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第二章 ロルフとリリアの危険な冒険!?
第9話 神獣は立派な国民ですっ!
しおりを挟む◇◇◇
なんだかんだ準備を整えて、リリア一行は森に出掛けた。ロルフの友人とはいえ、高貴な方々なのだっ!粗相があっては大変と思うと、柄にもなく緊張してしまう。フェンもそわそわと落ち着きのない様子で、緊張してるのがわかる。
「アデル!待たせたな!」
森の入り口近くで薬草を採集しているアデル達を見かけ、ロルフが声をかける。
「おう、ロルフ!まだ始めたところだ。まぁ、こっちにこいよっ!ティアラ、一緒に来てくれるか?」
アデルがなぜか姫様を呼んだことでロルフは少し警戒心を露わにする。
「姫様も?実はそんなに聞かれたくない話なんだが……」
「ん、すまんな。でも、ティアラには話しておいたほうがいい。俺よりよっぽど役にたつアドバイスをしてくれると思うぞ?」
「ふーん?」
ロルフがちらっとティアラに目をやる。ティアラはにっこり笑ってロルフに近づくと、ロルフの耳にそっとささやいた。
「フェンリルのことか、神獣の巫女であるリリアさんについての相談ですよね?それとも、森の守護者たるあなたの力についてかな?」
「あんた……なにもんだ?」
一瞬ティアラを睨みつけるロルフ。とそこへ、
「ちょっとロルフ!なに天使を睨んでるのよっ!失礼にもほどがあるわっ!」
すぱーんと、いい音をさせながらリリアがロルフの頭を叩く。
「がうっ!女神様に失礼です!」
フェンもロルフの足にガブリと噛みついて威嚇している。
「ちょっ、まて。おまえら……俺はだな……」
「ふふ、いいんです。私がびっくりさせちゃったから。大丈夫。私は敵じゃありませんよ」
悪戯っぽくウィンクするティアラをみてこくこく頷くリリアとフェン。
「はいっ!天使さま!」
「女神さまですぅ!」
ティアラは二人の様子を見てくすっと笑うと、悪戯っぽく囁いた。
「えっと、詳しいことは内緒ですが、実は私にもフェンリルのお友達がいるんです」
「えっ?姫様も?」
ティアラの言葉に驚くロルフ。
「まさか、神獣の巫女が一度に二人も……」
「んー、私は巫女ではありません」
「じゃあいったい……」
「だーかーらー!女神様ですぅ!」
「え?なになに?何の話?」
耳のいいロルフとフェンには声を潜めたティアラの言葉がはっきりと聞こえるが、リリアには聞こえないらしくひとりで三人の周りをうろうろしている。
ロルフはしばらく考えた後、
「よし、わかった。じゃあアデルと姫様に話を聞いてもらう。リリア、フェンもいいか?」
「へ?いや、よくわかんないけどロルフがいいって思うならいいよ」
「僕もいいと思います!」
「よし。すまない、セバスとエリックは少しここで待っていてくれるか?」
アデルは残りのメンバーに声をかけると、五人は皆から少し離れた場所で腰を下ろした。
「二人にはもうバレてるみたいだからまどろっこしいことはなしだ。実は、リリアとフェンの事で相談がある」
ロルフは真剣な口調で話し出した。
◇◇◇
「ふーん、じゃあフェンに出逢って始めてリリアちゃんが神獣の巫女だとわかったんだな」
アデルは少し離れた場所で無邪気に蝶を追いかけるフェンを見つめる。こうしてみると、ただの獣人の子どもと何も変わらない。
「そうだ。リリアはテイマーでありながら、一度も魔物をテイムすることができなかった。そのことに早く気付くべきだったんだが……」
「いや、無理もないな。神獣使いは何百年も現れていないと聞く。神獣自体が伝説となっているし、神獣使いと神獣との関わりも詳しくは残っていないからな」
「そうか。レアだとは思っていたがそんなに。フェンがフェンリルだと分かればリリアは聖女に認定されるだろう。俺たちはそれを望んでいない。フェンが人化できるから安心していたんだが、まさか姫様に見破られるとは思わなかった」
ロルフからちらりと視線を送られ、ティアラはにっこりと微笑む。ティアラはティアラで、リリアと二人でなにやら話し込んでいるようだ。
「あー、まぁ、ティアラはちょっと特別な力があるからな。俺にはさっぱり分からなかったぞ。獣人には分かるのか?」
アデルの言葉にロルフは軽く首を振る。
「いや、フェンリルの姿なら分かるが人化してると分からないな。俺でも犬獣人と勘違いするだろう」
「そうか。なら冒険者になるには問題ないな。冒険者登録はできたのか?」
「ああ、冒険者登録は問題なくできた」
アデルはふむ、と頷く。
「なら俺に頼みたいことってのは?」
「フェンをアリシア国民として認めて貰えないかと思ってな。あれこれ出自を訊ねられるのはまずいが」
「ああ、なるほど。分かった。こちらで手配しておこう」
「すまないな。助かる」
基本冒険者はギルドカードがあればアリシア国内外で問題なく活動することができる。しかし、税金や住居の優遇処置、身元の保証、教育の無料化など、国籍を持つことで受けられるメリットも大きい。なにより、他国とトラブルになった場合国が身柄の保護のために動いてくれる。
また、アリシア国民になるためには本来いくつかの条件があるが、獣人の場合基本的に無条件で認められる。アリシア王国では、他国で迫害されることも多い獣人は積極的に受け入れる体制を取っているためだ。
ロルフのほっとした顔を見てアデルは爽やかに微笑む。
「お前、リリアちゃんのこと本当に好きなんだな」
「当たり前だろ?」
取りあえずフェンの居場所が作れたことにロルフは胸をなで下ろした。
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