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しおりを挟む状況をゆっくりと飲み込めてきたレオンに、ベルグが話を続ける。
「まぁ、俺達も命が惜しいんでな。協力する方を選んだ。俺達を使っていたそこのお嬢サマの父親の情報のリークと、そのお嬢サマの捕縛。それと、レオンサマへのお仕置きだよ」
「は?…お仕置き…?」
「これは後から追加された事だけどな。そのお嬢サマの捕縛ついでに、ドロシーサマを誘拐しろって命令されてな」
「わ、私をですか…?」
「そうだ。誰からの情報であれ、己で真偽を確かめなければ、いずれ足元を掬われる、ってよ。忠告にしたって新婚旅行に俺達を使って誘拐させるあたり、えげつなぇよな」
レナシリアの冷たい笑みが脳裏を過る。ベルグの言うことなどには賛同したくないのだが、ヴォルフでもちょっとえげつないとは思った。
話を聞いていたレフィーナは状況が飲み込めたらしく、ヴォルフの腕の中で疲れたようなため息を吐き出す。それから確認するかのようにアードに視線を向ける。
「では、アード様は…」
「中々の演技だったでしょ?レフィーナちゃん。俺は一応ベルグの見張り役。レフィーナちゃんが誘拐に感づいた時は焦ったなぁ…」
アードが茶目っ気たっぷりにレフィーナにウインクをすれば、レフィーナが再びため息をついた。ヴォルフはそんなレフィーナに視線を落とす。
誘拐に気がつき、アンを逃がしてみせたのは凄いとは思うが、ヴォルフとしてはそんな危ない事はして欲しくない。そんな風に考えていれば、レフィーナを抱く腕に自然と力が入った。
頭に手を当てて悩ましい表情を浮かべていたレオンが、再び口を開く。
「宿の爆発は?」
「あー、あの宿は元々俺達のアジトでな。王妃サマがそれを爆破でもして、派手に怖がらせろって言ってな。あ、安全面は考慮してあったから、怪我もなかっただろう?もちろん、客や従業員も避難済みだしな。雨も降っていたし。宿裏に残りの騎士達と俺達の仲間が待機していて、すぐに火も消されたはずだ」
「私へのお仕置きだというのなら、ドロシーを怖がらせる必要はなかっただろう?」
レオンが怒ったような声を出す。無理もないことだ。大切な人が本当に怖い思いをしたのだから。
しかも、自分にお仕置きをするた為に怖い思いをさせたなど、レオンにしたら辛いことだ。
レナシリアはそれを分かってやっているのだから、レオンではまだまだレナシリアには勝てないだろう。
「ドロシーサマはいずれ王妃になるだろう?こういう事が起こる可能性もある。だから、一回味わってみろってさ。本当怖ぇよな、嫁にそんな事体感させるって…」
いずれ王と王妃になる二人に大切な事を教えるための計画。情報の大切さや気を抜かない事、どんな時でも冷静でいる事。それらをレナシリアはお仕置きと称して、実感させる為にこの計画を考えた。
まぁ、本当にお仕置きも兼ねているのだろうが。
レオンは話を聞いてこうなるに至ったのが、情報の確認を怠った自分の過失だと分かって、眉尻を下げた。
「…今回の事は私の失態だね…。ごめんね、ドロシー…怖い思いをさせてしまったね…」
「レオン殿下…」
「さて、こっちの説明は終わりだな。あとは…」
ベルグはそう言いながら、寄り添うレオンとドロシーをに憎らしげな表情で見ているミリーに視線を移した。
この後はベルグとアード、そして今もどこかに潜んでいるであろう諜報員で、ミリーをレナシリアに指示された場所まで連れて行く事になっている。
「俺はこいつらを王妃サマに言われた所へ連れて行くぜ」
「…ど、どこに連れていくつもりなの!?私は無実よ!」
ここまできてもまだ無実だと言うミリーにヴォルフは眉を寄せる。そして、そんなミリーに現実を教えるために口を開く。
「ミリー嬢。今頃、ベルグの情報からトランザッシュ公爵も王妃殿下によって投獄されているはずです」
「そんな!貴方達が私に罪を擦り付けているのですわ!」
ヴォルフの言葉にミリーはまだ騒ぎ立てる。ヴォルフとレフィーナが自分を陥れたのだと喚き散らしているが、その場にいる者達がそんな事を信じるはずもなく、呆れたような視線をミリーへと向けていた。
「あのなぁ…もうどうしようもないんだよ。あんたには王妃サマから社交界追放の命令が出てるんだよ。つまり、あんたはもう貴族でも何でもねぇって事だ」
「なっ、何ですって…?」
「それで、あんたの行き先はもう決まっているぜ」
「ま、まさか…私にも城で侍女をしろって言うつもりかしら…!?」
「はっ。そんな好待遇なわけねぇだろ。あんたみたいな使えなさそうなやつ、王妃サマもいらねえだろうよ」
ベルグの馬鹿にしたような物言いに、ミリーの顔が屈辱で赤くなる。
レフィーナのように演技だったのならばともかく、ミリーは本気だった。本気でドロシーを殺そうとした者など、城で働かせる訳がない。
ミリーも少し冷静になったのか、少し不安げな表情を浮かべた。
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