悪役令嬢の役割は終えました(別視点)

月椿

文字の大きさ
56 / 97

56

しおりを挟む

 状況をゆっくりと飲み込めてきたレオンに、ベルグが話を続ける。


「まぁ、俺達も命が惜しいんでな。協力する方を選んだ。俺達を使っていたそこのお嬢サマの父親の情報のリークと、そのお嬢サマの捕縛。それと、レオンサマへのお仕置きだよ」

「は?…お仕置き…?」

「これは後から追加された事だけどな。そのお嬢サマの捕縛ついでに、ドロシーサマを誘拐しろって命令されてな」

「わ、私をですか…?」

「そうだ。誰からの情報であれ、己で真偽を確かめなければ、いずれ足元を掬われる、ってよ。忠告にしたって新婚旅行に俺達を使って誘拐させるあたり、えげつなぇよな」


 レナシリアの冷たい笑みが脳裏を過る。ベルグの言うことなどには賛同したくないのだが、ヴォルフでもちょっとえげつないとは思った。
 
 話を聞いていたレフィーナは状況が飲み込めたらしく、ヴォルフの腕の中で疲れたようなため息を吐き出す。それから確認するかのようにアードに視線を向ける。


「では、アード様は…」

「中々の演技だったでしょ?レフィーナちゃん。俺は一応ベルグの見張り役。レフィーナちゃんが誘拐に感づいた時は焦ったなぁ…」


 アードが茶目っ気たっぷりにレフィーナにウインクをすれば、レフィーナが再びため息をついた。ヴォルフはそんなレフィーナに視線を落とす。
 誘拐に気がつき、アンを逃がしてみせたのは凄いとは思うが、ヴォルフとしてはそんな危ない事はして欲しくない。そんな風に考えていれば、レフィーナを抱く腕に自然と力が入った。

 頭に手を当てて悩ましい表情を浮かべていたレオンが、再び口を開く。


「宿の爆発は?」

「あー、あの宿は元々俺達のアジトでな。王妃サマがそれを爆破でもして、派手に怖がらせろって言ってな。あ、安全面は考慮してあったから、怪我もなかっただろう?もちろん、客や従業員も避難済みだしな。雨も降っていたし。宿裏に残りの騎士達と俺達の仲間が待機していて、すぐに火も消されたはずだ」

「私へのお仕置きだというのなら、ドロシーを怖がらせる必要はなかっただろう?」


 レオンが怒ったような声を出す。無理もないことだ。大切な人が本当に怖い思いをしたのだから。
 しかも、自分にお仕置きをするた為に怖い思いをさせたなど、レオンにしたら辛いことだ。

 レナシリアはそれを分かってやっているのだから、レオンではまだまだレナシリアには勝てないだろう。


「ドロシーサマはいずれ王妃になるだろう?こういう事が起こる可能性もある。だから、一回味わってみろってさ。本当怖ぇよな、嫁にそんな事体感させるって…」


 いずれ王と王妃になる二人に大切な事を教えるための計画。情報の大切さや気を抜かない事、どんな時でも冷静でいる事。それらをレナシリアはお仕置きと称して、実感させる為にこの計画を考えた。
 まぁ、本当にお仕置きも兼ねているのだろうが。

 レオンは話を聞いてこうなるに至ったのが、情報の確認を怠った自分の過失だと分かって、眉尻を下げた。


「…今回の事は私の失態だね…。ごめんね、ドロシー…怖い思いをさせてしまったね…」

「レオン殿下…」

「さて、こっちの説明は終わりだな。あとは…」


 ベルグはそう言いながら、寄り添うレオンとドロシーをに憎らしげな表情で見ているミリーに視線を移した。

 この後はベルグとアード、そして今もどこかに潜んでいるであろう諜報員ちょうほういんで、ミリーをレナシリアに指示された場所まで連れて行く事になっている。


「俺はこいつらを王妃サマに言われた所へ連れて行くぜ」

「…ど、どこに連れていくつもりなの!?私は無実よ!」


 ここまできてもまだ無実だと言うミリーにヴォルフは眉を寄せる。そして、そんなミリーに現実を教えるために口を開く。


「ミリー嬢。今頃、ベルグの情報からトランザッシュ公爵も王妃殿下によって投獄されているはずです」

「そんな!貴方達が私に罪をなすり付けているのですわ!」


 ヴォルフの言葉にミリーはまだ騒ぎ立てる。ヴォルフとレフィーナが自分を陥れたのだと喚き散らしているが、その場にいる者達がそんな事を信じるはずもなく、呆れたような視線をミリーへと向けていた。


「あのなぁ…もうどうしようもないんだよ。あんたには王妃サマから社交界追放の命令が出てるんだよ。つまり、あんたはもう貴族でも何でもねぇって事だ」

「なっ、何ですって…?」

「それで、あんたの行き先はもう決まっているぜ」

「ま、まさか…私にも城で侍女をしろって言うつもりかしら…!?」

「はっ。そんな好待遇なわけねぇだろ。あんたみたいな使えなさそうなやつ、王妃サマもいらねえだろうよ」


 ベルグの馬鹿にしたような物言いに、ミリーの顔が屈辱で赤くなる。
 レフィーナのように演技だったのならばともかく、ミリーは本気だった。本気でドロシーを殺そうとした者など、城で働かせる訳がない。
 ミリーも少し冷静になったのか、少し不安げな表情を浮かべた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします

恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。 王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい? つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!? そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。 報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。 王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。 2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……) ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。

パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。

はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」 「……あぁ、君がアグリア、か」 「それで……、離縁はいつになさいます?」  領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。  両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。  帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。  形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。 ★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます! ※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

婚約破棄で、おひとり様になれるはずだったのに!?

パリパリかぷちーの
恋愛
主人公ルシアン・ヴァイオレットは、「悪役令嬢」として振る舞う孤独愛好家の公爵令嬢。念願だった第一王子アランとの婚約破棄を言い渡されると、内心では歓喜し、大都会の喧騒から逃れて森の奥の廃墟同然の別荘へと引きこもる。ルシアンの目的は、誰にも邪魔されない至高の静寂ライフを満喫することだった。 しかし、彼女の理想郷にはすでに先客がいた。それは、無口で無愛想だがハイスペックな謎の男、キース。実は彼は、王国の裏社会を統べる『影の英雄』と呼ばれる辺境伯であり、ルシアンの孤高の姿に心奪われた重度の隠れファンだった。

処理中です...