29 / 32
第二章 ロルフとリリアの危険な冒険!?
第22話 頼もしい仲間たち
しおりを挟む◇◇◇
フェンが駆け出した先で、か細い声が微かに聞こえた。
「……ひっ……うぅ……」
「いた!あそこっ!」
月明かりに照らされた崖の下で、小さな男の子が木の根元にうずくまっているのが見える。
「ジョセフくん!」
名前を呼ぶと、びくりと肩が揺れ、怯えた目がこちらを向く。
「……だ、だれ?」
「お姉ちゃん達は冒険者だよ。お父さんたちに頼まれて、助けに来たよ!」
「こ、怖かったよぉぉぉ」
「もう大丈夫だよ。すぐにそっちに行くからね」
リリアの隣で、ロルフが素早く周囲を確認する。
「ここからなら降りられそうだな。リリアはここで待ってろ。俺が担いでくる」
「待って!私も行く!」
思わず口をついて出た言葉に、ロルフが一瞬驚いた顔をした。
「一緒に行く。ジョセフくん、ケガしてるかもしれないでしょ?」
フェンも小さく頷く。
「ぼくも行くです」
ロルフは小さく息を吐き、リリアを抱き寄せた。
「分かった。絶対に離れるな」
三人は慎重に崖を下り、ジョセフの前に膝をつく。
「……おねえちゃん?」
「よく頑張ったね。偉いぞ。痛いところはない?」
「足が痛い……」
ジョセフの身体には、あちらこちらに擦り傷があり、足首が腫れていた。
(かわいそうに。痛かったし、怖かったよね)
リリアは小さな足にそっと手を伸ばした。
「今、おまじないをかけてあげるね」
震える指先を胸に当て、静かに念じる。
「いたいのいたいの、とんでけー!怖いのも、とんでけー!」
白い光が優しくジョセフを包み、こわばっていた表情がふっと緩んだ。
「……あれ……いたくない……」
次の瞬間、堰を切ったように泣き出す。
「う、うわああああん!」
リリアは迷わず抱きしめた。
「よかった……本当によかった……」
そのときだった。
がさり、と茂みが揺れる音。
「来るぞ」
ロルフが低く告げ、リリアを背に庇う。
闇の中から現れたのは、牙をむき出しにした山狼型の魔物。唸り声をあげ、こちらを睨みつけている。
「フェン!」
「任せるです!」
フェンが吠え、ロルフが一気に前に出る。
「リリア、下がれ!」
リリアはジョセフを抱きしめたまま、必死に頷く。
戦いはあっという間だった。
ロルフの一撃で魔物が吹き飛び、フェンの追撃で完全に沈黙する。
静寂が戻った山の中で、リリアの体が遅れて震え出した。
「……怖かった……」
ロルフは何も言わず、ぎゅっとリリアを抱きしめる。
「もう、大丈夫だ」
フェンも尻尾を振りながら近づき、ジョセフの頬をぺろりと舐めた。
「わ、わわわ……」
「フェンが背中に乗せてくれるって。さぁ、帰ろう」
ジョセフは目を丸くすると、フェンにぎゅっとしがみついた。
◇◇◇
村に戻ると、ジョセフの両親が駆け寄ってくる。
「ジョセフ!!」
「母さん!父さん!」
泣きながら抱き合う親子を、少し離れた場所で見守る三人。
「本当に……本当にありがとうございました……!」
何度も頭を下げられ、リリアは慌てて首を振った。
「無事で良かったです。もう、勝手に山に入っちゃ駄目だよ?」
「うん!ありがとう!お姉ちゃん!ワンちゃんも!お兄ちゃんも、魔物バーンって、かっこよかった!」
村人たちの3人を見る目が、明らかに変わっていた。
「すごい冒険者さんたちだ」 「恐ろしい魔物を討伐してくれたなんて、村の恩人だ」
その夜、リリアの家には感謝の品として、村人たちから食べきれないほどの食料が集まり、マーサは目を丸くした。
「まあまあ……明日からしばらく食料に困らないね。リリア、お手柄だよ」
「えへへ。今日私、冒険者として、初めて人の役に立った気がする」
「ああ。大したもんだ」
ダンがリリアの頭をクシャッと撫でる。
◇◇◇
「またいつでも帰っておいで」
「うん!お土産一杯持って帰るね!」
「楽しみにしてるよ」
両親に別れを告げ、王都に向かう三人。
「ところで、ロルフのご家族はどこに住んでるの?」
「王都にいるぜ?」
「近くじゃん!いつでも帰れるじゃん!っていうか、王都に家があるなら、なんで一人暮らししてるの?」
「まぁなぁ。いずれは戻るつもりだが、実家暮らしは実家暮らしで面倒なことも多いからな」
ロルフが小さく笑う。
「……次は、俺の家に行くか?」
リリアは少し驚いて、それから頷いた。
「うん。行こう」
こうして三人は、再び王都へと向かって走り出した。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?
きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。
ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。
ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。
ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。
竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。
*魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。
*お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。
*本編は完結しています。
番外編は不定期になります。
次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。
追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
湊一桜
恋愛
王宮薬師のアンは、国王に毒を盛った罪を着せられて王宮を追放された。幼少期に両親を亡くして王宮に引き取られたアンは、頼れる兄弟や親戚もいなかった。
森を彷徨って数日、倒れている男性を見つける。男性は高熱と怪我で、意識が朦朧としていた。
オオカミの襲撃にも遭いながら、必死で男性を看病すること二日後、とうとう男性が目を覚ました。ジョーという名のこの男性はとても強く、軽々とオオカミを撃退した。そんなジョーの姿に、不覚にもときめいてしまうアン。
行くあてもないアンは、ジョーと彼の故郷オストワル辺境伯領を目指すことになった。
そして辿り着いたオストワル辺境伯領で待っていたのは、ジョーとの甘い甘い時間だった。
※『小説家になろう』様、『ベリーズカフェ』様でも公開中です。
酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜
鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。
そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。
秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。
一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。
◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について
あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。
異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。
和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……?
しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし!
危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。
彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。
頼む騎士様、どうか私を保護してください!
あれ、でもこの人なんか怖くない?
心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……?
どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ!
人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける!
……うん、詰んだ。
★「小説家になろう」先行投稿中です★
【完結】死の4番隊隊長の花嫁候補に選ばれました~鈍感女は溺愛になかなか気付かない~
白井ライス
恋愛
時は血で血を洗う戦乱の世の中。
国の戦闘部隊“黒炎の龍”に入隊が叶わなかった主人公アイリーン・シュバイツァー。
幼馴染みで喧嘩仲間でもあったショーン・マクレイリーがかの有名な特効部隊でもある4番隊隊長に就任したことを知る。
いよいよ、隣国との戦争が間近に迫ったある日、アイリーンはショーンから決闘を申し込まれる。
これは脳筋女と恋に不器用な魔術師が結ばれるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる