魔女ネコのマタ旅

藤沢なお

文字の大きさ
7 / 16
鳥の村と港町

第三話

しおりを挟む

翌朝、村中の小鳥たちのさえずりで
目を覚ましたメラミは、外に出ると、
昨日、村の入口近くで見かけた
丸太置き場へ向かった。
丸太を一本拝借し、
その両端と自分のほうきの両端とを
ロープで固く結ぶ。

それから、ほうきにまたがって
ゆっくり宙に浮上してみた。
最初のうちはロープにぶらさがる
丸太の重みでふらつき、
うまくバランスをとれずにいたが、
そのうち慣れてくると
自在に飛び回れるようになった。

(うん、これなら大丈夫そうだにゃ)

ほうきでの試乗運転を終えると、
丸太を元の場所に返してから
村長の家に戻った。
客間に戻る途中、
台所からとてもいい匂いが
ただよってきたのでのぞいてみると、
エプロン姿のコウタが
朝食の準備をしているところだった。

「メラミさん、おはようございます」

「おはようございますにゃ」

コウタは、慣れた手つきで
まな板の上のキャベツを千切りにしている。
フライパンには目玉焼き、
お鍋には野菜のコンソメスープ、
テーブルの上のかごの中には、
焼きたての白パンとロールパン。

「おいしそうだにゃあ」

「もうすぐできあがりますよ」

あざやかな包丁さばきに見とれたメラミが、

「もしかして昨日の夕食も、
  コウタさんが作ってくれたのかにゃ?」

と尋ねると、
コウタは恥ずかしそうにうなずいた。

昨日の夕食もおいしかった。
メラミと三姉妹、村長とコウタの六人分。
ハンバーグにスパゲッティ、
ポタージュスープと山菜のピラフ、
チーズとハムの盛り合わせに、
デザートは甘いバニラアイス。
どれもこれもみんなおいしかった。

「みんな一人で作ったのかにゃ、
  すごいのにゃあ」

メラミは、
あらためて昨日の夕食のお礼を言った。

コウタはキャベツを切り終わると
お皿に盛り付け、冷蔵庫から
ガラスの器に入ったヨーグルトを取り出し、
ぶどうのジャムを上にのせたところで、

「僕は小さな頃に母を亡くしてね」

と自分のことを話しだした。

コウタの母親は料理が得意で、
コウタは幼い頃から
よく料理を教えてもらっていたそうだ。
病気で亡くなってしまった後も、
母親が書き残してくれた
レシピのメモを見ながら、
今も料理の勉強を続けているという。

「まあ僕は、まだぜんぜん、
  母の味には近づけていないのだけどね」

コウタのその言葉から、
母親への想いを感じとったメラミは、
胸が熱くなった。
コウタにとって母親は、
今でも料理の師匠のような、
会えなくても身近な
存在のままなんだなあと思った。

メラミは村長とコウタとともに
朝食を取ると、
今日は丸太運びをお手伝いしますのにゃ
と名乗り出た。
村長とコウタは心配したが、
丸太置き場で練習の成果を披露すると
安心してもらえたので、
小鳥のパティー、ピティー、プティーの
三姉妹と一緒に港町へ出発した。

今日も話し相手がいることに
喜んだ三姉妹は、
代わる代わるおしゃべりを楽しみ、
退屈するヒマもなく、
あっという間に港町へとたどり着いた。

「今日は魔女ネコさんも一緒に、
  丸太を持って来てくれたんだね」

港町の海岸近くにある、
木材の買い取り場では、
昨日と同じ買い取り担当の猫がいて、
メラミたちが運んだ
二本の丸太の対価を支払ってくれた。

「昨日は、つきそいで来ただけだと
  思っていたけど、
  今日は、鳥の村から一緒に、
  丸太を運んで来たのかい?」

買い取り担当の猫はキジトラ。
トラばあちゃんと同じ、
黒と茶のシマシマ模様だ。
港町の住民はどうやら全員猫のようで、
他の猫たちも見る限りは全員キジトラだ。
もしかしたら、トラばあちゃんは
この町の出身なのかもしれない。

「はい、そうですにゃ」

メラミは返事をしたついでに、
気になっていたことを尋ねてみた。

「鳥の村のこの丸太は、
  他のところの丸太よりも、
  値段が高いみたいだけど、もし、
  今よりもっとたくさん持ってこれたら、
  いくらで買い取ってもらえるのにゃ?」

担当のキジトラは、少し考えてから
手元の電卓をパチパチたたきだし、

「このくらいでどうかい?」

と、電卓の数字を見せて提案してきた。

その数字を見て、
メラミも三姉妹も、目を見開いて驚く。

「ほんとうにこの値段で
  買い取ってもらえるのにゃ?」

「おう! 今は船造りを急いでるからね。
  早く木材を集めて
  たくさん船を造るためには、
  このくらいの値段は出せるよ」

メラミと三姉妹は、村への帰り道で、
丸太運びの仕事について話し合った。
三姉妹だけでは、どうしたって
一本の丸太を運ぶのが精一杯。

今日は、メラミも一緒に運んだので、
一本追加されて丸太を二本、
売ることができた。

さっきの担当のキジトラさんは、
もし丸太をまとめて五本売ってくれるなら、
一本につき、今の倍の値段で買い取るよ
と言ってくれたのだ。
どうにかしてこれを実現させたい。

丸太を五本、今は二本、残りは三本。
足りないのは、あと三本を運ぶための手段。

メラミは一つ、ある案を思いついた。
そこで、三姉妹たちとは
別行動をとることにし、
ほうきのスピードを上げ
一足先に村に戻ると、
村長とコウタに丸太の値段の話と、
それを実現させるためのある提案をした。

「私もコウタも、
  それはぜんぜんかまわないのですが、
  メラミさんは大丈夫なのですか?」

提案と一緒に、
メラミがお城を出てきた理由も
聴かされた二人は、メラミのことを
心配して尋ねたが、

「問題ないですにゃあ」

メラミは、にやりと笑みを浮かべた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

今、この瞬間を走りゆく

佐々森りろ
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞 奨励賞】  皆様読んでくださり、応援、投票ありがとうございました!  小学校五年生の涼暮ミナは、父の知り合いの詩人・松風洋さんの住む東北に夏休みを利用して東京からやってきた。同い年の洋さんの孫のキカと、その友達ハヅキとアオイと仲良くなる。洋さんが初めて書いた物語を読ませてもらったミナは、みんなでその小説の通りに街を巡り、その中でそれぞれが抱いている見えない未来への不安や、過去の悲しみ、現実の自分と向き合っていく。  「時あかり、青嵐が吹いたら、一気に走り出せ」  合言葉を言いながら、もう使われていない古い鉄橋の上を走り抜ける覚悟を決めるが──  ひと夏の冒険ファンタジー

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

【完結】誰かの親切をあなたは覚えていますか?

なか
児童書・童話
私を作ってくれた 私らしくしてくれた あの優しい彼らを 忘れないためにこの作品を

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

処理中です...