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第二章 ロルフとリリアの危険な冒険!?
第21話 夜の山は危険がいっぱい!
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◇◇◇
「リリア!あんた本当に大丈夫なのかい?」
「や、やっぱり俺も一緒に行こうか」
心配するマーサとダンにリリアは力強く首を振る。
「ううん。正直私はそんなに強くないけど、ロルフとフェンがいるから平気だよ。それよりお父さんはこの家でお母さんをしっかり守ってて!ヨゼフさん、すみませんが、お子さんの名前と特徴を教えていただけますか?」
ヨゼフ夫妻はこくこくと頷いたものの、不安そうに三人に目をやる。
「だ、ダン、この人たちは一体……」
小さな村だ。いきなり現れた見知らぬ旅人に警戒するのも無理はない。
「ああ、安心しろヨゼフ。これは俺たちの一人娘のリリア。王都で冒険者をしてる。こっちはリリアのパーティーの仲間たちだ。ロルフ君はなんとBランク冒険者さまだぞ?」
ヨゼフの言葉にパッと表情を明るくするヨゼフ達。
「こ、こんなところにBランク冒険者のパーティーが!ありがたい。これも天の助けだ。お願いします!息子を探してください!」
期待に輝く二人の顔にリリアは胸が熱くなる。かつてこれほどまでにリリアが誰かから期待されたことがあっただろうか。いや、ない。なぜならリリアが冒険者としてやったことと言えば、薬草採取とリス型魔物に逆さづりにされたことぐらいだからだ。
「お任せください!きっと息子さんは私たちが探し出してみせます!」
リリアの決意を込めた宣言にロルフとフェンは顔を見合わせる。
「よしフェン、リリアにいいとこみせような?」
「はいです!」
◇◇◇
街中の捜索は引き続きヨセフ夫妻と村の人たちが行うことにして、リリアたちは危険な魔物の出る山の捜索に向かう。
木の多い場所と言えば冒険者殺しの森しか知らないリリアだが、それでも明るいときしか立ち入ったことがない。うっそうと木々の繁る山の中は、夜だと一層不気味さを増している。時折聞こえる夜行性の鳥の鳴き声に思わず背中が跳ねた。
「ヒッ」
(怖くない怖くない。私は冒険者。私は冒険者)
一心不乱にぶつぶつと呟くリリアの手を、ロルフがそっと繋ぐ。
「大丈夫か?怖いなら抱いててやろうか?」
心配そうに顔を覗き込まれて心臓が跳ねる。
「な、ななななに馬鹿言って!」
「お前ひとりぐらい抱えてても歩けるけど」
「ええええ、遠慮しますっ!!!」
二人の少し前をフェンリル姿のフェンが警戒しながら歩いている。初めての山では、どんな魔物が潜んでいるか分からない。油断は禁物だ。
それなのに、馬鹿ロルフのせいで今度は心臓がうるさい。手のひらから伝わるロルフのぬくもりが妙にくすぐったくて、それでも、その手を離すことなどできなくて。ときめきをごまかすように、リリアは声をあげた。
「ジョセフくん!ジョセフくんはいますか!お父さんとお母さんに頼まれて探しにきたよ!」
聞けばわずか五歳の男の子だという。子どもの足だ。山の中に入り込んでしまったとしても、入り口付近で怖くなってうずくまっている可能性が高い。フェンがヨゼフ夫妻から借りたジョセフの服で匂いを覚えて追っているが、初めての山では色んな匂いが入り混じり、簡単には見つからない。
(私でも怖いんだもん。もしこの山の中にいるなら、怖い思いをしているはず……)
怯えている子どもの姿を思い浮かべると、自然と気持ちが引き締まる。
何度も呼びかけながら山の入り口付近を重点的に探していると、か細い悲鳴のようなものが聞こえた。
「フェン!」
ロルフの掛け声に、フェンが一気に駆けだす。
「行くぞ!リリア!」
ぐいっと抱き寄せられたと思ったら、ひょいっとお姫様抱っこで運ばれるリリア。
「ひゃっ!」
「悪い!こっちのほうが早い!しっかりつかまってろ!」
照れている場合ではない。リリアはきゅっと口を閉じると、しっかりとロルフの首に手を回す。
「いこう!」
「リリア!あんた本当に大丈夫なのかい?」
「や、やっぱり俺も一緒に行こうか」
心配するマーサとダンにリリアは力強く首を振る。
「ううん。正直私はそんなに強くないけど、ロルフとフェンがいるから平気だよ。それよりお父さんはこの家でお母さんをしっかり守ってて!ヨゼフさん、すみませんが、お子さんの名前と特徴を教えていただけますか?」
ヨゼフ夫妻はこくこくと頷いたものの、不安そうに三人に目をやる。
「だ、ダン、この人たちは一体……」
小さな村だ。いきなり現れた見知らぬ旅人に警戒するのも無理はない。
「ああ、安心しろヨゼフ。これは俺たちの一人娘のリリア。王都で冒険者をしてる。こっちはリリアのパーティーの仲間たちだ。ロルフ君はなんとBランク冒険者さまだぞ?」
ヨゼフの言葉にパッと表情を明るくするヨゼフ達。
「こ、こんなところにBランク冒険者のパーティーが!ありがたい。これも天の助けだ。お願いします!息子を探してください!」
期待に輝く二人の顔にリリアは胸が熱くなる。かつてこれほどまでにリリアが誰かから期待されたことがあっただろうか。いや、ない。なぜならリリアが冒険者としてやったことと言えば、薬草採取とリス型魔物に逆さづりにされたことぐらいだからだ。
「お任せください!きっと息子さんは私たちが探し出してみせます!」
リリアの決意を込めた宣言にロルフとフェンは顔を見合わせる。
「よしフェン、リリアにいいとこみせような?」
「はいです!」
◇◇◇
街中の捜索は引き続きヨセフ夫妻と村の人たちが行うことにして、リリアたちは危険な魔物の出る山の捜索に向かう。
木の多い場所と言えば冒険者殺しの森しか知らないリリアだが、それでも明るいときしか立ち入ったことがない。うっそうと木々の繁る山の中は、夜だと一層不気味さを増している。時折聞こえる夜行性の鳥の鳴き声に思わず背中が跳ねた。
「ヒッ」
(怖くない怖くない。私は冒険者。私は冒険者)
一心不乱にぶつぶつと呟くリリアの手を、ロルフがそっと繋ぐ。
「大丈夫か?怖いなら抱いててやろうか?」
心配そうに顔を覗き込まれて心臓が跳ねる。
「な、ななななに馬鹿言って!」
「お前ひとりぐらい抱えてても歩けるけど」
「ええええ、遠慮しますっ!!!」
二人の少し前をフェンリル姿のフェンが警戒しながら歩いている。初めての山では、どんな魔物が潜んでいるか分からない。油断は禁物だ。
それなのに、馬鹿ロルフのせいで今度は心臓がうるさい。手のひらから伝わるロルフのぬくもりが妙にくすぐったくて、それでも、その手を離すことなどできなくて。ときめきをごまかすように、リリアは声をあげた。
「ジョセフくん!ジョセフくんはいますか!お父さんとお母さんに頼まれて探しにきたよ!」
聞けばわずか五歳の男の子だという。子どもの足だ。山の中に入り込んでしまったとしても、入り口付近で怖くなってうずくまっている可能性が高い。フェンがヨゼフ夫妻から借りたジョセフの服で匂いを覚えて追っているが、初めての山では色んな匂いが入り混じり、簡単には見つからない。
(私でも怖いんだもん。もしこの山の中にいるなら、怖い思いをしているはず……)
怯えている子どもの姿を思い浮かべると、自然と気持ちが引き締まる。
何度も呼びかけながら山の入り口付近を重点的に探していると、か細い悲鳴のようなものが聞こえた。
「フェン!」
ロルフの掛け声に、フェンが一気に駆けだす。
「行くぞ!リリア!」
ぐいっと抱き寄せられたと思ったら、ひょいっとお姫様抱っこで運ばれるリリア。
「ひゃっ!」
「悪い!こっちのほうが早い!しっかりつかまってろ!」
照れている場合ではない。リリアはきゅっと口を閉じると、しっかりとロルフの首に手を回す。
「いこう!」
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