補修の相談なので忙しく、どこもかしこも仕事は尽きない。
そんな忙しい状況の中でも、少し前まで彼らの顔にあった不安の色が、心なしか少なくなって見える事が幸いだろう。
不安を抱えるのは、無理もない事だ。
神話として話されている伝説上の存在……邪神ミュートレスが目の前にいて、自分達を襲い掛かってこようとしたのだから。
彼らはまたあの黒猫が戻ってかもしれないと怯えながら、離れにこもり続けている。
原作知識のある私の考えでは、こちらから探さない限りあの猫は姿を現さないと考えているのだが、そんな事実は他の人達には分からない。
取り乱さないのが不思議なくらいだ。
加えて話し合いで明らかにしてしまった情報、あの邪神が私の加護が目当てで襲ってきたかもしれないという事を知ってしまっているので、なおさらだ。
余分な部屋も仕切りもない離れの中で相談するには、どうしても情報の流出を防ぐ事ができない。
しかしそんな状況でも、私のせいでこんな事が起きたのだと文句を言ったりしてこないところが、彼等の人の好さを感じた。
彼らは自らの力で立ち直り、前へ向いて今後の事を真剣に考えている。
そんな仲間達に、火災の件の事を気遣われているトールの顔色は、罪の意識の深さもあってか、すぐれないようだった。
意地悪を言うが、ぜひそのまま申し訳なさそうな表情をし続けて自分の行動を深く反省していてほしい。
彼の為にも、他の皆の為にも。
何はともあれ、そんな中でも表面的にはみな、己の成すべき事を順調にこなしていっていた。
然るべきところへ連絡したり対応しり、損弾を重ね段取りをつけたり。
そんな風にそれぞれの話が終わる頃には日も暮れていて、夜の時間になっていた。
黒猫の襲撃を受けてから、半日ほどの時間が経った。
私達は、さすがにそのまま離れに立てこもり続けるわけにもいかなかったので移動していた。
お腹も空くだろうし、睡眠もとらなければならない。
戦々恐々となりつつも、私達は用心しながら屋敷へ戻り、警戒を解く事なくそれからの時間を過ごしたのだった。
色々あった一日なので、彼等にはじっくり休んでもらいたい。
仕事がたまっているところもあるだろうが、本日ばかりは仕方がないだろう。
だが、
「こんな夜遅くに申し訳ありません」
私はまだ、お兄様や攻略対象であるウルベス様達を話し合いをしなければならなかった。
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