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第49話 闇の声と恋人メイドの光
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もう日は暮れていたが、王都御用達の指輪技師ならば依頼を受けてくれるはずだ。何しろ俺はこの国の再建を任されているセイオウなのだから。
そんなことを考えていた時期が、俺にもありました。
「フリージア王室の依頼ねえ、明日にしてくれないか?」
高価な宝石を扱っている思えない風貌の、角刈りにマッチョな指輪技師は、露骨にめんどくさそうに断ってきた。店じまい時に入ってきた俺も悪いが、客にその態度はないと思う。
「そこを何とか頼む」
「そういわれてもねえ、そもそもフリージア王室の未払金が、溜まっているくらいなんだが」
マッチョ宝石技師はあきれるように言う。こんなところにも、借金はあるのか。
「とにかく、王国ではなく俺個人の依頼だ、金は払う。大至急、指輪にしてくれ」
王国の名前を出したのは、むしろ失敗だった。何だよあの絶賛衰退中の国め。足手まといじゃないか。
「まあ既存のリングにはめ込むだけだからな、簡単な仕事だ。明日にはできてるから、取りに来てくれ」
「なんとか、今日中に作ってもらうことはできないか?」
「あのなあ、もう店じまい中なの。見てればわかんだろ?」
売り物の宝石が入った箱を大切そうに店の奥に運びながら、マッチョ技師は答える。
娼館の女達を征服し、マイヤ事務官に優しくされ、いい気になっていた俺。だがそんなちっぽけなプライドは、マッチョ技師によって木っ端みじんに打ち砕かれてしまった。
俺はフリージア王国の国家再建全権責任者なのだが、そんなことはこの商人の男には関係ない。彼にとって俺は貧乏国の番頭の様な立場なのだろう。
俺は現実を知り、軽くショックを受ける。いささか天狗になっていた様だ。
’仕方ない。宝石を預け、明日、レイナと一緒に取りに来るか。俺はついにあきらめる事にした。
トボトボと一人で歩き、帰路に就く。娼館で感じていた万能感は無くなっていた。
やはり〝サイコパス〟のスキルを、常時オンにすべきなのだろうか。オンにしている間は、良心の呵責を感じなくなり、なんでもできるような気分になる。例えば、隷属状態にあるライカを使って、マッチョ技師を篭絡させるくらのことは、してみせるだろう。
(いや、それは人としてしてはいけないことだ。そもそも、そんなことをしてプレゼントを用意しても、レイナは喜ばない)
自身に言い聞かせるような俺の言葉に、俺の中の別の心が『本当にそうか?』と問いかけてくる。今までで聞いたことがないくらい暗く、太い俺の心の声。
『偽善は止めろ。そもそもサイコナスのスキルで娼館を再建するのと、その娘達を使って指輪を修理させるのと、どれほどの違いがある?』
俺の別の心が、言葉を続ける。その言葉は非常に不愉快だった。
『そもそもセイオウのスキルを使って、レイナも隷属させたらいい。そうすれば指輪一つで悩まなくていい』
(止めろ)
『隷属させれば、レイナの清楚さも尊厳も全てはぎ取り、屋敷で裸で生活させることだってできるぞ』
(うるさい)
『なぜライカを隷属させるのが良くて、レイナがダメなんだ? 処女だったからか?』
(黙れ)
『元の世界でも、お前は女に対して同じことをすべきではなかったか? 優しいだけの男など、都合よく使われるだけという事は、嫌というほど知っているんだろう? 例えサイコパスでも、強い男を目指すべきだったのではないか? 間違ってたのは、姉達ではなく、お前なのだ』
(くっ・・・)
別の俺が発した最後の言葉が、胸に突き刺さる。俺のくせに、痛いところを突いてくる奴だ。いや、俺だからというべきか。
俺は深く深呼吸をして、心の声を封じ込める。今は余計な事は考えなくていい。やっと屋敷に帰って、レイナと会えるのだ。そのことだけを考えよう。
(早くレイナに会いたい)
気分が悪い。スキル〝サイコパス〟を発動した反動だろうか、それともライカに激しい行為を強要し、上下関係を刻み込むという慣れない行為をしたためだろうか。あるいは単に疲れ果てているのか。
おそらくそのどれでもない。『女を支配しろ』という先ほどの俺の暗い言葉が、矢のように心の奥底に突き刺さっているからだ。
体ではなく、心がカラカラに乾く感覚。こんな感覚は、初めてだ。
とにかく、一刻も早くレイナに会いたかった。それだけを考えながら、俺は速足で屋敷のドアを開ける。
「あ、おかえりなさい、旦那様」
エプロンメイド姿のレイナが、無邪気な笑顔で微笑んでくれる。俺が昼間に娼館でおこなった行為は、彼女にとっては裏切の行為のはずだ。そもそも快楽で女を隷属化するなど、裏切り以前に人として許されない行為なのだろう。
それでも無邪気な笑顔を向けてくれるレイナは、やはり女神みたいに光り輝いて見えた。
「・・・た、ただいま」
「うん、おかえりなさい、約束通り、急いで帰ってきてくれたんだね、ありがと」
息を切らしている俺の姿を見て、夕食の為に急いで帰ってきたのだと勘違いしたらしい。確かに、テーブルの上には美味しそうな料理が並んでいる。
「見てみて~、このメイド服、似合う? 余ってたメイド服のスカートを、短くしたんだよ? フリージア第一号のミニスカートなんだよ~♡」
そういうと、レイナは膝丈くらいにカットされたミニスカートの両端を、可愛らしくつまむ。
白く美しい太ももが、あらわになる。
──ドクン──
心臓が激しく鼓動する音が聞こえる。セイオウのジョブの影響だろうか、娼館であれだけしたのに、マグマの様な熱く強い欲求を感じる。
俺は無言でレイナの肩をつかみ、力いっぱい抱きしめた。
「きゃ・・・だ、旦那様?」
可愛らしい悲鳴をあげるレイナ。このまま押し倒して、レイナの中に全ての欲情を叩きつけたかった。それでこの心の渇きが満たされるのかはわからなかったが、それ以外の方法を思いつかなかない。
「ダメだよ、ご飯冷めちゃうよ?」
夕食なんて、無視すればいい。あとで何とでもなる。押し倒しても、レイナならわかってくれるはずだ。どんなに激しく犯しても、彼女はその身体で受け入れてくれるだろう。そんな確信があった。
「みんなあたしの誕生日の為に、美味しいごおかずを持ってきてくれたんだよ、食べなきゃだめだよ~」
(──た、誕生日!?)
そうだ、今日はレイナの誕生日だった。
俺はその優しい単語を聞くことによって、暗く陰惨な情欲から解放される。暗闇で一筋の光と出会ったようだな、気分だった。
「・・・そうなのか?」
「そうだよ。裁縫工房のみんながね、いろんな料理を持ってきてくれたんだ。レシピも教えてくれたから、つくってあげられるよ」
裁縫工房の人たちの優しい善意を、無下にするわけにはいかない。それにその優しさは、今の俺の心の渇きを癒すモノと似ているように感じた。
「・・・後でたっぷりとしてくれるか?」
「う、うん。もちろん、いいよ」
「昨晩とは比較にならないくらい恥ずかしいことをするぞ?」
「うん。あたしにできることなら、なんでも・・・」
「朝までぶっ通しになるかもだが、いいのか?」
「が、がんばります。だから今は、ご飯食べよ?」
俺はついに胸元からレイナを開放する。条件を突きつけたかったわけではない。単に少し、レイナの優しさに甘えてみたかっただけなのだ。
だが俺の言葉を本気にしたレイナは小声で「ふう、明日からお昼寝の時間を確保しなきゃ」とつぶやいていた。
そんなことを考えていた時期が、俺にもありました。
「フリージア王室の依頼ねえ、明日にしてくれないか?」
高価な宝石を扱っている思えない風貌の、角刈りにマッチョな指輪技師は、露骨にめんどくさそうに断ってきた。店じまい時に入ってきた俺も悪いが、客にその態度はないと思う。
「そこを何とか頼む」
「そういわれてもねえ、そもそもフリージア王室の未払金が、溜まっているくらいなんだが」
マッチョ宝石技師はあきれるように言う。こんなところにも、借金はあるのか。
「とにかく、王国ではなく俺個人の依頼だ、金は払う。大至急、指輪にしてくれ」
王国の名前を出したのは、むしろ失敗だった。何だよあの絶賛衰退中の国め。足手まといじゃないか。
「まあ既存のリングにはめ込むだけだからな、簡単な仕事だ。明日にはできてるから、取りに来てくれ」
「なんとか、今日中に作ってもらうことはできないか?」
「あのなあ、もう店じまい中なの。見てればわかんだろ?」
売り物の宝石が入った箱を大切そうに店の奥に運びながら、マッチョ技師は答える。
娼館の女達を征服し、マイヤ事務官に優しくされ、いい気になっていた俺。だがそんなちっぽけなプライドは、マッチョ技師によって木っ端みじんに打ち砕かれてしまった。
俺はフリージア王国の国家再建全権責任者なのだが、そんなことはこの商人の男には関係ない。彼にとって俺は貧乏国の番頭の様な立場なのだろう。
俺は現実を知り、軽くショックを受ける。いささか天狗になっていた様だ。
’仕方ない。宝石を預け、明日、レイナと一緒に取りに来るか。俺はついにあきらめる事にした。
トボトボと一人で歩き、帰路に就く。娼館で感じていた万能感は無くなっていた。
やはり〝サイコパス〟のスキルを、常時オンにすべきなのだろうか。オンにしている間は、良心の呵責を感じなくなり、なんでもできるような気分になる。例えば、隷属状態にあるライカを使って、マッチョ技師を篭絡させるくらのことは、してみせるだろう。
(いや、それは人としてしてはいけないことだ。そもそも、そんなことをしてプレゼントを用意しても、レイナは喜ばない)
自身に言い聞かせるような俺の言葉に、俺の中の別の心が『本当にそうか?』と問いかけてくる。今までで聞いたことがないくらい暗く、太い俺の心の声。
『偽善は止めろ。そもそもサイコナスのスキルで娼館を再建するのと、その娘達を使って指輪を修理させるのと、どれほどの違いがある?』
俺の別の心が、言葉を続ける。その言葉は非常に不愉快だった。
『そもそもセイオウのスキルを使って、レイナも隷属させたらいい。そうすれば指輪一つで悩まなくていい』
(止めろ)
『隷属させれば、レイナの清楚さも尊厳も全てはぎ取り、屋敷で裸で生活させることだってできるぞ』
(うるさい)
『なぜライカを隷属させるのが良くて、レイナがダメなんだ? 処女だったからか?』
(黙れ)
『元の世界でも、お前は女に対して同じことをすべきではなかったか? 優しいだけの男など、都合よく使われるだけという事は、嫌というほど知っているんだろう? 例えサイコパスでも、強い男を目指すべきだったのではないか? 間違ってたのは、姉達ではなく、お前なのだ』
(くっ・・・)
別の俺が発した最後の言葉が、胸に突き刺さる。俺のくせに、痛いところを突いてくる奴だ。いや、俺だからというべきか。
俺は深く深呼吸をして、心の声を封じ込める。今は余計な事は考えなくていい。やっと屋敷に帰って、レイナと会えるのだ。そのことだけを考えよう。
(早くレイナに会いたい)
気分が悪い。スキル〝サイコパス〟を発動した反動だろうか、それともライカに激しい行為を強要し、上下関係を刻み込むという慣れない行為をしたためだろうか。あるいは単に疲れ果てているのか。
おそらくそのどれでもない。『女を支配しろ』という先ほどの俺の暗い言葉が、矢のように心の奥底に突き刺さっているからだ。
体ではなく、心がカラカラに乾く感覚。こんな感覚は、初めてだ。
とにかく、一刻も早くレイナに会いたかった。それだけを考えながら、俺は速足で屋敷のドアを開ける。
「あ、おかえりなさい、旦那様」
エプロンメイド姿のレイナが、無邪気な笑顔で微笑んでくれる。俺が昼間に娼館でおこなった行為は、彼女にとっては裏切の行為のはずだ。そもそも快楽で女を隷属化するなど、裏切り以前に人として許されない行為なのだろう。
それでも無邪気な笑顔を向けてくれるレイナは、やはり女神みたいに光り輝いて見えた。
「・・・た、ただいま」
「うん、おかえりなさい、約束通り、急いで帰ってきてくれたんだね、ありがと」
息を切らしている俺の姿を見て、夕食の為に急いで帰ってきたのだと勘違いしたらしい。確かに、テーブルの上には美味しそうな料理が並んでいる。
「見てみて~、このメイド服、似合う? 余ってたメイド服のスカートを、短くしたんだよ? フリージア第一号のミニスカートなんだよ~♡」
そういうと、レイナは膝丈くらいにカットされたミニスカートの両端を、可愛らしくつまむ。
白く美しい太ももが、あらわになる。
──ドクン──
心臓が激しく鼓動する音が聞こえる。セイオウのジョブの影響だろうか、娼館であれだけしたのに、マグマの様な熱く強い欲求を感じる。
俺は無言でレイナの肩をつかみ、力いっぱい抱きしめた。
「きゃ・・・だ、旦那様?」
可愛らしい悲鳴をあげるレイナ。このまま押し倒して、レイナの中に全ての欲情を叩きつけたかった。それでこの心の渇きが満たされるのかはわからなかったが、それ以外の方法を思いつかなかない。
「ダメだよ、ご飯冷めちゃうよ?」
夕食なんて、無視すればいい。あとで何とでもなる。押し倒しても、レイナならわかってくれるはずだ。どんなに激しく犯しても、彼女はその身体で受け入れてくれるだろう。そんな確信があった。
「みんなあたしの誕生日の為に、美味しいごおかずを持ってきてくれたんだよ、食べなきゃだめだよ~」
(──た、誕生日!?)
そうだ、今日はレイナの誕生日だった。
俺はその優しい単語を聞くことによって、暗く陰惨な情欲から解放される。暗闇で一筋の光と出会ったようだな、気分だった。
「・・・そうなのか?」
「そうだよ。裁縫工房のみんながね、いろんな料理を持ってきてくれたんだ。レシピも教えてくれたから、つくってあげられるよ」
裁縫工房の人たちの優しい善意を、無下にするわけにはいかない。それにその優しさは、今の俺の心の渇きを癒すモノと似ているように感じた。
「・・・後でたっぷりとしてくれるか?」
「う、うん。もちろん、いいよ」
「昨晩とは比較にならないくらい恥ずかしいことをするぞ?」
「うん。あたしにできることなら、なんでも・・・」
「朝までぶっ通しになるかもだが、いいのか?」
「が、がんばります。だから今は、ご飯食べよ?」
俺はついに胸元からレイナを開放する。条件を突きつけたかったわけではない。単に少し、レイナの優しさに甘えてみたかっただけなのだ。
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