28 / 45
身の振り方
しおりを挟む
キョウスケとの二度目のセックスから一ヶ月がたった。季節はほんの少し先に進み、今では随分と肌寒い。人肌の恋しくなる季節だな、と叶真は思う。
あれから叶真の勃起障害は、治るどころか悪化していくばかりだった。
男も女もいけるバイだったのが、今では女の裸を見てもまったく興奮することがない。アダルトビデオを見ながら自慰しようとしても、気持ちは萎えていくばかりだ。自分好みの可愛い男がネコのビデオを見たときは興奮したものの、以前とビデオの見かたが変わったことに気が付き、愕然とする。可愛い男を抱く想像をして興奮したのではなく、逞しい男に揺さぶられるネコに同調して興奮してしまったのだ。
あれほどバリタチだと言い張っていたのに、身体はすっかりとネコに開発されてしまったのである。
それに気が付いてから叶真はしばらくの間自慰すら止めていた。なんとか男として復帰しようと努力もしてみた。だが結果はなにも変わらず、叶真の秘所は本人に逆らうように熱を待ち焦がれている。
「もう、マジでどうしよっかなぁ……」
あれからキョウスケから連絡はない。二度と会いたくないと思い、電話番号も消そうと思ったのだが、その度に別れ際の悲しい顔をしたキョウスケを思い出し、消せないでいる。そのことは自分でもわけが分からなかったが、あまり深く考えないことにしていた。連絡を取らなければいいことであったし、仮にあったとしても会う気は毛頭ない。キョウスケの顔を忘れたときに消せば問題ないだろう。
だがそうなると困ったことがセックスの相手だった。キョウスケとはセフレとしてとてもやっていけず、それはすなわち他の男に抱かれるということだ。
「ありえない……けど一生セックスなしもありえない」
若干ハタチ。大学生の叶真にとって性生活はこれからなのである。
今もタチに返り咲きたいという気持ちはあった。やはり一方的に嬲られるのは性に合わない。ネコではあったがキョウスケを攻めたとき、確かに満足感があった。
「攻めるネコ……ね」
本当はタチとして攻めたい。だがそれが叶わない今、攻めるネコとして性欲を満たすしか方法はなかった。それにそうして征服欲を満たしていけば男のプライドも復活し、タチとしての機能も取り戻せそうな気もする。
「しばらくそうするしかないか……」
そうと決まれば男を探さなくてはいけない。タチの男……といってもキョウスケや自分のような自己主張の激しい男は駄目だ。気の弱い、ネコのような男。
「そんなタチいるのかよ……」
一ヶ月ほど前までよく利用していたゲイ用掲示板に接続する。叶真の求める男の条件は厳しいものに感じられたが、それは意外にも簡単に見つかった。
今までタチを漁ることなどなかったため気が付かなかったが、攻められたいけれど自称タチというのは想像以上に多いようだ。
叶真にとって理解できない性癖ではあったが、むしろ今は好都合だ。さっそく目に付いた男と接触をはかる。性欲を満たしたいために掲示板に集まっている男は、相手の役割さえ確認できると、とんとん拍子で話が進んだ。
今日の夜に男と会う約束をした叶真は複雑な心境で自室の天井を見上げる。
相手を攻める立場とはいえ、あくまでネコは叶真だ。ついにキョウスケ以外の男に抱かれるのかと気分は重くなる。自分を犯した以外の男に抱かれるのは、ネコとしての道を歩んでいる気さえした。
「いやいや、タチに戻るためだから」
気持ちからタチに戻り、ゆくゆくは完全にタチとしての自分を取り戻す。長い道のりではあったがそれしか方法はない。
男との待ち合わせの時間まで、叶真は何度も溜め息をつくのだった。
あれから叶真の勃起障害は、治るどころか悪化していくばかりだった。
男も女もいけるバイだったのが、今では女の裸を見てもまったく興奮することがない。アダルトビデオを見ながら自慰しようとしても、気持ちは萎えていくばかりだ。自分好みの可愛い男がネコのビデオを見たときは興奮したものの、以前とビデオの見かたが変わったことに気が付き、愕然とする。可愛い男を抱く想像をして興奮したのではなく、逞しい男に揺さぶられるネコに同調して興奮してしまったのだ。
あれほどバリタチだと言い張っていたのに、身体はすっかりとネコに開発されてしまったのである。
それに気が付いてから叶真はしばらくの間自慰すら止めていた。なんとか男として復帰しようと努力もしてみた。だが結果はなにも変わらず、叶真の秘所は本人に逆らうように熱を待ち焦がれている。
「もう、マジでどうしよっかなぁ……」
あれからキョウスケから連絡はない。二度と会いたくないと思い、電話番号も消そうと思ったのだが、その度に別れ際の悲しい顔をしたキョウスケを思い出し、消せないでいる。そのことは自分でもわけが分からなかったが、あまり深く考えないことにしていた。連絡を取らなければいいことであったし、仮にあったとしても会う気は毛頭ない。キョウスケの顔を忘れたときに消せば問題ないだろう。
だがそうなると困ったことがセックスの相手だった。キョウスケとはセフレとしてとてもやっていけず、それはすなわち他の男に抱かれるということだ。
「ありえない……けど一生セックスなしもありえない」
若干ハタチ。大学生の叶真にとって性生活はこれからなのである。
今もタチに返り咲きたいという気持ちはあった。やはり一方的に嬲られるのは性に合わない。ネコではあったがキョウスケを攻めたとき、確かに満足感があった。
「攻めるネコ……ね」
本当はタチとして攻めたい。だがそれが叶わない今、攻めるネコとして性欲を満たすしか方法はなかった。それにそうして征服欲を満たしていけば男のプライドも復活し、タチとしての機能も取り戻せそうな気もする。
「しばらくそうするしかないか……」
そうと決まれば男を探さなくてはいけない。タチの男……といってもキョウスケや自分のような自己主張の激しい男は駄目だ。気の弱い、ネコのような男。
「そんなタチいるのかよ……」
一ヶ月ほど前までよく利用していたゲイ用掲示板に接続する。叶真の求める男の条件は厳しいものに感じられたが、それは意外にも簡単に見つかった。
今までタチを漁ることなどなかったため気が付かなかったが、攻められたいけれど自称タチというのは想像以上に多いようだ。
叶真にとって理解できない性癖ではあったが、むしろ今は好都合だ。さっそく目に付いた男と接触をはかる。性欲を満たしたいために掲示板に集まっている男は、相手の役割さえ確認できると、とんとん拍子で話が進んだ。
今日の夜に男と会う約束をした叶真は複雑な心境で自室の天井を見上げる。
相手を攻める立場とはいえ、あくまでネコは叶真だ。ついにキョウスケ以外の男に抱かれるのかと気分は重くなる。自分を犯した以外の男に抱かれるのは、ネコとしての道を歩んでいる気さえした。
「いやいや、タチに戻るためだから」
気持ちからタチに戻り、ゆくゆくは完全にタチとしての自分を取り戻す。長い道のりではあったがそれしか方法はない。
男との待ち合わせの時間まで、叶真は何度も溜め息をつくのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる