【本編完結】自分が作った世界で自分が理想の勇者を育てたら、予想以上にかっこよくて好きになっちゃいました

黒滝ヒロ

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第1章

20話 大蜘蛛と戦う俺

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新年おめでとうございます。今日は12時にももう1話更新します。よろしくお願いいたします。
ーーーーーーーーーー

「ぼ、僕は…その…魔法が得意な家系の生まれで…」
「なんて家名だ?余程有名な家柄だろう。もしかして貴族か?」
「ベレッタ。そこまでにしてくれ。タケルが困っている。」

答えに窮して困っている俺をクリスが助けてくれた。クリス…かっこいい。
思わず目をキラキラさせてクリスを見つめながら、心の中で保存と唱えた。
今度真面目に保存した画像を整理しないとな。俺のPCには保存したクリスのベストショットがすでに1000枚を超えている。

「あ、すまないな。あまりに破格外の実力だから驚いちまって。」
「いえ…すみません。あまりお話しできることがなくて。」
「そうか…話せるようになったらいつでも話しておくれ。あたしは待ってるから。」

そう言ってベレッタは俺の頭を優しく撫でる。
ごめんなさいベレッタ。辛い過去があるから話せないんじゃなくて、本当に何もないから話せないんだ。

少ししんみりした空気が漂ってしまったのが俺には気まずくて、早めの就寝を提案した。
何も起きないように念の為テント周辺には防御魔法を張って、一旦ログオフした。


ログオフしてVRを外すと外はもう真っ暗になっていた。
何か食べようとリビングに降りると、すでに両親が夕飯の支度をしてくれていた。
珍しく今日は帰りが早い。

夕飯の支度を手伝って二人と最近の話をする。どうも年末年始は今度は仕事で海外に行かないといけないらしい。
一人にするのもなんだから一緒にいくか?と提案されたが、俺は友達と初詣にいく約束をしているから、とかなんとか理由をつけて固辞した。

二人は忙しくてここ最近は俺に構う時間が減っているのをずいぶん気にしてくれているのだが、たまには二人でゆっくりと海外旅行のつもりで過ごしてほしい。俺も…大切な人がいるし。

なんとか二人を説得すると、せめてこれで美味しいものでも食べてくれと少し多めにお小遣いをもらった。
俺は心の中でガッツポーズを決める。
心配性の二人にはゲーム三昧であることはちょっと話しにくい。

話もそこそこにして、自分の部屋に戻った俺はまたVRを装着して、時間を翌日の朝にまで進めた。


この世界での翌日の朝。3人分の朝食をさっと作ってくれたクリスの朝食を美味しく平らげて、森へと入る。
もちろん野外でのクリスのクッキングの様子や、「召し上がれ」という姿などはしっかり保存している。
俺はどこまで行ってもクリスのファンなのだ。
ベレッタがやれやれという顔をしているが気にしない。

森の中では昨日少し偵察した通り、生き物の気配がしない。しかし、奥の方に異様な雰囲気が漂っている。
きっと大蜘蛛の繁殖によって、元々住んでいた生き物たちは逃げ出してしまったのだろう。

大蜘蛛は数匹逃すだけでも大量の子供を産むので、注意が必要なモンスターだ。
ここでレベル上げと同時にしっかり殲滅することが重要だ。
俺は視界の中でマップを展開し、大蜘蛛の位置を確認する。

うわ…えげつない量だわ。数十匹どころじゃないぞこれは…。

「二人とも大蜘蛛の位置を確認しました。ここから2時の方向に集団がいるようです。」
「わかった。」

クリスはすぐに反応して方向を変えて移動する。
ベレッタももう俺の能力についてツッコミを入れるのは諦めたようだ。はいはいと後に続く。

そこから20分ほど歩いたところで、ついに大蜘蛛と接触する。

「出たぞ!大蜘蛛だ!クリス、タケルわかってるな!」
「タケル!頼む。」
「はい。では、いきます!」

俺含めた3人に防御魔法、身体向上魔法、継続的な回復の魔法を次々とかける。
ベレッタはクリスに攻撃力の向上魔法を、クリスは自身の剣に炎を纏わせる。

大蜘蛛が吐く糸をクリスが絡め取って燃やし、ベレッタは隙をついて熱戦魔法で一気に頭を焼く。
集団で襲いかかる大蜘蛛でもスピードさえ抑えることができれば、急所をついて大きなダメージを与えることができる。

決着は割とすぐについて、30分くらいで大蜘蛛の集団の一つを殲滅することができた。
だが、この森に巣食う大蜘蛛の集団はこれだけではない。まだこのような集団があと10個は残っている。
それでもこの集団一つ潰したところで、クリスもベレッタもレベルが2上昇している。
この調子でどんどん大蜘蛛を倒していくぞ!


それから5日ほどかかり、大蜘蛛の集団をことごとく殲滅し終えた。
最初よりもどんどん殲滅する時間が短縮され、最終日には逃げた大蜘蛛まで仕留めることができた。
マップで確認し、大蜘蛛を指し示す赤い点が無くなったことを確認して、最初のベースキャンプまで3人で転移した。

「思ったよりなんとかなりましたね。」
「普通はこんなこと無茶な話なんだがね…アンタの補助魔法が強力で強くなっちまうんだ。なぜかあたしの魔力まで底上げされている気がするんだがね…?」

おっとバレていたか。ベレッタには魔力向上の魔法もついでにつけていた。ちょっぴりなんだけどね。

「そうでしたか?身体向上魔法のオプションなのかな?」
「んなわけねーだろ。それにどの魔法も詠唱なし…ったく。」

ベレッタはツッコミを諦めたようだ。うん。聞かれても困るのでそうしてください。

結局大蜘蛛退治でクリスはレベル35に、ベレッタはレベルが30に、俺はレベルが38になった。
何気に俺の方がレベルは上なんだよね。
だって守るはずの俺がクリスより弱かったら、だめだからな。

心配していたようなことは何も起きなかったので、俺は胸を撫で下ろした。
もうここでできることは無くなったことを確認して、俺たちはベースキャンプを片付け、王都近くの郊外にまで転移した。
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