異世界に召喚されたが『聖王』じゃなくて『性王』(風俗王)だったので、下品だと追放された。仕方がないのでチート風俗魔法で風俗国家を再建します

横島イクオ

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開戦(上)

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 それから瞬く間に二か月がたった。
 俺は裁縫工房と娼館の経営、城壁の修理、浴場の開設、そして密かに軍を整備するという業務に追われていた。しかも夜はレイナ、ミア、ユリスの三人とレベルアップに励んでいたのだ。

 フリージアの経済は上向き、街には活気が戻っていた。人が集まれば金も集まる、財政は改善し、駐屯費の支払いも問題なくこなせるだろう。あくまで駐屯費が今までと同じ金額であれば、の話だが──

 俺はミアとユリスを連れて、王城の一室で待機していた。今日は駐屯費の支払日である。エリス姫はマイヤ事務官らと共に、ゲジン将軍と面談中とのことだ。

 ちなみにレイナは旧エルディアの高官たちと面談があるとかで、席を外している。

「大丈夫でしょうか、マスター?」

 不安げなユリスの声。彼女も今日が重要な日であることを理解しているようだ。

「大丈夫だ。ユリス達も頑張ってくれてるしな」

 俺の風俗魔法は恐ろしいほどにまでレベルアップしていた。戦争になった場合は、それを利用して戦い抜く覚悟だった。

 とはいえ駐屯費の支払いが済めば、それが最良だった。フリージアはどんどん豊かになっているので、開戦の時期を遅らせた方が、こちらは有利になるからだ。

(エリス姫の交渉力に期待したいが、難しいだろうな)

 ハニバルやフウマのアサシンの女達の情報を分析する限り、ゲジン将軍はフリージアを破産させ、略奪して骨の髄まで搾り取る目論見だろう。

「あっ、エリス姫が戻られたようです」

 ユリスが言う通り、ドアから入ってきたのはエリス姫だった。その整った綺麗な顔立ちはいつも通りだったが、どことなく表情が暗い。傍らのカノン隊長の顔は赤く、怒りを隠せないでいた。

「不調に終わった様だな」

「はい。ゲジン将軍は、駐屯費を5倍に値上げしてきました」

「5倍、か」

 全てを吐き出せば支払えない金額ではない。だがそれはフリージアの女達の血税を、ゲジン将軍の懐に入れることになる。そしてその一部はゼレス国王に流れ、旧エルディア王国派を弾圧する資金に使われるのだろう。

 マイア事務官もカノン隊長も無言のまま、俺を見つめている。駐屯費の支払いを拒否すれば、開戦は必至。長い戦いが始まることになる。

「セイオウ様、もし今開戦した場合、勝率はどのくらいでしょう?」

 エリス姫が後ろの二人の言葉を代弁したかのように、尋ねてくる。

「相手が駐屯兵団とゲジンの私兵なら、勝てる。ゼレス王国の正規軍が来た場合も、戦えるだろう」

 新しい武器と、拡大したフリージア親衛隊と民兵、そして旧エルディア正規軍を合わせれば、かなりの戦力になる。それに俺の魔法を足せば、そうそう負けはしない。

「だが問題がある。ゼレス国王が召喚した来訪者の情報がまだない。そいつがどんな魔法を使うかわからない以上、勝負には出られない」

 俺はさらに正直に答える。来訪者が俺と同等以上の魔法を使う可能性もある。勝負に出るには、余りにリスクが高かった。

「しかし、駐屯費を5倍とは、国富のほとんどを差し出すことになります。裁縫工房の者達が、娼館の女達が必死に稼いだ富なのです」

 マイヤ事務官が、悔し涙を浮かべながら答える。

「我々の血を見るような訓練は、何のためのものなのでしょう?」

 カノン隊長も、悔しさで歯を食いしばりながら、吐き捨てるようにつぶやく。

 誰がなんといようが、勝算がない戦争にフリージアを投入する気にはなれない。

「ゼレス王国の来訪者をなんとかできれば、いいのですか?」

 エリス姫だけは冷静に、俺に問いかけてくる。

「ああ、それが条件だ」

「・・・では、しばしお待ちください」

 俺の答えに、姫は意味深につぶやく。数分後、報告のために席を外していたミアが部屋に飛び込んできた。

「主様、急報です! ゼレス王宮が火事で全焼したとの事です」

「何だと!?」

 俺はあまりの事に驚きの声をあげる。

「召喚装置はどうなった?」

「完全に焼失したとのことです」

「ハニバルが、やってくれたのか・・・」

 王都に潜伏させていたハニバルに、新たな来訪者が召喚されないように手を打てと命じたが、まさか本当に成功させるとは。火事ならば証拠は残らないはず。さすがは元エルディア情報部部長だ。

「ハニバルは?」

「フウマの部下達と共に、フリージアに向かっているとの事です」

 よし。ぜひ生きて帰ってきてくれ。

「セイオウ様、再び問います。勝算は、どのくらいでしょう?」

 エリス姫が、再び問いかけてくる。落ち着いた表情だが、目だけは異様に光っている。この焼き討ちも、彼女の差し金だったか。

(う~む)

 ゼレス王国に戦闘用の強力な魔術師はいない。諸外国の介入はない上に、ゼレス王国軍主力は外征中だ。相手が中世レベルの軍隊なら、勝てる。それでも軍事的にほぼ素人の俺が、どこまで戦えるかという不安もある。そしてそんな俺に、皆が従ってくれるかという問題もあった。

 それらを差し引き、必死で計算する。 

「・・・6割、いや5割だ。それ以上は保証できない」

「5割!?」

 エリス姫が瞳を見開く。低すぎただろうか?

「ああ、すまないがそれ以上は約束できない」

 結局のところ、50%。戦争はやってみなければわからないのだ。
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