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5 僕のお嫁さんになってくれる?

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◇◇◇

「ふん、舐めるな。相手が悪かったようだな」

 すっと剣を振るうと鞘に納めるライラ。そのあまりに鮮やかな手並みに、公爵家の護衛騎士たちは信じられないものを見るように目を見張った。

「お、おい、今、剣筋が見えたか?」

「い、いや、俺には何も……」

 ひそひそと話す護衛騎士たちに冷たい視線を投げるライラ。

(全く、公爵家の護衛騎士ともあろうものたちが、一人もアイアンベアの気配に気付かないとは情けない。やはり成人までジョシュア坊ちゃまをお守りできるのは私しかいないようだ)

 ライラは床に伏せているジョシュアをそっと抱き上げる。

「坊ちゃま。ここは危険です。お屋敷に帰りましょう」

 恐る恐る目を開けたジョシュアは、倒れているベアを見てまたヒッと声を上げ、目に一杯涙を溜めたままこくこくと頷くと、ライラにしっかりとしがみついた。

 ライラは満足げに頷くと、待機させていた馬車に戻る。途中、狩った獲物の処理を護衛騎士たちに頼むのも忘れない。なんの役にも立たなかった護衛騎士たちはせめて役に立とうと、我先に獲物の処理を始めた。

(ふむ。とんだ役立たず共だと思っていたが、私が坊ちゃまから目を離せない以上、こうして雑用を任せられる者たちがいるのは便利だな)

 そんなことを思われているとは露知らず。

 ライラはすっかり落ち込んでしまったジョシュアに、優しく声をかける。

「坊ちゃま。ライラは坊ちゃまがアイアンベアに負けないぐらい強くなるまで、ずっと坊ちゃまを御守り致しとうございます。これからも、坊ちゃまのお側に置いていただけますか?」

 ライラの言葉にパァーと顔を輝やかせるジョシュア。

「うん!うん!ずっと僕の側にいて!そ、そして……大きくなったら僕のお嫁さんになってくれる?」

 真っ赤になって告白するジョシュア。強くてかっこいいライラ。それは、ジョシュアの初恋だった。

 しかしライラは、

「残念ながらそれは致しかねます。あくまで私は坊ちゃまの専属メイドですので」

 とあっさり塩対応。またしても涙の止まらないジョシュアだった。
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