HEBMDSU

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HEBMDSUヘブンデス

それは、とある数人の同人ゲームチームが、三か月前に発売したにも関わらず、今でも、世界中が熱狂しているMMORPG。
リアルでファンタジックな世界と、多岐にわたる職業と種族。
そして何より………

自由”過ぎる”。

プレイヤー間でのギルドは勿論、武器屋・道具屋と言った商業施設、他のプレイヤーに娯楽を提供する施設、さらに、洞窟、ダンジョン、村、街、国、までもを創る事が出来る。
そんなゲームだから、HEBMDSUから帰って来なくなるプレイヤーもいるぐらいだ。
そんなゲームである。
え?死なないのかって?
大丈夫、追加コンテンツで、ゲーム内で食べたり飲んだりしたものを、実際の栄養と置き換えるとかなんかのどーのこーのがあるから現実で起きることと言ったら、髪が伸びて大変ってことだけらしい。

あともう一つ、このゲームだけの特徴は、その種族だろう。
このゲームのタイトル通り、人間族ヒューマン精霊族エルフェル獣禽族ビースター機掛族マキナ魔妖族デーモン魂神族ソロード、そして未知族アンノウンの7つの種族が存在する。
他の種族は他のゲーム、漫画とかでもよく見るから、おおよその見当と思うが、未知族アンノウンはこのゲームオリジナルの種族だ。
未知族アンノウンがどういう物かと言うと、初期ステータスが異様に高い代わりに、レベルの概念がない。
つまりRPGの醍醐味であるレベルアップがないと言う、かなりシュールなものだ。
しかも中々成れないだけに、人気が高い種族だ。
そう、人気があるだけで、高いだけで、好き好まない人もいる。
因みに、俺は好まない。
そう、好まない。しかし………

………そんな種族になってしまった。

…………しかも、自分の些細な操作ミスみよって。

………………最悪だ。

RPGだろ!
なんでレベルが上がらないんだよ!!

リアルでファンタジックで広大な世界の片隅の森で、俺は1つの文句を叫ぶ。

「…R…PG…なのに……」

本当に、何故こうなった。
あ、俺のせいだ。

「RPGなのにレベルが上がらないんですけどおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉ!!」

俺の叫び声で、小鳥達が散っていった。
本日、快晴。


   ←REAL←


現在、大体昼の2時。
今朝、10時ぐらいに近所にある行きつけのゲーム店でやっとこのゲームを買ってきた。
子供の頃からの行きつけで、店の従業員が少ないおかげで殆どの人とは仲がいい。
まぁ、つまり1つだけ確保してもらっていた。
嬉しくて早速、起動してみた。

「えっと…ゲーム………スタートっと」

キュィィィィンというゲームの起動音と同時に、パソコンからブォォォォと排気音が聞こえる。
俺は、こういう時「あっ、パソコン頑張ってんな」と、ほっこりする。
まぁ実際のところ、ほっこりしていい事なのかはわからんが。

「アバターかー、いい感じのポイント欲しいなー」

このゲームでは、"種族ポイント"というものがある。
そのポイントによって、なれる種族の数が変わってくる。
例えば、"種族ポイント"が10pだったら、人間族になれても他の種族にはなれない。
11pの場合は、精霊族と人間族の両方になれる。
しかも、11pの時に人間族を選ぶと、10pの時よりも少し性能がいいステータスが高いアバターになる、という感じに、"種族ポイント"が16pまであるんだが、どう決めるのかはアバター制作時にルーレットをすると言う方法。一応ランダムではないらしい。
取り合えず、外見と名前は作れた。
後は種類を決めるだけ。

『“種族ポイント”を回しまっか?』

ルーレットを回す。

『あなたの“種族ポイント”は、16pになりますた』

画面から文字と同時に、音声も流れる。

「おぉー、16かー、しょっぱなから結構いい感じ」

『種族を選択してくださいな』

「へいへい」

さっきから、ふざけたことしか言わないが、これもこのゲームの特徴の1つらしい。
アバターを作成する時だけ、こんなふざけた言い回しをする。
通称"おふざけなれーとん"。
こういうのもゲームとして面白いだの、キャラクター作成時ぐらいはちゃんとしろだの、賛否両論らしい。
何を思ってこんなのにしたのか。おもろいからいいけど。
そんなこんなで、種族を選ぼうとした時、家のチャイムが鳴る。
チャイムなんぞいつもいきなりだが、いきなりでビックリしてしまった。
生憎と、今日は家に俺以外いない。
ベタな海外出張中とかではない。
ただの買い物中だ。

「……あぁ……めんど」

玄関のドアを開ける。

「…はぁーい」

ただの配達員が立っていた。

奈倉なそう りょうさんですか?お届け物です」

それだけ言われて、2,3匹ぐらい、仔猫が入ってそうな段ボールを受け取った。
まーた変なのかったな、あのおやじ。
そのままリビングに、蹴とばしておく。
部屋に戻って、続きをする。
画面には、

『未知族でいいですかの?』

と、出ている。
1つだけ項目が進んでた。

「っと、あっぶね、人間族っと」

Noを押して人間族を選ぼうとした矢先、またチャイムが鳴った。

「っつぉ……ビクッリした」

また玄関に行く。

「はーい」

ドアを開けると、今度は女の人が立っていた。
焦げ茶の髪のポニーテール、身長は俺のオデコぐらいまでで、体は結構恵まれていて歳は多分俺と近い。
 
「今日、隣に引っ越して来ました。路月みちづきといいます」

と、よくわからんお土産をもらった。

「あ、ども」

袋から中身が見えた。

「ん?タピオカ入りたい焼き?」

なんだよ、このゲテモノとも言いずらい物は………

「これからよろしくお願いします!」

と言って、帰ってしまった。
閉じたドアの前でポツンとたたずみながら、ポツンとこぼす。

「なんだ、これ?」


   ←REAL←


またまた部屋に戻って勢いよく座る。
そのまま、マウスに手を置く。
同時に、手元からカチッと音が聞こえた。
まさか………………

『アバターが完成しました。それではHEBMDSUをお楽しみください』

画面には、この1文が表示されていた。
そのまさかである。
不幸にも、このゲームはポイントを稼いで種族を選び直すなんてできない。
さらに、データを消すともう1回今度は、自分で探して買わなければならない。
しかも、このゲームはここら辺じゃ、あそこの店しか売ってないことぐらいもリサーチ済みだ。
ここら辺じゃなくても、かなり人気な為、絶対に俺が払えないほどの金額で売られてるハズ。
つまり……………………

「マジか」

後戻りできない。
このまま未知族として、このゲームで生きていかなけばならない。
Loadingが終わり、チュートリアルに移動している。
そんな中、リアルでファンタジックで広大な世界の片隅の森で、俺は1つの文句を叫ぶ。

「…R…PG…なのに……」

本当に、何故こうなった。
あ、俺のせいだ。

「RPGなのにレベルが上がらないんですけどおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉ!!」

俺の叫び声で、小鳥達が散っていった。
本日、快晴。
まじで、かいせい。
……………うん。


  →HEBMDSU→


『チュートリアルを開始します』

さっきまで、ふざけてたとは思えないほど丁寧に開始を教えてくれる。
突然、森の奥から、老人が出てきた。
ボロボロのファンタジックなローブに、ハンターっぽい服、背中には弓。
体も傷だらけになっている。
………一応、丁寧に話しかけてみる。

「どうなされましたか?ご老人」

「ここには凶暴な狼の大群が住み着いている!危ないから早く逃げなさい!」

あぁ、なるほど。
そう言う感じか。

「こっちに来ている!早く逃げるんだ!」

「どこの誰かは知りませんが、目の前で人が死にそうなのに、逃げれません!!」

ゲームであれど、人は、心が人間族並みの奴は死なせたくない。
目の前には、

『借りる武器を選びましょう』

と、出ている。
選べるのは、それぞれ、木の剣、木の弓、ナイフ。
俺が選ぶのは……………

「その剣借して下さい!!」

「わ、解った!使ってくれ!」

老人は戸惑いながらも、剣を貸してくれた。

「ほれ!受け取れ!」

投げられた剣は、切れのある線を描きながら俺の手に飛んでくる。
剣をキャッチして、そのまま向かってくる狼の1匹を斬りつける。
さすがゲーム、うまい具合に行く。
次々に、迫りくる狼を切り捨てる。
どれぐらい経ったかわからない。
数秒かも、数分かもしれない。
もしかしたら、もっと長いかもしれない。
ただただ、向かって来る狼たちを斬り続けた。

「これで………終わり!!」

ザシュッと斬音が響く。
ボシュと音を立てて、全部の狼が一気に灰色の魔石に変わる。
このゲームの魔石は、敵の種族によって色が違う。
まぁ、なんだかんだでチュートリアルは終わらせたのだが。
本当に、不幸どころの話ではない。
生まれてくるとこ間違えた並みに、どうしようもない。
チュートリアルでは違和感はなかったが、レベルが上がらない。
本当に、悪い夢であって欲しい。
レベルアップの画面に変わる。

『キギルのレベルがUNKNOWNアンノウンになりました。5ボーナスポイントを贈呈します』

あっ、そう言う事か。
チュートリアル中で、レベルは上がらない。
一応レベルアップの画面は、出るんだ。
しかも、ボーナスポイントは貰える。
ボーナスポイントとは、レベルが上がるときに貰えるポイントだ。
それが貰えるってことは……………

「未知族なのに、強くなれる?」

まだ、このゲームの事がよく分からない。
未知族は、レベルアップが出来ないから、強くなれないハズ。
この動作BPの贈呈は、このゲームのシステムなのか、バグなのか。
ん~、どうなってるんだ?

「よく分からん」

今の時点では、全然わからん。
そういうシステムであれば、そのままでいい。
バグか何かであれば、運営に問い合わせばいい。
こんな事は、些細な疑問だろう。
特に気にすることもない。


   →HBUMDSU→


「ふぅーっ」

無事にチュートリアルが終わり、一息つく。
森の風景にあっけをとられながら、街に向かって歩く。
そもそも街に向かうべきなのかは分からないが、なんとなくとりあえずで向かう。
街がどこにあるかは、マップでわかる。
昔から地理に強いわけではないが、道には迷った事はない。
今まで生きてきて、この答えがわかった事も無い。
そんな些細なことも、ゲームに影響するのか?
多分、関係ない。
暇つぶしに、鼻歌でも歌いながら歩く。

「~♪~♪~♪」

木の陰からチュートリアルの狼が出てきた。
軽くあしらっておく。
ボシュゥと灰色の魔石に変わる。
未知族の所為か、初めにしてはかなり強い。
ここら辺の魔物であれば、ほとんど倒せる気がしてきた。
ただ、最初のレベル上げとか、最初らへんのレベルアップの達成感がいいのに…………
未知族なのに、レベルアップの時に貰えるボーナスポイントは貰える。
ん~、不思議だ。
しかし、今考えたところで答えが出ないのも事実。
面倒だし、考えない事にする。
もう少し歩き続ける。

「~~♪~♪~~♪」

ノリノリで鼻歌を歌っていると、また木の陰から狼が出てきた。
芸のない奴。
あっ、コイツ狼か、ん?狼?
狼って、祖先が犬と一緒だったよな?
芸、覚えさせられるかな?
戦い中は、こんな事考えながらでも倒せる程に慣れてきている。
慣れてきて、余裕でいる時が一番危険って言うよな。
おぉ、危険危険。
そんなくだらない事を考えながら魔石を回収する。

「~♪~♪~♪」

考えたそばから、余裕をぶちかます。

「~♪~♪~♪」

さっきよりノリノリで歌っていると、後ろから攻撃を喰らった。

「ってぇ!」

「ガウゥ!!バウゥ!」

すぐに後ろに振り向くと、やっぱり狼がいた。
危険怖い。
ついでに鼻歌も怖い。
俺の鼻歌は魔物を引き寄せるかもしれん。
あぁ、怖い怖い。
まぁ、サックリ倒すんだけどね。
今、身をもって分かった。
余裕は怖い。これからは気を付けよう。
最早いつも通りとかしそうな魔石回収を済ませ、また歩を進める。


   →HBUMDSU→


多分、10分ぐらい歩き続けていた。
やっと森の出口が見えた。
しかし、街までは、まだ距離があるみたいだ。

「も少しで、森から出るか」

森から出たその時、目に光が差す。
一瞬目がくらんだが、すぐにその光になれる。
目の前には、想像を絶する程の"美しい"で表現しきれるかどうかも怪しい、壮大な景色と世界が広がっていた。

「…………」

余りの景色に言葉を失った。
この景色を少しでも多く記憶しようと、自然に首が動いていた。
森の出口から少し出た場所に、いい風が来そうな丘があった。
すぐそばには、大きめの樹が立っていた。
木の陰がいい感じに、雰囲気を出してくれている。

「あそこで休むか」

そもそもゲームである為休む必要がないが、同じ景色ばっかり見ていると何となく不安になる。
ちょっとカッコつけて座ってみる。
画面の中の出来事であるものの、本当に自分がそこにいた、今までそこで生きてきたと錯覚させる程、目の前の景色は、素晴らしく美しい物だった。
思ったと通りの、いいそよ風が流れ込んでくる。
今の目的地であろう街が、ちょとっこだけ顔を出している。

「拠点……………ここに建てようかな………」

今はまだお金が足りないが、いつかここに家を建てることを当分の目標にしようかな。
…………物凄く時間がかかりそうな目標だな。
さて、もう少し…………

「歩くとしますか」

名残惜しいが、街に行くためにこの場所から離れる。
また来るときに迷わないように、マップ上のここに旗を付けておく。
さらにこの旗を、お気に入り登録しておく。
マップのお気に入りに登録する事によって、どこにいても登録した場所が直ぐにわかる。
アイテムとか、魔法なんかを使えばどんな時でも、瞬時にワープすることもできる。
これで、絶対に迷わない。

今日はここで、この場所でセーブしておく。
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