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第3章 おてんば姫の冒険録
12 怪しい冒険者に御用心
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♢♢♢
「こ、こったらことがぁぁぁぁ!!!!ああーーーー!!!神様!ほんとうにいたんですねぇぇぇ???」
しこたまセバスの料理を堪能したあと、湖を見にきたトムは思わず大地にひれ伏した。
「ありがてぇーありがてぇー!これで村のみなさ助かるだぁぁぁ」
「おい落ち着け。訛ってるぞ」
「訛ってるの可愛い~♪」
淡々と突っ込みを入れるアデルとのんきなティアラ。それを見て苦笑いを浮かべるジャイルとミハエル。そんなメンバーを尻目に、エリックはなにやらキョロキョロと周囲を伺っている。
「うわぁぁぁぁ……」
感激でなにがなんだか分からなくなってるトムだったが、ハッと気を取り直した。
「こうしちゃいられねぇだっ!すぐに村さ行って皆に知らせるだよっ!」
「わぁ、近くに村があるの?」
村と聞いてティアラの眼がキラキラと輝く。獣人の村!それはもふもふ好きのティアラにとってまさに楽園のようなもの。
「はいっ!皆さんもぜひ来てほしいだっ!い、いえいえ、えっと、きて欲しいです!」
「可愛いから普通に喋っていいよ?」
「か、か、かわいいいいい……」
ふしゅーと湯気を上げて倒れそうなトム。
「おい、だからやめてやれって」
「やれやれ……ところでエリック様、さっきから何を……」
「ええ。どうやら歓迎できない客人もいらっしゃったようですよ」
「ほっほっ、そのようですな」
エリックとセバスがピタリと視線を向けた先から、ゆらりと五人組の大男達が現れた。
「へっへ、気付いてたか」
「よぉぉ、お前さん達もどうやらお仲間だろ?俺たちゃ冒険者だ」
ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべる男達にティアラ達もいっせいに戦闘態勢を取る。アデルがティアラを庇うようにすっと前に立つと、エリックはトムの前に立ち、ジャイル達が周囲を囲むように警戒する。
ティアラも伊達にAランクを名乗っている訳ではない。魔法の技も剣の腕も年々磨きが掛かっている。一般の冒険者に遅れを取ることはまずないだろう。
だが、平和で穏やかなアリシア王国内では盗賊や問題を起こす冒険者は少なく、対人の戦闘経験は少ないのが現状だ。これまでこなしてきた戦闘と言えば、たまに来る海賊や奴隷狩りを捕まえる程度。
何しろアリシア国内において、圧倒的な魔力を持つ王族に刃向かう愚か者もいないし、癒しの力を惜しみ無く与える心優しい王女に悪意を向ける存在はいない。だが、アリシア王国を一歩出れば、そんなことは通じない。悪党はどんな汚い手でも平気で使ってくるだろう。ティアラの優しさが時として弱さになることを、アデルは懸念していた。
「おおっと、おっかないなぁ。なあに、ずいぶん旨そうな匂いがしたから、ご相伴に預かれねえかと思っただけだ」
男達の中でリーダー格と思われる男が進み出る。
「ここ最近の戦でうちの食料が底をついちまってなぁ。カツカツなんだよ。せっかく森に足を伸ばしたのにこの有り様だろう?」
やれやれと肩をすくめながら森をぐるりと見回す男に、子分達もニヤニヤと同意する。
「そうでさぁ。もう腹が減って腹が減って。なぁ?」
「ああ、いまにも倒れちまいそうだ」
アデルは警戒を崩さないままチラリとトムを見る。トムは冒険者達を見ると真っ青な顔でぶるぶると震えだした。
「そうか……ならば俺たちの食料を分けてやるからとっとと立ち去るがいい」
アデルの言葉にリーダーがニヤリと笑う。
「さすがお貴族様だ。お優しいことで。わかるぜ?冒険者の格好をしちゃいるが、もとは良いとこの坊っちゃん達だろう。なぁおい、お前達、お貴族様達が憐れな俺達にお恵み下さるらしいぞ」
「ははぁ、さすがお優しいことで」
「ありがてぇありがてぇ」
口々に囃し立てる冒険者達。しかし、震えていたトムがエリックの袖を引く。
「トム?どうしましたか?」
「だ、だめ、ですっ!」
ガタガタと震えながら懸命に声を絞り出す。
「あいつらは、だめですっ!」
「こ、こったらことがぁぁぁぁ!!!!ああーーーー!!!神様!ほんとうにいたんですねぇぇぇ???」
しこたまセバスの料理を堪能したあと、湖を見にきたトムは思わず大地にひれ伏した。
「ありがてぇーありがてぇー!これで村のみなさ助かるだぁぁぁ」
「おい落ち着け。訛ってるぞ」
「訛ってるの可愛い~♪」
淡々と突っ込みを入れるアデルとのんきなティアラ。それを見て苦笑いを浮かべるジャイルとミハエル。そんなメンバーを尻目に、エリックはなにやらキョロキョロと周囲を伺っている。
「うわぁぁぁぁ……」
感激でなにがなんだか分からなくなってるトムだったが、ハッと気を取り直した。
「こうしちゃいられねぇだっ!すぐに村さ行って皆に知らせるだよっ!」
「わぁ、近くに村があるの?」
村と聞いてティアラの眼がキラキラと輝く。獣人の村!それはもふもふ好きのティアラにとってまさに楽園のようなもの。
「はいっ!皆さんもぜひ来てほしいだっ!い、いえいえ、えっと、きて欲しいです!」
「可愛いから普通に喋っていいよ?」
「か、か、かわいいいいい……」
ふしゅーと湯気を上げて倒れそうなトム。
「おい、だからやめてやれって」
「やれやれ……ところでエリック様、さっきから何を……」
「ええ。どうやら歓迎できない客人もいらっしゃったようですよ」
「ほっほっ、そのようですな」
エリックとセバスがピタリと視線を向けた先から、ゆらりと五人組の大男達が現れた。
「へっへ、気付いてたか」
「よぉぉ、お前さん達もどうやらお仲間だろ?俺たちゃ冒険者だ」
ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべる男達にティアラ達もいっせいに戦闘態勢を取る。アデルがティアラを庇うようにすっと前に立つと、エリックはトムの前に立ち、ジャイル達が周囲を囲むように警戒する。
ティアラも伊達にAランクを名乗っている訳ではない。魔法の技も剣の腕も年々磨きが掛かっている。一般の冒険者に遅れを取ることはまずないだろう。
だが、平和で穏やかなアリシア王国内では盗賊や問題を起こす冒険者は少なく、対人の戦闘経験は少ないのが現状だ。これまでこなしてきた戦闘と言えば、たまに来る海賊や奴隷狩りを捕まえる程度。
何しろアリシア国内において、圧倒的な魔力を持つ王族に刃向かう愚か者もいないし、癒しの力を惜しみ無く与える心優しい王女に悪意を向ける存在はいない。だが、アリシア王国を一歩出れば、そんなことは通じない。悪党はどんな汚い手でも平気で使ってくるだろう。ティアラの優しさが時として弱さになることを、アデルは懸念していた。
「おおっと、おっかないなぁ。なあに、ずいぶん旨そうな匂いがしたから、ご相伴に預かれねえかと思っただけだ」
男達の中でリーダー格と思われる男が進み出る。
「ここ最近の戦でうちの食料が底をついちまってなぁ。カツカツなんだよ。せっかく森に足を伸ばしたのにこの有り様だろう?」
やれやれと肩をすくめながら森をぐるりと見回す男に、子分達もニヤニヤと同意する。
「そうでさぁ。もう腹が減って腹が減って。なぁ?」
「ああ、いまにも倒れちまいそうだ」
アデルは警戒を崩さないままチラリとトムを見る。トムは冒険者達を見ると真っ青な顔でぶるぶると震えだした。
「そうか……ならば俺たちの食料を分けてやるからとっとと立ち去るがいい」
アデルの言葉にリーダーがニヤリと笑う。
「さすがお貴族様だ。お優しいことで。わかるぜ?冒険者の格好をしちゃいるが、もとは良いとこの坊っちゃん達だろう。なぁおい、お前達、お貴族様達が憐れな俺達にお恵み下さるらしいぞ」
「ははぁ、さすがお優しいことで」
「ありがてぇありがてぇ」
口々に囃し立てる冒険者達。しかし、震えていたトムがエリックの袖を引く。
「トム?どうしましたか?」
「だ、だめ、ですっ!」
ガタガタと震えながら懸命に声を絞り出す。
「あいつらは、だめですっ!」
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