王女様は聖女様?いいえ、実は女神です(こっそり)~転生王女は可愛いもふもふと愛するドラゴンを守るため最強の仲間と一緒に冒険の旅に出る~

しましまにゃんこ

文字の大きさ
53 / 91
第3章 おてんば姫の冒険録

13 悪い子にはお仕置きよっ!

しおりを挟む
 ♢♢♢

「おめたち!兄さ達をどこやっただっ!おめ達に頼まれて村を出たもんは一人も戻ってこねーだっ!」

 がくがくと震えつつ、真っ直ぐに冒険者達を睨み付けるトム。トムを面白そうにじろじろ見ていた男達はニヤリと笑った。

「おお、そうだそうだ。やっぱりお前だ。前に村に案内してくれたよな。探してたんだよ」

「おらの質問に答えるだっ!」

 尻尾をピンと立てたままトムは必死に虚勢を張る。まだ森が焼かれる前。森の中で魔物に襲われ、怪我をして動けなくなっている冒険者達を見つけた。村の存在を人間に教えるのは禁忌だったが、このまま放置すればすぐにでも魔物に殺されてしまうだろう。そう思ったトムは迷いつつも冒険者達を村に連れて帰ったのだ。

 人間は恐ろしい生き物だ。獣人を奴隷のように扱う。小さい頃からそう言い聞かされて育った。獣人の村は人間達から必死に逃げてきた獣人達が隠れ住む村だ。だが、心優しい仲間達は、呆れつつも怪我をした冒険者達を追い出すようなことはしなかった。

 トム達の懸命な看護のかいあって、冒険者達は一命を取り留めた。そして、動けるようになった冒険者達は、森の外まで送ってくれ、街でぜひ礼がしたいと言うのだ。もちろん最初は断った。あくまでもやむを得ない処置であり、人間達と馴れ合う気などない。しかし、怪我が癒えたばかりの冒険者達の様子も気になった。そこで、村でも腕利きの若者達が街の近くまで送っていくことになったのだ。

 ―――しかし、そのまま誰も戻らなかった。

「あー、あの獣人達な。今頃戦闘奴隷として働いてるだろうよ」

「なっ……なしてそっただこと……」

「街の近くで仲間達にあってな。ちょうど金も尽きてたから売り飛ばすことにしたんだよ。良い値で売れたぜ?その後もそいつらを探して何人か来たしな」

「全く。自分からやってくるなんて馬鹿な連中でさ」

「う、嘘だっ!兄さ達がおめたちみたいな奴らに遅れを取るわけねーだ!」

 トムが叫ぶと、冒険者達はケラケラと笑い出す。

「お前なぁ、獣人が街で暴れられると思うか?お前達が暴れれば、仲間がどんな目に合うと思う?ますます立場が悪くなるだろうな。お前達は人間様に飼われてるのがお似合いなんだよ。いっちょまえに村なんか作りやがって!この獣がっ」

「そんな……」

「いいからほら、まだガキどもが何匹かいるんだろ?さっさと案内しろよ。ガキじゃあたいした金にはならねーが、ちったあ足しになるだろ」

「お前らなんか、助けなきゃよかった……村に連れて行かなきゃ良かった」

 ポロポロと涙を流すトムの肩をエリックが優しく撫でる。

「いいえ。あなたが行った行為は間違っていませんよ」

「でもっ!……そのせいで兄さ達が……おらの、おらのせいで……」

「悪いのはあなたではありません」

 エリックの言葉にメンバー全員が大きく頷く。

「悪いのはこの屑どもだな」

「ああ、許せねーな」

「恥ずかしくないのかな」

「全く、冒険者の風上にも置けませんな」

 口々に不快感をあらわにする。だが、甘い。

 ―――突如、辺り一面にゴゴゴゴゴゴと、大地を揺るがすような音が響き渡る。

「あーあ……」

「絶対こうなると思った……」

 ビシバシと大きく割れる大地を、ジャイルとミハエルが軽く飛び退いて避ける。

「アデル兄様……どいて」

 かつてない程ドスの効いたティアラの声にアデルが震え上がる。

「ティ、ティアラ!?えっ?お前、ちょっと落ち着け……」

 ゆらりと立ち上る魔力の渦と共に、ティアラの髪がぶわりと広がる。ビリビリと空気まで張りつめていく様子にアデルも息を飲む。

「え、ちょ、これ……」

「やめとけ師匠。怪我するぜ?逃げたほうがいい」

「こうなったときのティアラは手がつけられませんから」

「はっ!?え、お前ら……」

「ああ、師匠は冒険者としてあんま一緒にいないから見たことないのか。こと獣人が絡むと、コイツ人が変わるんだよなぁ……」

「ええ。獣人狩りにきた奴隷商人とか、本気で容赦ないですからね……」

 遠い目をする二人に愕然とするアデル。可愛い妹のこんな姿は見たことがない。その間も岩が舞い上がり大地が破壊されていく。

「前なんか奴隷船ごと破壊してたからな」

「あれはまさに天災でしたね……」

(ひ、ヒイイイイイイイ……)

 突然豹変したティアラに目を白黒させて固まったトムを抱え、エリックも優雅に距離を取る。

「大丈夫。彼女があなたに危害を加えることはありませんよ。絶対に」

 ティアラの厳しい視線が冒険者達を射貫く。

「ヒッな、なんだこの女……」

「ば、化け物……」

 腰を抜かした冒険者達にうっそりと微笑むティアラ。

「悪い子には……お仕置きが必要ね……」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...