46 / 91
第3章 おてんば姫の冒険録
6 兄の想い
しおりを挟む◇◇◇
「ティアラがアリステア王国へ?どうして今そんな話が出たんだ?」
執務室でカミールはティアラたち一行と向き合っていた。報告を受けて飛んできたアデルもまた、厳しい表情でたたずんでいる。
「エリック、ジャイル、ミハエル……これはお前たちの差し金か?お前たちの国の争いにティアラを巻き込もうというのか?そのつもりなら私はお前たちを許さない」
カミールが三人に向けた厳しい言葉に、ティアラは慌てて首を振った。
「違うっ!アリステア王国に行きたいって言ったのは私なの」
「ティアラが?」
カミールに見つめられてティアラは再びフィリップと自分について語り始めた。自分が大賢者アリシアの生まれ変わりであること。女神アリステアと大賢者アリシアと同じ創世の魔法が使えること。パートナーのドラゴンであるフィリップをずっと探し続けていたこと。そしてもしそのドラゴンが闇落ちしたのであれば、救えるのは自分だけだと。
「もしアリステア王国がドラゴンの力を利用しようとしているなら……私が止めなきゃいけないの」
カミールもアデルも愛する妹の突然の告白に言葉を失っていた。
「ティアラが大賢者アリシアの生まれ変わり……それは、ティアラにはアリシア様の記憶があるということかい?」
「ええ。前世の記憶を思い出したのは8歳のころだけど。少しずつ記憶がよみがえって、今ではほとんど思い出していると思うわ」
「創世の魔法使い……そうか……そんなことが、本当にあるんだな」
カミールがポツリと漏らした言葉にアデルもまた大きなため息をついた。
「ティアラが特別な存在であることは分かっていた。見たこともない虹色の魔力と膨大な力を見たときから。だが、大賢者様の生まれ変わりだったとはな。ドラゴンを鎮めるのにティアラのもつ特別な魔力が必要だと言うんだな?」
ティアラがこくりと頷くとカミールとアデルもまた顔を見合わせ、頷き合った。
「俺たちが止めても、ティアラは行くんだろう?」
アデルの言葉にティアラは決意を浮かべた顔で頷く。
「心配かけてごめんなさい。でも、いくわ」
「ティアラは言い出したら聞かないからな……」
カミールのやるせなさそうなつぶやきに胸が痛む。
「もしどうしても行かねばならないなら、私もお前の助けになりたい。だが、私が今国を離れるわけにはいかない」
いつ大国同士の戦争が始まるか分からず、国の一大事の今、国の中心人物であるカミールが自国を離れることができないのは誰もが分かっていた。悲痛な表情を浮かべるカミールにセバスが胸を叩いて見せる。
「カミール様、ご安心召され。このじいが命に代えても姫様をお守りします!」
「じいや……」
「私たちは、ティアラのパーティーの一員として全力でティアラを護ります」
エリックの言葉にジャイルとミハエルも大きく頷いて見せる。
「しかし、エリックは戦争を起こそうとしているアリステア王国の第二王子、ジャイルとミハエルも標的となっているノイエ王国の後継候補だ。三人とも難しい立場だろう?」
「まだ戦争は始まっていません。私達は戦争回避のためにも速やかに行動する必要があると考えています」
エリックの言葉にカミールが苦悩しているのが分かる。
「俺はついていくぜ?いいだろ、兄貴」
アデルがゆらりと体を起こすとティアラをしっかりと見つめる。
「もし俺に何かあってもこの国にはカミールがいる。俺は、カミールの憂いを晴らすためにも、持てる全力でお前を護る」
「アデルお兄様……」
アデルの言葉にカミールも覚悟を決めた。
「行ってくれるか、アデル」
「ああ。兄貴の分までしっかりやるよ。アリシア王国のことは任せた」
「すまないな……」
「そうと決まれば出発だな。通常アリステア王国には船で向かうことが多いが……少人数だから飛竜で行ってもいいな」
「飛竜で!?」
目を丸くする一堂にアデルはにやりと笑った。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました
小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。
しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!?
助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、
「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。
幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。
ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく!
ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる