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出発準備
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タラッタと再会したその日は話が弾み、いつの間にか夜が明けていた。
人魚たちは丈夫で徹夜したくらいでは体調に不調は出ないが、タラッタやローガンはものすごく眠たそうである。ちなみにミントは早々に眠って早朝に起きたので元気だ。
ひとまず朝食を済ませ、人間たちは一旦仮眠を取ることになった。その前にタラッタに頼んであった養殖場に使う網をもらい、バハルと幼馴染たちは例の四匹の海魔のところへ向かう。
出発前に養殖場を完成させておこうと思ったのだ。ちなみにこの話は幼馴染たちにも話してあるので特に改めて説明する必要はない。
「見えてきたな」
「あの大きな岩が並んでるところがそう?」
「ああ」
「なにかいるようだが……」
「あ、あれはタコの海魔だな」
巨大なタコの海魔に少し警戒心を抱いている二匹を他所にバハルはすいーと距離を詰める。向こうもこちらに気づいたらしく大きく太い足を持ち上げて挨拶をしてくれた。
「やあやあ、人魚さん。えらい朝早うからどないしたんや?」
「ほら、前に言っていた網。これを持ってきたんだ。あんたこそなにやってるんだ?」
「わいは養殖場の手入れや。ごみとかが流されて引っかっかたり砂に紛れ込んで汚れるんでな」
意外と几帳面な性格らしい。海魔たちの様子は通りがかりにちらりと確認する程度であまり関わっていなかったが、どうやら欠かさずメンテナンスをしていたようだ。二つの養殖場は作った当初と同じきれいさを保っている。
「それは助かるよ。網も持ってきたし、さっそく貝を捕まえて入れよう」
「僕たちはなにをすればいいんだ?」
「二匹は網を持って待機していてくれ。ある程度、貝を放り込んだらすぐに閉められるように」
「分かったわ」
それからバハルはタコと協力して貝の海魔を拾い集め、養殖場へと放り込んでいく。途中で残りの三匹の海魔を合流したおかげであっという間にたくさんの貝が囲いの中を満たした。
バハルは幼馴染たちに合図を出して二つの養殖場に網を被せた。
タラッタの用意してくれた網は目が細かく、これなら稚貝も逃げることはないだろう。
流されないようにしっかりと固定して養殖場は完成した。
「よし、これで食料問題もなんとかなるな」
「感謝するよ。あたいたちも無駄な争いはやめてこれからは協力するさね」
「おう! 新しい巣に腹を満たす餌場、こんなに快適な場所で暴れるわけにはいかないからな!」
「うふふっ。まあ、巣の方はちょっと狭いですけど……。我慢しましょう」
「人魚さん、ほんまにありがとさん」
「別にいいよ。あのままだと人魚たちが怒ってより面倒な争いになっていたかもしれないし……」
主に怒るのはゼーだろうが。なにはともあれ丸く収まったので良しとしよう。
「それじゃあ、俺たちはもう行くよ。しばらく北へ向かうからなにかあったら、ゼーという老人魚に言ってくれ。ここに来たこともあるから分かるだろ」
「そら、わかるけども……。北へ?」
「ちょっと用事があってな」
なにやらタコが腕組みをして唸っている。なにか問題でもあるのだろうかと、首を傾げていると他の海魔たちも顔を見合わせていた。
「わいらがここへ来た理由は覚えてるやろか?」
「ん? なんかサメの海魔から逃げてきたんだっけ」
「そや。人魚さんなら大丈夫だとは思うけども……気ぃつけてな」
「あー、そういうことか。分かった。サメの海魔には気をつけるよ」
どうやら身を案じてくれていたらしい。こんな大きな海魔を四匹も追いやったくらいだからよほど凶暴なのだろう。
人魚が海の中で一番強いと言えど油断は禁物だ。幼馴染たちと頷き合ってよく気をつけることにした。
それにしても本当に知能の高い海魔たちである。普通に会話して協力して作業ができる。姿は懸け離れているが人間と接しているようだ。
ローガンが興奮するのも頷ける。やはり海は広く色んな未知なものがたくさんあるのだろう。そう考えると今回の旅が楽しみになってきた。
「よし、洞窟へ戻ろう!」
「ええ、そうしましょう」
「ほな、さいなら~」
四匹の海魔たちに別れを告げて人魚たちは洞窟へと帰る。道中で何匹かの人魚とすれ違ったがみんな、さっとすぐにどっかへ行ってしまった。
「見事に避けられているな」
「そりゃあ、まあ。人間の船がくるなんて言い回ったらそうなるだろうな……」
「そうよね。人間は恐ろしいものってみんな思っているもの」
「その、ラメールは大丈夫なのか?」
彼女は他の人魚たちとも仲が良い。今回のことで爪弾きにあったりしないだろうか。そんな心配を口にすると、ラメールは明るく笑った。
「大丈夫よ! バハルと一緒にいるのは知っているもの。今さらそんなことはされないわ」
「つまり変わり者の人魚とも分け隔てなく接するいい人魚という認識ということか……」
「やだ、そんな意味で言ったんじゃないわ!」
「分かってる。冗談だよ。……ラメール、サモット、いつもありがとな」
「なんだ急に。気持ち悪い」
バハルが人魚としてどれだけおかしなことをしても二匹は変わらず側にいてくれる。そのありがたみを改めて感じて感謝を告げると、サモットが心底気持ち悪いといった表情浮かべた。失礼なやつである。
「……僕たちはお前の変なところに助けられた。だから、別に気にしない」
ふんっと顔をそらしサモットが呟く。助けられたとは稚魚のときのことだろう。
弱っていたラメールと彼女に寄り添っていたサモットに手を差し伸べたのはバハルだ。人魚の稚魚たちは海を漂い生き抜いていく。だがバハルはさっさと安全な場所を確保し、増殖クラゲをその中で繁殖させていた。そこに幼馴染の二匹も連れてきたのだ。おかげである程度大きくなるまで最小の危険で育つことができた。
「あのときはとっても助かったのよ。だから、私たちはバハルがいい人魚だってよく分かってるの」
「食い意地は張ってるし、ふらふらどこかへ探検に行ってしまう変わり者ということに変わりはないがな」
「一言余分だぞ、サモット。お前だって少し前までなにかにつけて勝負だなんだってうざ絡みしてきたじゃないか」
「うざっ……!?」
今ではすっかり大人しくなったというか……落ち着いたというか……。タラッタと出会ってから大きく環境が変わったせいだろう。
文句を並べたて始めたサモットとじゃれ合うように口喧嘩をしながら泳ぐ。ラメールも遊んでいると分かっているのか洞窟に到着するまで、特に止めることなくニコニコと幼馴染たちを眺めていた。
「あら、おかえりなさい」
口喧嘩もそこそこに洞窟へ顔を出した人魚たちに身支度を整えたタラッタが声をかけた。どうやら仮眠を終え、出発の準備をしていたようだ。
「網は役にたったかしら」
「ああ、おかげさまで。それで、おっさんとタラッタの方はよく眠れたか?」
「うむ。出立の準備も終えておる。最後にあの海魔たちに会えぬのはもったいないが……」
「あー、はいはい。特に変わりなかったからいいじゃないか」
しょんぼりしているローガンを雑に慰め、バハルは彼の荷物に視線を移す。積み上げられた本はすべて魔法師がここに来てから制作したものだ。なかなかの量にこれを運ぶサモットが頬を引きつらせている。
「じゃあ、サモット……。時間もかかるだろうし、さっそく頼む」
「くっ……。今までも思っていたが、自分の魔法の便利さが憎たらしくなってきた……」
「まあまあ、サモット。私も手伝うから頑張りましょう?」
「ラメール……!」
まったく単純な幼馴染である。ラメールに慰められ、すぐに元気を取り戻して荷物を運び始めた。
「ふむ、よろしく頼む。ところでバハルよ」
「なんだ、おっさん」
「精霊はどうするのだ?」
バハルにまったく相手にされず、畑の隅でいじけているミントをローガンが指差す。
「置いていくよ」
「待つのじゃ! なぜじゃ! わしも一緒にいくぞ! 船とやらなら水中移動ではないからわしも行けるじゃろ!」
会話を聞いていたらしいミントが走り寄ってきて必死の形相で抗議する。その様子を魔法師が興味深そうに観察していた。
「船でいけるけど、畑はどうするんだ。せっかく大きく育ってきてるのに……管理者がいなくなったら枯れてしまうだろ」
「むむっ」
「それだけではない。精霊は本体もともにいかねばならぬだろう。これを運ぶのは大変だし、北は寒さも厳しい。植物のダメージは計り知れないだろう」
いくら精霊が宿る植物だとしても、流氷があるような極寒の地では植物は耐えれない。ミントのことは苦手だが枯れてほしいとまでは思っていないのでここに残ってもらうことにした。
「……仕方ないのじゃ……」
「俺がいない間、畑を頼むよ。これはミントちゃんにしか頼めないことだからさ」
「わしにしか頼めない?」
「そうだ。な、頼むよ」
「……ふふん! 仕方ないのう! 留守はわしに任せい!」
どんっと力強く胸をたたいてミントが言う。どうやらうまく説得できたようだ。実際、畑が荒れてしまうのはもったいないないと思っていたので、彼女が管理を続けてくれるのは嬉しい。
「ありがとな。頼んだぞ」
「うむ! あ、そうじゃ! すこし待っておれ」
「なんだ?」
ダダダッとまた走り去ったミントが畑でなにかして戻って来る。両手で自分より大きなものを持ってきてバハルに手渡した。
「これは?」
「少し小ぶりじゃが食べられるじゃろうて。芋じゃよ」
「芋? え、もう収穫できたのか!?」
「昨晩、力を集中させて人数分のみ収穫できるようにしたのじゃ」
「わー! すごいじゃないか! ありがとう、ミントちゃん!」
芋の種類は分からないが、見た目は前世のさつまいもに似ている。素直に喜んで礼を告げるとミントは少し照れていた。
芋を五個ほど受け取り、それらもサモットに頼んで船へ運んでもらった。
それから準備が整ったバハルたちはミントに別れを告げて北へと出発したのだった。
人魚たちは丈夫で徹夜したくらいでは体調に不調は出ないが、タラッタやローガンはものすごく眠たそうである。ちなみにミントは早々に眠って早朝に起きたので元気だ。
ひとまず朝食を済ませ、人間たちは一旦仮眠を取ることになった。その前にタラッタに頼んであった養殖場に使う網をもらい、バハルと幼馴染たちは例の四匹の海魔のところへ向かう。
出発前に養殖場を完成させておこうと思ったのだ。ちなみにこの話は幼馴染たちにも話してあるので特に改めて説明する必要はない。
「見えてきたな」
「あの大きな岩が並んでるところがそう?」
「ああ」
「なにかいるようだが……」
「あ、あれはタコの海魔だな」
巨大なタコの海魔に少し警戒心を抱いている二匹を他所にバハルはすいーと距離を詰める。向こうもこちらに気づいたらしく大きく太い足を持ち上げて挨拶をしてくれた。
「やあやあ、人魚さん。えらい朝早うからどないしたんや?」
「ほら、前に言っていた網。これを持ってきたんだ。あんたこそなにやってるんだ?」
「わいは養殖場の手入れや。ごみとかが流されて引っかっかたり砂に紛れ込んで汚れるんでな」
意外と几帳面な性格らしい。海魔たちの様子は通りがかりにちらりと確認する程度であまり関わっていなかったが、どうやら欠かさずメンテナンスをしていたようだ。二つの養殖場は作った当初と同じきれいさを保っている。
「それは助かるよ。網も持ってきたし、さっそく貝を捕まえて入れよう」
「僕たちはなにをすればいいんだ?」
「二匹は網を持って待機していてくれ。ある程度、貝を放り込んだらすぐに閉められるように」
「分かったわ」
それからバハルはタコと協力して貝の海魔を拾い集め、養殖場へと放り込んでいく。途中で残りの三匹の海魔を合流したおかげであっという間にたくさんの貝が囲いの中を満たした。
バハルは幼馴染たちに合図を出して二つの養殖場に網を被せた。
タラッタの用意してくれた網は目が細かく、これなら稚貝も逃げることはないだろう。
流されないようにしっかりと固定して養殖場は完成した。
「よし、これで食料問題もなんとかなるな」
「感謝するよ。あたいたちも無駄な争いはやめてこれからは協力するさね」
「おう! 新しい巣に腹を満たす餌場、こんなに快適な場所で暴れるわけにはいかないからな!」
「うふふっ。まあ、巣の方はちょっと狭いですけど……。我慢しましょう」
「人魚さん、ほんまにありがとさん」
「別にいいよ。あのままだと人魚たちが怒ってより面倒な争いになっていたかもしれないし……」
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「それじゃあ、俺たちはもう行くよ。しばらく北へ向かうからなにかあったら、ゼーという老人魚に言ってくれ。ここに来たこともあるから分かるだろ」
「そら、わかるけども……。北へ?」
「ちょっと用事があってな」
なにやらタコが腕組みをして唸っている。なにか問題でもあるのだろうかと、首を傾げていると他の海魔たちも顔を見合わせていた。
「わいらがここへ来た理由は覚えてるやろか?」
「ん? なんかサメの海魔から逃げてきたんだっけ」
「そや。人魚さんなら大丈夫だとは思うけども……気ぃつけてな」
「あー、そういうことか。分かった。サメの海魔には気をつけるよ」
どうやら身を案じてくれていたらしい。こんな大きな海魔を四匹も追いやったくらいだからよほど凶暴なのだろう。
人魚が海の中で一番強いと言えど油断は禁物だ。幼馴染たちと頷き合ってよく気をつけることにした。
それにしても本当に知能の高い海魔たちである。普通に会話して協力して作業ができる。姿は懸け離れているが人間と接しているようだ。
ローガンが興奮するのも頷ける。やはり海は広く色んな未知なものがたくさんあるのだろう。そう考えると今回の旅が楽しみになってきた。
「よし、洞窟へ戻ろう!」
「ええ、そうしましょう」
「ほな、さいなら~」
四匹の海魔たちに別れを告げて人魚たちは洞窟へと帰る。道中で何匹かの人魚とすれ違ったがみんな、さっとすぐにどっかへ行ってしまった。
「見事に避けられているな」
「そりゃあ、まあ。人間の船がくるなんて言い回ったらそうなるだろうな……」
「そうよね。人間は恐ろしいものってみんな思っているもの」
「その、ラメールは大丈夫なのか?」
彼女は他の人魚たちとも仲が良い。今回のことで爪弾きにあったりしないだろうか。そんな心配を口にすると、ラメールは明るく笑った。
「大丈夫よ! バハルと一緒にいるのは知っているもの。今さらそんなことはされないわ」
「つまり変わり者の人魚とも分け隔てなく接するいい人魚という認識ということか……」
「やだ、そんな意味で言ったんじゃないわ!」
「分かってる。冗談だよ。……ラメール、サモット、いつもありがとな」
「なんだ急に。気持ち悪い」
バハルが人魚としてどれだけおかしなことをしても二匹は変わらず側にいてくれる。そのありがたみを改めて感じて感謝を告げると、サモットが心底気持ち悪いといった表情浮かべた。失礼なやつである。
「……僕たちはお前の変なところに助けられた。だから、別に気にしない」
ふんっと顔をそらしサモットが呟く。助けられたとは稚魚のときのことだろう。
弱っていたラメールと彼女に寄り添っていたサモットに手を差し伸べたのはバハルだ。人魚の稚魚たちは海を漂い生き抜いていく。だがバハルはさっさと安全な場所を確保し、増殖クラゲをその中で繁殖させていた。そこに幼馴染の二匹も連れてきたのだ。おかげである程度大きくなるまで最小の危険で育つことができた。
「あのときはとっても助かったのよ。だから、私たちはバハルがいい人魚だってよく分かってるの」
「食い意地は張ってるし、ふらふらどこかへ探検に行ってしまう変わり者ということに変わりはないがな」
「一言余分だぞ、サモット。お前だって少し前までなにかにつけて勝負だなんだってうざ絡みしてきたじゃないか」
「うざっ……!?」
今ではすっかり大人しくなったというか……落ち着いたというか……。タラッタと出会ってから大きく環境が変わったせいだろう。
文句を並べたて始めたサモットとじゃれ合うように口喧嘩をしながら泳ぐ。ラメールも遊んでいると分かっているのか洞窟に到着するまで、特に止めることなくニコニコと幼馴染たちを眺めていた。
「あら、おかえりなさい」
口喧嘩もそこそこに洞窟へ顔を出した人魚たちに身支度を整えたタラッタが声をかけた。どうやら仮眠を終え、出発の準備をしていたようだ。
「網は役にたったかしら」
「ああ、おかげさまで。それで、おっさんとタラッタの方はよく眠れたか?」
「うむ。出立の準備も終えておる。最後にあの海魔たちに会えぬのはもったいないが……」
「あー、はいはい。特に変わりなかったからいいじゃないか」
しょんぼりしているローガンを雑に慰め、バハルは彼の荷物に視線を移す。積み上げられた本はすべて魔法師がここに来てから制作したものだ。なかなかの量にこれを運ぶサモットが頬を引きつらせている。
「じゃあ、サモット……。時間もかかるだろうし、さっそく頼む」
「くっ……。今までも思っていたが、自分の魔法の便利さが憎たらしくなってきた……」
「まあまあ、サモット。私も手伝うから頑張りましょう?」
「ラメール……!」
まったく単純な幼馴染である。ラメールに慰められ、すぐに元気を取り戻して荷物を運び始めた。
「ふむ、よろしく頼む。ところでバハルよ」
「なんだ、おっさん」
「精霊はどうするのだ?」
バハルにまったく相手にされず、畑の隅でいじけているミントをローガンが指差す。
「置いていくよ」
「待つのじゃ! なぜじゃ! わしも一緒にいくぞ! 船とやらなら水中移動ではないからわしも行けるじゃろ!」
会話を聞いていたらしいミントが走り寄ってきて必死の形相で抗議する。その様子を魔法師が興味深そうに観察していた。
「船でいけるけど、畑はどうするんだ。せっかく大きく育ってきてるのに……管理者がいなくなったら枯れてしまうだろ」
「むむっ」
「それだけではない。精霊は本体もともにいかねばならぬだろう。これを運ぶのは大変だし、北は寒さも厳しい。植物のダメージは計り知れないだろう」
いくら精霊が宿る植物だとしても、流氷があるような極寒の地では植物は耐えれない。ミントのことは苦手だが枯れてほしいとまでは思っていないのでここに残ってもらうことにした。
「……仕方ないのじゃ……」
「俺がいない間、畑を頼むよ。これはミントちゃんにしか頼めないことだからさ」
「わしにしか頼めない?」
「そうだ。な、頼むよ」
「……ふふん! 仕方ないのう! 留守はわしに任せい!」
どんっと力強く胸をたたいてミントが言う。どうやらうまく説得できたようだ。実際、畑が荒れてしまうのはもったいないないと思っていたので、彼女が管理を続けてくれるのは嬉しい。
「ありがとな。頼んだぞ」
「うむ! あ、そうじゃ! すこし待っておれ」
「なんだ?」
ダダダッとまた走り去ったミントが畑でなにかして戻って来る。両手で自分より大きなものを持ってきてバハルに手渡した。
「これは?」
「少し小ぶりじゃが食べられるじゃろうて。芋じゃよ」
「芋? え、もう収穫できたのか!?」
「昨晩、力を集中させて人数分のみ収穫できるようにしたのじゃ」
「わー! すごいじゃないか! ありがとう、ミントちゃん!」
芋の種類は分からないが、見た目は前世のさつまいもに似ている。素直に喜んで礼を告げるとミントは少し照れていた。
芋を五個ほど受け取り、それらもサモットに頼んで船へ運んでもらった。
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