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片想い
しおりを挟むお互い、就職なども決まったが、むしろ、卒業までの猶予となった。学部も同じなんで、顔も合わすのだ。
なのに安心でもしたのか、入学当時の関係性を維持するだけ、友達として、仲もよかった。
綾と涼。その本心までは、どうであったか。
一応、東京都内。それが、勤務地であった。かと言って、都心部と多摩地域だ。そんなのが決まって、やっと気がついた。
卒業をすると別々での生活なんだろうが、その時が近くなると、どっちも、そこと向きあった。
でも現状、動きだすとか、うん、どうだろう?ま、そんな段階なのだ。
この年齢だと、時間の早さなんて、気づきもしない。だが、卒業は、来るのだ。
綾は、定期券内でのバイトをなんとか見つけた。案外、慣れもあった。たぶん、シフトのペースの為か。文句も付けず、シフト表に従うと。なぜか、こんな状態だった。生涯の生業など、する気もなかったが、技術も上がった。
ま、セルフレジの監視だが。
バイト出勤途中も、電車に乗ってると、あいつ、馬鹿だな。なんて思ってしまう。
大概、涼とのエピソードになるとそんな面白系になってた。
まあ、綾のチョイスが原因なんで、おそらく、好意的なのだ。
綾は無意識らしいが。
もう直、降りる駅なのかな。ん、なんか景色とか違ってないか。
やば、もう次の駅よね。あ、戻んないとじゃん。
反対のホームに上がると、電車はちょうど発車直後でもあった。
最悪だわ。
仕方もないので、やっぱ、スマホを開くのだ。
大学ではレポート提出もあった。メモアプリのなか、候補でもある幾つかのテーマなどが、書き込んではあった。ノートの一部とかも、写真で載せといた。こんなのを作ると数時間もかけた。
あとは、ゲームで遊んでた。
他のノート写真とかも気になったので、写真アプリも開くが、つい、友達との写真なんか眺めてしまった。
丁度か、電車も来るのだ。
ドアの横、揺られては、そんな写真に笑う。
ひと駅なので、すぐであった。
涼も写ってる。まったく、アホな奴だわ。
同時かな。電車が止まった。
また、やるとこ、だったわ。綾は、なんだか急いだ。
スマホを消そうとするも、画面上は、涼の写真なのだ。しっかり、そんな場面である。
綾は、なんか気づくが。嘘よ、いや、まさか。わざと、狼狽だ。
どうも、分かってるんじゃないか、そんな説があった。
まいったな。こんなにも出来ないものとは、告白がだ。涼は、会話だけも、ずっとしてた。
完全な、世間話であった。
机の下。紙袋などがある。たしか、友達に貸してもいた、授業ノートらしくて、なんと卒業の日に戻ったとか。お詫びのチョコもあった。
涼は、なんとか、綾を探すのだが、意外と、隣の教室であった。
綾は、別の友達なんかと話し込んでもいたが、すぐに気づく。
「ありがと、がんばってね」
「おう、そっちも、がんばれ」
涼は、なんだか満足だ。
じゃあ、ねえわ。
こうして、僕らの卒業は、次のステップへと、自動的なスタートを切るしか、今思えば、なかったのだ。
じゃあ、ねえわ。
あ、終わった。
卒業式のすぐ後、意外なんだが連絡などもあって、また集まろうか。まあ、飲み会のお誘いであった。正直、このぐらいだとバイトもあって、どうせ、辞める気なんだし、暇があるのなら稼いでおくか。
一応、慣れた業務でもあった。
綾はそれもあって遅刻参加なのだ。もう、なんだか始まってた。綾もドリンク追加とかすると、勝手になのだが、唐揚げとかをつまんだ。
こんな雰囲気なのも、ある意味、酒の肴でもあったか。
まだテンション低め、だから、多少は、合わせる面倒もあった。
なんか、やっと、気づくのだ。
あ、涼だわ。
位置関係とか、距離もあった。
あっちは、もう酔ってもいたか。目も合うが、つい笑ってしまう。
それでも、誰だか、お開きの合図を挙げてた。あれ程、騒いでも、わりと無難であった。
まあ、不思議なものだ。
ひとり、酔いつぶれてしまい、同じ方向なので、同行は涼であった。
だけど問題なのが。
あれ、鞄もってないぞ。どうにか気づいて。
綾は、あの居酒屋に戻った。店員さんが、分かってたのか、すぐに渡してくれる。よくあるのか、呆れて笑ってた。
合流もするが、みんなで料金を出し合うと、涼達をタクシーに押し込んでる。
すぐ近く、自販機があった。
「涼、気をつけてね」
綾は笑うと、鞄と天然水。
そんなのを渡すが、ドアが閉まった。
結局かな、ろくに話もなかったわ。
涼は、日曜も昼過ぎ。なんとか、起きた。
あまり、飲むとかそんな機会もないが、毎回、翌朝は体調も悪かった。
それでも、覚えてるのは、綾と話す機会もなかった。そんなこと。
もう、こんな風に集まるとか、ないのかも知れない。
テーブルに、天然水のペットボトル。
綾が、渡してくれた。
「涼、気をつけてね」
あれで、もう、最後だったか。
綾は、大学時代の荷物とか、未整理も完全版なのだ。
大学の思い出なんか、山ほどあった。とは言え、人生、初就職であった。すでに思い出など、素敵な、セピア色だわ。
そんな状態であった。
若干、心残りもあるが、とある記憶だけ、愛着もあったのか転がってるのが、入り口付近となった。
こんな時でも、くだらん、レベルでの連絡だとか、アホの娘になって、もっとしておくと、たぶん、違ったのかな。
マジ、昨日、死んでなくね、なんて。
入社式も間近なんで。そんなに、落ち込む余裕とか、なかった気もした。
考えず、進んでしまった。
もしかして、気にしてんのか?まさか、ないって。
綾は転職をすると、別の会社なのだが、同じ業界なのもあって、知り合ったわけだ。
それが耕作であった。
あれから、何年経つのか。もう、いい加減、進まなくちゃ。
そんなのを、思ったりもしてたが。
まあ、とは言えだ。
耕作とは、仕事が終わると、一杯ひっかけたり?なんて会ったりもした。あっちの確認などを取ってもないが。一番、気も合った、奴であった。
まだ、付き合いだしても、三日ぐらいか。
街なか、涼を見かける。
涼が、あっちで振り返ったりとか、そんな素振りをするのだ。
綾は、たぶん死角かな、を見つけるが、なぜか隠れてしまった。
思ったよりも、動揺なのだ。
やば、まさか、気にしてんのか。
公園とも違うのかな。
植樹とベンチだけの場所があった。
突然、出現をする。お洒落な空間は、新米の広場らしく、なにか、整備をしてたのだが、やっと出来ると案外利用者もあった。
綾は、会社のあと、通るだけのパン屋があって、試しで寄ったが、そこのハンバーガーの虜となった。
このサイズなのに、値段がお得だった。
晴れの日など、この場所は、ハンバーガー専用となった。
そっか、なんか飲み物だ。
午前中、飲みきってしまい、買うのを忘れた。構わず、かぶり付くのだが、若干、詰まりかけた。
まって、お茶とかないわ。
「まだ、これ、未開封だ。なんか、飲めって」
ハンバーガーに夢中なもんで、案外、気づかなかった。
顔を上げると、涼だった。
「俺ね、今、こっちなんだよ。一回、転職なんで。やっぱな、何度か、見かけたんだわ。わるい、もう、行かないと。明日も、このベンチな」
涼は、急用でもあったか、慌てながらも、その場を去った。
「やっと、再会な」
涼は、なんか振り返ると、そんな言葉を残すのだ。
まいった、助かるわ。
綾は、天然水を一気飲みすると、ラベルなどを見た。
そっか、思い出すのだ。
デザインは新しくなってるが、これ、最後の飲み会で、もう、話すタイミングもないかな。そんな気もして、タクシーに突っ込んだ。あの天然水だ。
自販機だったので、うわ、高いな。それも、まだ、覚えてる。
なんだか、懐かしいな。
え、また、会う?
ネットの記事にあった。その娘は、バレてしまった。二股がである。
私は、べつに、お昼を食べるだけで、まあ、あっちの問題なのだ。
ん、だよね?
お天気もよかった。
なにも同じベンチが、空いてなくてもよかった。
すでに待ってるが、涼も昔と変わらずだ。
とにかく、よかったな。
「彼氏、いんのか?」
涼は、そんな問だった。
綾は、一瞬かな、黙ってしまう。
まあ、動揺してるわ。
「一回、なんか、歩いてんのを、見てるしよ。まあ、そだな」
涼は、なんか、伸びなどをすると言うのだ。
「そっか、フラれたわ」
涼は、笑ってもなかった。
綾は、気づくのだ。私、フラれたわ。
涼は、脇にあったポテトを取るが、ひとつ落としてしまった。
「お、動揺してんの」
涼は、なんだか笑った。
綾は、それが、辛かった。
涼は、スマホの画面とかを見るのだ。
「もう、時間だな」
涼は、偶然だが、耕作と出会った。電車が止まったので、バス停が混んでるのだ。
タクシーの方が、若干、マシなのか。
「タクシーは、道混んでんな」
耕作は、なんて独り言。
耕作が、ひとつ前に並んでた。
涼は、綾と一緒であった、あの彼だと気づく。
つい、目も合った。
「あっちは、もっとひどい」
耕作は、ものすごい列、そんなバス停を指すと、愛想笑いなのだ。
すぐあと、耕作のポケットだ。スマホが鳴った。
「あ、分かった、予定変更な。今、どこなの?たぶん、すげぇ近いわ」
耕作は、列から、外れてしまう。
綾の声だったか。
涼は、なんとなく笑ってた。
タクシーを待つが、耕作の方を見てしまった。すごい列だが、バス停の近くだ。電話の相手か、どうにか合流してた。綾だった。
そんなのを見てるが、間もあった。
なぜか苦笑い。
「どこも、混んでのよ。タクシーかな、とか思ったわ」
耕作は、身振り、手振りなのだ。
綾は、つられると、そっちを見てしまった。
タクシー乗り場。向こうでも、ちょうど、こっちに視線を向けるので、なんだかタイミングもあった。
だから、目が合う。
なので、涼は、苦笑いなのだ。
綾は、涼が視線を反らすまでを、なぜか見てしまった。
どうにか、タクシーは来て。
ふたりも角を曲がった。
まあ、いつかわ。そんな話でもあった。
「もっと、きちんとするんだよ。この話って、なんか、ごめん」
耕作は、そんな風、謝ってたな。
結婚であった。
綾は、正直、考えてもなくて、意外となのだが、予想外。
普通だと、こんな感じなのか。
進み方なんてものは。みんな、どうなのかな。なにか決断?それとも流されるか。なんて、気もするのだ。
綾は、最近、コンビニ弁当での、オフィス食なんかも多くなって。
まあ、あの公園でランチとか、この先ないんだと思う。
だから、それは、また再会なんてしない為だった。
可能性など、あの公園ぐらい。なんてのもあるが。
あいつを避けて、まあ、仮対応かな。
涼は、たしか、駅の近くにあった。お洒落なカフェとかで、軽く済ませるとか言ってた。ひとつ奥の通りだと、定食屋とかも並んでる。
あえて、逆をつくか。
意外と、出くわさないのだ。
一度、食べもした、町中華があったな。あの店、決定だわ。
賑わってた。
奥のカウンター席があるな。
ちょうど、厨房の前となった。
あら、涼がいた。
綾は、値段で選んでしまった、そんなソファに身体を預けながら、大学時代の由香と長電話となった。
時計を見ると、ずいぶん経つわ。
一応、明日の仕事もあった。
正直、準備をしたかったのだ。どうにか思い出す。
「私、明日もあるのよ、もう、切り上げないと」
綾は、やっと音も上げて、由香の同意を求めるが。
「あ、そうだわ。忘れてた。今度の連休、どう、大学のみんなで集まんないかな。それの電話なのよ、これって」
「だって、一時間も話し込んでたわよ」
「本題。ちょっと、聞いてよ。あのさ、知ってる。仕事なんだけど、涼君、都内なんだって。あいつ、転職してんの。だからね、お店とか、お願い。上手く、二人で探しといてよ。じつは、あっちに、もう言ってあるんだわ。お店、じゃ、よろしくね。あ、ごめん、こんな時間だわ」
あっちから、電話が切れた。
まったく、勝手だわ。
居酒屋なんかで会うと、お店の相談なのだ。それも涼と。どこにしよっか?なんて。
若干、会いたくなもかった。
上手く、バレずに、やっとくか。
なんか、面倒だわ。
一応、日帰りとはなった。宿泊費などを出す気もなく。その為、とある要望なのが、昼間でもお酒の提供があって、移動も短めを希望なんだとか。
今日だって、もう同窓会であった。涼と二人なんだが。
綾は、つい思ってしまう。
こんな風に会うの、もうやめたい。
なんか変かも知れない。そんなの、わざと、言いたいのか?
言えば、このラインは、たぶん、消えるのかな。
しかも、なんだか、会わないようになんて、言う必要性もなく。
いつもの生活とかをするだけで。
連休の後になったら、もう、それで消えるか。
スマホなどで調べながらも、あの人数だと、以前もあったが、テーブルを分けたりとか、その場でなら、みんなで適当に判断もするが、写真も店舗外観だけだと、あっちで違うかも、なんてクレームを受けたくもなかった。
幾つかは、ピックアップもしたが、もう実際、行ってみるか。なんて話にもなった。
結局、候補は絞るが、あとは後日かな。なんて具合だ。
「どうする?今日、これ、割り勘だよね」
綾は、そんな話をするが、追加メニューを吟味であった。
綾のスマホが鳴った。会社の同僚からで、なんか相談とかあって。
今から、家とか大丈夫かな。もう、向かってんの。相談?愚痴かな。なんてメールなのだ。
「なんか、ごめん、もう帰んないと」
綾は、時間を確認をしながらも、涼に謝罪であった。
バタつくも、居酒屋を出た。
だけど、思うところが、あった。
戻ると、ちょっと顔を出すのだ。
「ね、じゃあね」
だけなのだ。
「え、ああ」
涼は、なんでかな?不思議にも思った。
あ、割り勘。まあ、いっか。
追いかけるのか、それもどうか。
涼は、ビールを飲んでしまうと、ま、こっちも帰るかな。荷物などを抱えた。
綾は、店を出たとこ、壁にもたれて座り込んでた。
こんなのも、あと少しだわ。
顔の辺りか、片手で押さえると、下を向くのだ。
あ、泣きは、しないのか。
涼は、やっと、お支払い。
どうにか店を出ると、もう、いなかった。
耕作は、スマホで話しながらも、夕飯のコンビニ弁当の残骸を片付けた。
「うん、ありがと」
綾との電話を切るのだが、すぐにスマホが鳴った。
会社の先輩であった。
よく仕事もするのは、同じ部署なのもあるが、なぜか、変に気もあった。
以前、大規模なコンペがあって、それに呼んでくれたのが、この先輩だった。
綾と出会ったのは、その時なのだ。資料などを配布したりと、チームのサポート的な役回りらしかった。
別の件でも、ライバルとなった。
好みでもあった。そんなのもあるが、チームのなかで女性なのは、綾だけであった。
その意味で、近づいた。
先輩の松原は、明日の会議のことで、話もあったらしく、いつも悪いな、とか言った。
松原は、しばらく業務説明だ。
「まあ、そんな話だわ。一応、お前だけも、言わないとよ。で、どうなんだよ。上手く、情報、引き出せそうなのか。なんて名前だっけ?」
「だから、じっくりと、やってますよ。まあ、順調なんで」
耕作は、わりと適当な返事だ。
松原はどうも面倒。この話をするんじゃなかった。
なんか、色々と言ってくる。
「いや、なんすか。もう昭和初期ですよ。あとで、検索しとくんで、婚前旅行」
珍しく、綾が到着などすると、もう耕作がいた。
いつもとは待ち合わせの場所も違ってた。理由も言わないので文句を言うが、結局、ついて行った。
なんか、わりと高級店だ。
綾は、やはり躊躇となった。
普段の行動範囲からも、だいぶ離れもするが、なんてお洒落な。
お金を使わせるのは、若干、避けたかった気がした。
なんだか展開も早いか。
つい、考えてしまう。
だけど、どうも予約してあった。
並んだお皿など、すでに何料理かも分かんない。なんか美味しそう。よりも、うわ、お洒落。
と形状を褒めたかった。
「なんだよ、それ」
耕作は、なぜか不満顔であった。
「だって、大丈夫なの?なんか高いよね。え、割り勘なの?」
綾は驚愕なのだ。
「そんなわけ、あるか?俺がもつだろ、普通わよ」
耕作の抗議である。
これって、どこ料理なのよ。そんな綾の疑問には、いや、どこなんだろ。なんて疑問で戻ってた。
「なあ、いつか、海外とか無理でもよ。こんな料理は出なくても、国内なら、どっか、行かないか」
耕作は、なども提案。
綾は、この食事もあるし、まあ、了解なのだ。
なんだけど、次の連休だと、あの同窓会もあったので、そのうち、ゆっくり、計画を立てるかな、そんな感じだ。
耕作は、靴ひもが緩んでしまって、いけるかとも思ったが、完全にほどけてるのを途中で気づくと、さすがに断念した。
「一瞬、これ、持ってくんない?」
書類サイズの封筒がどうも邪魔なので、耕作が助けを求めた。
レストランの時には、すでに、どこに置くのか謎でもあった。なんと預かってくれたので、二人とも驚いてしまった。
あれがクロークなのか、あとで知ったが。
「それ、例の奴だわ。うちの方のなんだけど、コンペ資料。チラッとなら、構わないぜ」
耕作は、なんて笑った。
だけど綾は呆れてた。
「まったく、馬鹿じゃないの」
綾は、タクシーをスマホで呼ぶのだが、耕作の方で、なにか着信があった。
先輩の松原だった。
「悪い、なんか、仕事のだわ」
耕作は、困った顔とか見せた。
一応、離れる。
綾もだが、同業他社もあるので、あんまり聞いてしまうのも。なんて思いもあった。
耕作としては、あの松原だから、どこか不安があった。また、なにを言うかも分かんない。
近くにコンビニがあった。
そっちで、スマホに出る。
ただ、着信が切れてもいた。
「あ、なんか、連絡あったんで。なんすか」
耕作は、仕事感とか出すと、らしく電話もする。
「悪いな。今、平気か。あの件、クリアになったよ。先方さん、あの額なら、頼むってよ。で、どうよ。あの娘、バレてないだろな」
松原は、いつもの感じだ。
綾は、すぐにもタクシーが来るかも、そんな心配もあって、耕作を探すのだが、案外、話し込んでるし。
コンビニがあって、なんか横の壁とかに、寄りかかってんの。
もう、どうするのよ。
たぶん、あれか。
タクシーは近くで止まる、かと言って、電話中の耕作だから。
綾は、開くドアから首を突っ込むと、運転手に話かけた。
「あの、もう一人いるんですけど、あっちで、電話しちゃって、すぐ戻るんで」
綾は、説明だけもすると、近くだし、面倒なので走らない。
耕作は、そんなこと、気づきもしなかった。鞄が邪魔なのか直しながらも、横の壁にもたれながら松原の相手をしてるだけ。
「えっとなんて娘だっけか、コンペの情報、なんか持ってんのか?」
「だから、綾ですって。今、一緒なんすよ。マジ、邪魔なんで。まあ、上手くやってるかな。何か、分かったら、後で。え、ないですよ。そんな話とか、形だけ、そんな話だってすんでしょ。だって、結婚ですよ。まさか、ないって。まあ、大丈夫。まったく、気づいては、ないんだから」
この時間なのに、自転車とかも数台止まってた。その手前かな、綾が呆然としてるのを気づけてなかった。
なぜか、スピーカーだった。
そんなのも嫌で。
タクシーのドアが閉まる。
綾は、一人で乗り込んでしまった。
「すいません、大丈夫なんで、出して下さい」
一応なのだが、綾は愛想もよかった。
しばらく、外の景色も流れるが、街並みなんて、覚えてなかった。
やっと、スマホをいじる。
なんか面倒。
ごめん、急用なの。帰るわ。
雑な文章しか、打てなかった。
耕作は、いつもの調子で連絡もしてくる。まったく、気づいてないらしい。
出る気などなかった。
フェードアウトか、こうやって連絡もあるのに、どう対応していくの。
日曜の朝だ。綾は、冷凍食品のグラタンをチンすると、バゲットの上に乗せたかった。
エビグラタンが出来たらしく、バゲットをトースターから出すのだが、まったく焼けてない。
途中、スマホが鳴ったので、中断するも耕作だった。
テンションも下がるわ、トースターのスイッチを忘れるわ。
なんか、腹立つな。
バゲットは、ほんのりと焼けるが、エビグラタンは、その分だけ冷めた。
また、エビグラタンを温めると、その分、バゲットはどうなるか?
トーストすると、もう焦げる。
いや、エビグラタンは、熱々がよかった。
結局、もう一度、エビグラタンを温めると、冷めたバゲットに乗せてた。
ま、戻ったわ。
せっかく食べようかと思ったのに、またスマホが鳴るのだ。若干、不機嫌にもなるが涼であった。
ひと口食べるもメールを開く。
とくに緊急の内容でもないが、まあ、返してもおくか。
連休の件だけど、店はどうすんの。そんなことだった。
いや、食べてからでも、大丈夫かな。
綾は、最近スーパーで買った、ティーバッグの紅茶などを入れだすのだ。
一時間もたって、やっと返信であった。
仕事終わりでも、空いてる日があったら、こっちで合わせるし。
なんて打ち合わせの連絡だ。
涼は、こっちに予定があるとか、なんか思ってるらしい。
結構、そうでもないんだよ。
なんで、付き合ってたのかな。
私、何をしてたんだ?
こんな私だ。なんか会いづらいわ。
涼に返信するんで、綾はスマホを操作してると、また着信である。
なんか、大丈夫かな。よかったら、飲みでも行こうぜ。
なんだ、耕作であった。
綾は、一応は、読むのだが。
仕事終わりなら、いつでも可なんで。
もう、涼に返信だった。
なぜなのか、あの町中華で、夕飯でも食べながらの検討、そんな話となった。
現地集合なのだが、綾の会社の近くのとこ、待ち伏せ状態なのは、涼であった。
「あのさ、なんだろうな。ちょっと、話なのかな」
なんだか、涼は、キレも悪いのだ。
どう言う、意味なのよ。
「だから、サクッと言っちゃえよ」
綾は、若干、面倒でもあった。
「サクッとわ、違うかな。だろ?」
「いや、分かんないっての」
「だからさ、あのさ。好きなんだよ。なにも今、言うことでも、ないんだけどよ」
綾でも、さすがに、なんとなく分かる。
「天津飯とか?」
「だから、お前だよ」
涼は、わりと間もあった。
「ずっと、あの頃からなんだよ」
綾は、嬉しかった。
なんだ、同じだったか。
もう、十分だわ。
さてと、この辺か、もう止めないと。
だって。
最近、なんだか、あの頃が懐かしいので、意外とキツかった。
「なんか、やっぱりね。今日、帰るかな、ごめん」
綾は、納得でもしたか、案外、静かな笑顔であった。
「いや、ごめん。変なこと、言ったわ。俺だわ」
涼は、かなり慌てるが。
綾は、背を向けてしまった。
だから、違うの。
理由もあった。
どう返すと、いいのかな。
返事とか、どっちで返すのか、もし迷えば。なんか快諾しそうで。
「あのね、こっちの問題なの。本当、嬉しかったな」
こんなの、上手く説明なんか出来ないかもな。
まあ、したくもないが。
いっそ、振り返ってしまう。
よし、こんな時は、笑って胡麻化すか。
「びっくりよ。本当、ありがと」
望んだのと違ってた。
そんな着地点なのだが。
ま、いっか。
涼は、仕事が終わると、あとは予定もなかったので、あのプチ同窓会と言うのか、その会場候補にでも行くかと思った。
元カフェらしくて、その居抜きなんだとか。
この視察は、どうも、お洒落な居酒屋らしい。
綾は、まだ業務途中である、受付の香と話し込んでる。
「今日、なんか、これから取引とか、あるんでしょ?」
香は、綾の先輩なのだが、転職の都合で、同い年ではあった。
「そうなの。先方が来るまで、いて欲しいとか。急なんだもん。揉めてんだってよ」
香は、小声をつかう。
「ねえ、この間のなんだけど、あのお店、渋谷のとこ。大学の友達と、どうかなって。あそこ、料金とか、他も高くなかったよね。なんか、酔ってたんで、曖昧なのよ。こんど集まるの、でも不安要素なの」
「どうだっけ?こっちも、酔ってたわ」
香は、そんな返答だ。
「今から、偵察なの。まあ、飲みながらよ」
「また、酔ってんの」
香は、わざと呆れた。
耕作は、仕事のあとで、綾の会社とかに顔を出す。
入り口近くで、連絡の為かスマホを開くが、そこに、受付の花瓶なんか持って、香が通るのだ。
「あら?」
「ども」
「え、綾?さっきかな、帰ったよ」
「あ、どうも」
「なんで、連絡してないの?」
「なんか、出ないんだよ」
「ああ、なんか、したのか」
香は、納得もしたのか、笑顔で返すのだ。
若干、考え込んだが、何かを伝えて。
「あ、どうも」
あ、まずかったかな。
なんて、香は思ってた。
店舗の前。三人とも、やっぱり出くわしてた。
綾の彼は、綾の同僚と会ったとかで偶然なんだが、居場所も聞けたらしくて。案外、集まってる。
涼だって、耕作とは、一応の面識もあったが。
偶然、タクシー乗り場。混んでますね、とか挨拶程度なのだ。
そんなレベルでは、顔なんて、覚えてもないか。涼だって、綾の彼氏でもないと、こんな相手、覚える気もない。
だから、逆だって不思議でもなかった。
あの時など、二人の印象もあった。そこらのカップルでもあったが、自然なものだった。
だけども。綾の態度は、軽めの壁があった。
どうも、そんな空気を感じたのが、一番、耕作なのだった。
涼の方は、耕作の様子もあって、やっと、気づいた程度だから。
涼がいても、綾の態度が変更されるとか、そんな兆候もなかった。
「俺、夕飯がてら、飲んでよ。後で、連絡しとくわ」
涼は、二人に気を使って、と言うのか、どこか、綾に遠慮もあったか。
さすがに、邪魔かもな。
そう思ってしまう、綾の雰囲気もあった。
綾にすれば、そんな気の使われ方なんか、望ましくはない。
ま、そうなるわな。
とか思った。
「なあ、どうする?なんだか悪いね」
耕作は、涼に気を使いもするが。
「今から、俺ん家なんか、どう?いつもの店とか、寄った後でもよ」
なんて、ごく自然であった。
あんな電話の内容でか。綾は、思ってた。
諦めなのか、なんだか笑ってた。涼は、なんとも言えない表情なのだ。
綾は、それを見れなかった。
決着も、つけるかな。
まあ、せめて、両方。
耕作は、とりあえずか、時計なんて見たのだ。
「まあ、行こうか?」
綾は、泣きもしないが、どこか抑えてた。それでも、しっかりと睨むのだ。
「耕作、別れよう。私ね、たぶん好きな奴とか、いたのかな。なのにコンペ?こんなのに、ひっかかったのよ。もう、いいか。なんと自業自得なの」
綾は、涼がどんな表情かも、見れなかった。
その横を通りぬけた。
もう。
なんて綾は思った。
あの後、追っかけてくる。
どうすんの、あれ。
なんでよ、涼である。
なぜか、付いてくるのだ。挙げ句、追いつく。
綾はもう無視してた。
涼は、一応、動揺してます。なのか、愛想笑い。
そんなのが、綾は面倒くさい。
だから、睨んでた。
「なあ?俺か」
「もう、なんか、ムカつくわ」
やっと、素直にか。
二人とも、笑ってた。
それも、とくに綾の方かな。
まってよ、渾身の笑顔なの?
あ、十分いけるわ。
0
この作品は感想を受け付けておりません。
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