【本編完結】自分が作った世界で自分が理想の勇者を育てたら、予想以上にかっこよくて好きになっちゃいました

黒滝ヒロ

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第2章

49話 審査会のその後について聞く俺

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「それでは採決を取ります!」

議長が木槌を振り上げ、ガベルを打ち鳴らした。

「キール第2王子殿下が誘拐事件に主犯として関わったとされる疑いについて、賛成の方は起立をお願いいたします。」

議場にいる議員はもはや誰も起立しなかった。いや、議案を提出したフリスト議員だけは立ち上がろうとしたが、その場の空気に押されて、ついに起立しなかった。

「満場一致で本案は否決されました!これにて審査会は終了とします!」

議長がガベルを打ち鳴らし、審査会は終了した。だが、その場からは誰も議員が立ち上がろうとしない。
フリスト議員だけが帰ろうとしたが、その場の空気に気づいて何事かと周りを見渡している。
突然、すらっとした長身で長い銀髪の議員が立ち上がり、その場にいる議員全員に向けて発言した。

「議長!ここで新しい議案の提出をいたします!議題はフリスト議員への辞職勧告ならびに貴族籍剥奪について!異議のある方はおられるか!」

立ち上がった人物は議案を発議した。急な発案にもかかわらず、誰も反対する者はいない。
誰も帰ろうとしなかったのは、この発議が行われるであろうことを予想していたからなのだろう。

「クリスさんこれは…」

突然始まったことに理解ができなかった俺はクリスに問うたが答えたのはキーレンだった。

「この場でフリスト議員は貴族籍を剥奪され、逮捕されるだろう。審査会での議論も虚偽に塗れていたことだし、いずれにせよ再起は難しいだろうな。だが、ここから先は私たちが関わる必要はない。」
「そうだな。後は議員たちでケリをつけるだろう。帰ろうか?タケル。」

帰ろうとした俺たちをキーレンが呼び止めた。

「ああ、帰る前にひとまずお礼を言わせてほしい。今回は私のために骨を折ってくれて本当にありがとう。おかげで私はようやく自由の身となることができたし、親帝国派の議員を黙らせることにも成功した。ジェレミアからの報告で事前に計画は聞いていたが、ここまでうまくいくとはな…。特にフランクの変貌ぶりには驚いた。」
「僕もびっくりしました。あそこまで変貌するとは思いませんでした。」
「まあ詳しい話はまたおいおい。これまでの調査の結果も知らせたいし、明日にはまた王宮にきてもらっていいか?」

キーレンの話に3人とも頷き、クリスと一緒に未だ議論の終わらない議場を後にした。






その翌日王宮にクリスとともに赴いて、以前来た時と同じ会議室に通された。
すでにキーレンは着席して待っていて、ジェレミア(執事の時はカールだったか)がお茶の準備をしている。

「昨日の今日で来てもらってすまない。あの後あったことやここまでのことを振り返っておきたくてね。」

すぐに着席を促され俺たちは指定された座席に座るとすぐにジェレミアがお茶の配膳をしてくれた。お礼を言うとにっこりと微笑んでくれた。彼は笑うとすごい美少年だと言うことに今更気がつく。ちょっとドキドキしてしまうが、いつも一緒にいるキーレンは何も感じないのだろうか。

「さて、昨日あの後何があったか一応共有しておこう。」

キーレンが昨日の出来事について話し始めた。

「まずフランク元騎士団長だが、昨日も含めてここ数日実に素直な態度だな。今回の誘拐事件だけでなく、これまで魔族と結託して行ってきた悪事については全て自白している。ここからわかったこともあるのだが、その話は後で話す。」

俺のお仕置きのあとフランクは改心して、監察部の事情聴取に素直に応じているらしい。長いこと魔族と結託していたようなので、これまで行ってきた多くの悪事が暴かれていくことだろう。

「昨日あの後議場では緊急議会が開かれて、フリスト議員の議員辞職勧告と貴族籍剥奪の決議がなされた。その場でフリスト議員は議員職を解かれ、騎士たちに連行されたようだ。もっとも昨日の議員たちの動きを主に先導していたのは教会と結びつきの強い議員が多かったようだ。我々は強い後ろ盾を得たようだな。」
「教会ですか?」
「今でこそ信仰が人心から薄まりつつあるが、それでも熱心な信仰者はどこにでもいる。議場でフリストを弾劾する発言をしていた人物がいただろう。彼は実は教皇猊下の実の兄上なのだ。」
「えええ!?そうなんですか?」

そのようなことは何も聞かされてはいなかったが、おそらく教皇たちが俺たちやキーレンを後押ししてくれたのだろう。教皇の俺を見る目には警戒が必要な気がするが、感謝しないといけない。

「ところで、フリストはどうなったんだ?だいぶ打ちひしがれたようだが…」
「ああ、フリストか…昨日の夜死んだよ…。ナイフを隠し持っていたらしい。自害だった。」
「ええ!?」
「それは急な話だね…遺書とかはなかったのかい?プライドは高そうだったけどね。」
「確かにな。遺書はなかった。今となっては確かではないが、相当ショックだったようだ。騎士たちが話しかけても何も言わず、ずっとぶつぶつと何か呟いていたらしい。」

キーレンを追い詰めたフリストは昨日の審査会での敗北がよほどショックだったのだろう。
それにこれまで犯してきたことを全部明かされたら、どちらにせよ死罪になっていたかもしれない。
そう考えて自ら死を選んでしまったのだろうか。

「そうなんですか…。」
「奴からはさらに情報を引き出すつもりだったのだが残念だ。庶民に落とされたことがショックなのか、それとも他の理由があるのか…今となってはわからないがな。」

会議室には沈黙が訪れる。間接的ではあるが、自分たちの反撃が彼を死に追いやったのは紛れもない事実だ。僕は後味の悪い気持ちで俯いてしまった。

「タケル。俺たちがしたことは正しかった。あそこで反撃しなければ罪のない人たちがもっと傷ついたかもしれない。タケルが落ち込む必要はない。」

クリスが俺の背中を撫でながら、励ましてくれる。背中に訪れたクリスの温もりにほっとする自分がいる。

「クリスの言うとおりだ。あそこではああするしかなかった。何より私はそのおかげで解放されたのだから、タケルたちには感謝している。ところで…一つ二つ気にかかっていることはあるんだが、いいだろうか?

コクリと頷く俺たちにキーレンは続ける。

「まず一つは風の魔法石なんてどこで手に入れたんだ?ジェレミア?」

おおっと?そこで風の魔法石に触れるの?あまり突っ込まれたくないなあ…。

「はい。こちらはタケル殿からお借りしたものです。今現在は証拠品として預かっていたのですが、手続きが終わり次第お返しするつもりです。」
「タケルが?風の魔法石といえばその一つで一財産に匹敵するほどの価値あるもの。タケルはこれをどうやって??」
「え~と。それはおじいちゃんの遺品の一つなんです。まだ何個かありますので、その一つは差し上げますよ。」
「いやいやいや、それはない。このような効果な品を国民から貰ったとなれば、賄賂と受け取られない。もらえないよ。」
「いやいや。そう言わずに。監査部に寄付したってことでいいですから。」
「いやいや。そうは言ってもだな…」
「貰っておけばいいじゃないか。あんたたちにとってはこれからも必要だろ?」

俺とキーレンのやりとりが漫才みたいになってきたところでベレッタが助け舟を出してくれた。
そうそう貰っておけばいいんだよ。いくらでも作れるんだから。

「しかしまだあるって言っていたな?タケルの御祖父のお名前を教えてもらえないか?」

さて困った。なぜならそんな人物はいないからだ。
キーレンの目俺を責めるような目ではないが、適当なことを言っても追求されそうだ。
確かに名前をいえないとなると怪しいしな…この後俺は適当な名前を言ってしまった。
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