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第3章 おてんば姫の冒険録
20 反逆者と侵略者
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♢♢♢
(出てきたのはとんだ小者だったな……まぁ、そのさらに裏にアリステア王国と教会が絡んでるのは間違いなさそうだが)
アデルはシャーリー男爵を淡々と縛り上げると、無造作にギルドの床に転がす。グェッと蛙みたいな声を上げたシャーリ男爵を無視し、
「おい、お前達、こいつを見張っといてくれ」
壁際の冒険者達に声をかけると、男達に向かって素早くポーションを放り投げた。
「は、はぁ?こ、これはポーションじゃねえかっ!」
「ああ。ギルドだから当然常備してるはずだが……ここには無いみたいだな」
「あ、ああ。こいつが来てから国中のポーションは押収されちまって、俺らには使わせて貰えねーんだ……ほ、本当に使っていいのか?」
「ああ。まだたっぷり持ってるから遠慮するな。ほら、ポーションが必要な奴は好きなだけ持っていけっ!」
アデルが机上にザァーっと並べたポーションを見て、冒険者たちが色めき立つ。
「あ、あんた、何者だ……」
「ば、馬鹿野郎!Sランク冒険者様だよ!さっきマリーちゃんが言ってただろ!」
「そ、そうか!そうだった!Sランク冒険者様が俺たちを助けに来てくれたんだな!」
ワッと上がる歓声にアデルは肩を竦める。
「別にお前らを助けようなんて思ってねぇよ。いいからさっさと傷を治せ」
ポーションを飲んだ冒険者たちはみるみる塞がっていく傷に歓声を挙げる。
(この状態の冒険者たちからポーションを奪っただとっ!一体どれぐらいの冒険者が犠牲になったんだ……くそっ)
神官もろくにいない国で、冒険者からポーションを奪うのは、もはや死ねと言っているようなものだ。アデルはあらためてポーションの必要性を痛感する。
「あ、あの!皆にポーションを分けていただきありがとうございます。なんとお礼をいって良いか……」
先ほど冒険者たちからマリーちゃんと呼ばれていた受付嬢は、机上に並べられたポーションを呆然と見つめていた。こんなに大量のポーションを惜し気もなく差し出すこの人はいったい何者なんだろう。
「あんたには別に聞きたいことがある。コイツらが連れてきた獣人たちの行方だ」
「……あの人たちは、大監獄の地下牢にまとめて捕らえられています……」
「地下牢だと!?罪もない獣人たちをか!?」
「はい。それと……命令を逆らった人間やその家族は全て地下牢に……私の、父も……」
「……親父さん、捕まってるのか?」
「……私の父は、このギルドのギルドマスターでした。でも、この男が命令した、この国の獣人たちを戦闘奴隷としてアリステア王国に送る計画に反対して投獄されたんです。一緒に反対してくれた冒険者たちの家族と一緒に。……私は、このギルドの補佐をするためだけに残されました」
「なるほどな……俺はこれから捕まった獣人たちを助けに行く。お前達はどうしたい?」
アデルの問い掛けに冒険者たちから声が上がる。
「俺は行く。もうこんなのはうんざりだ。俺は俺の家族を取り戻す」
「……俺も行くぜ。ちったぁ戦力になるだろ」
「俺は……ここに残ってマリーちゃんを守る。そのうち警備隊が飛んでくるだろうからな」
ちらりと男爵に目をやると、指輪を床に押し付けながら、ニヤリと笑っている。
(通信用の魔道具を隠し持ってたか……)
「ふんっ、もう遅いわ。すぐに警備隊が駆け付けてくるぞっ!アリステア王国の誇る精鋭部隊がなっ!」
言うが早いか、ギルドを包囲していた警備隊が一斉に雪崩れ込んでくる。
「ずいぶん早いご到着だな……よほど暇とみえる」
「うるさいっ!お、お前達!こいつらを全員捕らえろ!反逆者だっ!」
ザッと動き出した警備隊にアデルが冷たい視線を向ける。
「お前らは侵略者だろ」
(出てきたのはとんだ小者だったな……まぁ、そのさらに裏にアリステア王国と教会が絡んでるのは間違いなさそうだが)
アデルはシャーリー男爵を淡々と縛り上げると、無造作にギルドの床に転がす。グェッと蛙みたいな声を上げたシャーリ男爵を無視し、
「おい、お前達、こいつを見張っといてくれ」
壁際の冒険者達に声をかけると、男達に向かって素早くポーションを放り投げた。
「は、はぁ?こ、これはポーションじゃねえかっ!」
「ああ。ギルドだから当然常備してるはずだが……ここには無いみたいだな」
「あ、ああ。こいつが来てから国中のポーションは押収されちまって、俺らには使わせて貰えねーんだ……ほ、本当に使っていいのか?」
「ああ。まだたっぷり持ってるから遠慮するな。ほら、ポーションが必要な奴は好きなだけ持っていけっ!」
アデルが机上にザァーっと並べたポーションを見て、冒険者たちが色めき立つ。
「あ、あんた、何者だ……」
「ば、馬鹿野郎!Sランク冒険者様だよ!さっきマリーちゃんが言ってただろ!」
「そ、そうか!そうだった!Sランク冒険者様が俺たちを助けに来てくれたんだな!」
ワッと上がる歓声にアデルは肩を竦める。
「別にお前らを助けようなんて思ってねぇよ。いいからさっさと傷を治せ」
ポーションを飲んだ冒険者たちはみるみる塞がっていく傷に歓声を挙げる。
(この状態の冒険者たちからポーションを奪っただとっ!一体どれぐらいの冒険者が犠牲になったんだ……くそっ)
神官もろくにいない国で、冒険者からポーションを奪うのは、もはや死ねと言っているようなものだ。アデルはあらためてポーションの必要性を痛感する。
「あ、あの!皆にポーションを分けていただきありがとうございます。なんとお礼をいって良いか……」
先ほど冒険者たちからマリーちゃんと呼ばれていた受付嬢は、机上に並べられたポーションを呆然と見つめていた。こんなに大量のポーションを惜し気もなく差し出すこの人はいったい何者なんだろう。
「あんたには別に聞きたいことがある。コイツらが連れてきた獣人たちの行方だ」
「……あの人たちは、大監獄の地下牢にまとめて捕らえられています……」
「地下牢だと!?罪もない獣人たちをか!?」
「はい。それと……命令を逆らった人間やその家族は全て地下牢に……私の、父も……」
「……親父さん、捕まってるのか?」
「……私の父は、このギルドのギルドマスターでした。でも、この男が命令した、この国の獣人たちを戦闘奴隷としてアリステア王国に送る計画に反対して投獄されたんです。一緒に反対してくれた冒険者たちの家族と一緒に。……私は、このギルドの補佐をするためだけに残されました」
「なるほどな……俺はこれから捕まった獣人たちを助けに行く。お前達はどうしたい?」
アデルの問い掛けに冒険者たちから声が上がる。
「俺は行く。もうこんなのはうんざりだ。俺は俺の家族を取り戻す」
「……俺も行くぜ。ちったぁ戦力になるだろ」
「俺は……ここに残ってマリーちゃんを守る。そのうち警備隊が飛んでくるだろうからな」
ちらりと男爵に目をやると、指輪を床に押し付けながら、ニヤリと笑っている。
(通信用の魔道具を隠し持ってたか……)
「ふんっ、もう遅いわ。すぐに警備隊が駆け付けてくるぞっ!アリステア王国の誇る精鋭部隊がなっ!」
言うが早いか、ギルドを包囲していた警備隊が一斉に雪崩れ込んでくる。
「ずいぶん早いご到着だな……よほど暇とみえる」
「うるさいっ!お、お前達!こいつらを全員捕らえろ!反逆者だっ!」
ザッと動き出した警備隊にアデルが冷たい視線を向ける。
「お前らは侵略者だろ」
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