幽霊当主にご用心!

椿

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 そして、数刻後。

「もういいよね?」
「ぁ…っ、へ…ぁ?」

 一瞬かけられた言葉を理解できなかった。
 絶頂の余韻が残る身体に埋められた複数の指の腹が、わかりやすく膨らんで敏感になってしまったしこりを優しくなでる。
 布団に仰向けになり、腹を見せた服従の格好で沈み込む身体は、その指の動きに合わせてピクンピクンと小刻みに腰を揺らしていた。

 あれから、指でひたすら後孔をほぐされていた俺。
 狭い入り口がミチミチに引っ張られて痛くても、中の弱いところはバレていて、そこを麻酔のように絶え間なく弄られながら、抜き差しが繰り返されていた。
 確かにそのやり方は有効だったように思う。
 イッている最中やその寸前などは、気持ちよすぎて何が何だかわからなくなるため、感じる痛みも鈍い。
 それを利用され、身体を最大限高められたその直後に指が増やされ、より酷く責められるのを繰り返し、そしてついに約束の四本目が窮屈ながらも馴染むようになってしまっていた。

「見て、指ふやけてる」

 御蔭さんは面白がるように、今しがた抜いた指を見せてくる。
 彼の指の腹は、中の粘液で水分を取られでもしたか、長湯でもしたようにしわしわになっていた。
 そうなってしまうほど長い時間中を弄られ続けていたことに、俺の顔は羞恥心で赤くなる。
 耐えられず咄嗟に目を逸らすが、それで咎められたりはしなかった。
 そのことに少しだけほっとして、しかしその直後、御蔭さんが自身の袴をくつろげるような気配を察したことで、そんなささやかな安心は軽く吹き飛ぶ。

「ぁ、……っ、ま、まって」
「もう指四本入ったよ?」
「っ、まだ、えっと……」

 声が震える。
 流石に、御蔭さんのイチモツを尻に入れるのはまずいと、今まで培ってきた常識や倫理観が警鐘を鳴らしていた。
 男同士というのもそうだが、俺自身、御蔭さんをそういう風には見れていなかったから、なんというか、まだ気持ちが追いついていなかったし、それに、自分が女役なのも複雑だった。
 それと、これは実際に指を入れられてみて初めて思ったことだが、……このまま組み敷かれて、御蔭さんの身体で自分が今以上に気持ちよくなってしまうかもしれないことが、純粋に怖かったのだ。
 俺はこの期に及んで、行為を中断できないか足掻こうとしていた。
 目線を左右にウロウロさせながら、何か諦めてもらえるような有効な言葉は無いか!?と頭の中をひっくり返して情報を探ってみる。
 すると、その途中で、

「──ああ、祝言あげたいってこと?」
「……へ?」
「乗り気だね~。まあ、だよね。優吾くん、僕のことすっげぇ好きだし」

 御蔭さんはそう言って、呆ける俺をよそに、にまりと口角をあげた。
 祝言?いやもちろん知識としてはある。夫婦としての契りを交わす儀式だ。
 ただ何度も言うように、俺と御蔭さんの関係にその儀式は結びつかないため、心から戸惑う。
 しかし、今はそんなことを言っている場合じゃない。むしろこれは好機だ。

「確か酒飲むんだよね?あったかなー、酒」
「あ、じゃ、じゃあ俺、酒、とってきます!炊事場に…、わっ!?」

 こちらから注意が逸れたのを狙って、俺はなんとか上半身を起こし、そのまま両手で後退るようにずりずり身体を引きずる。
 そのまま逃がしてもらえないだろうか。
 そんな淡い期待を持つ俺だったが、すぐさまこちらに目線を戻した御蔭さんに、布団についていた腕を引っ張られると、そのまま引き寄せられる。
 正面から拘束するみたく抱きすくめられて、唇が耳に触れそうな位置で囁かれた。

「駄目。逃がさない」
「──、」

 腰をぐっと掴まれ、御蔭さんの上に乗り上げるように寄せられる。
 ゴリ……。
 パンパンに張り詰めた、硬くて熱い雄の象徴が、俺の尻に押し付けられた。
 どくん、どくん、と脈打ちすら分かる興奮し切ったそれに、思わず息を飲む。
 重なり合った性器と穴が、ちゅぱ…ちゅぱ、と更なる密着を待ちかねるように卑猥な口づけを繰り返していた。
 散々指でほぐされた穴の淵は赤くぼってりと腫れていて、何もせずともじんじんと鈍い疼きを訴えてくる。勝手に腰が揺れると、そこは御蔭さんの勃起と擦れて、「こら、煽んないで」と悩ましい吐息を耳に吹き込まれた。
 そんなつもり、全くなかったのに。
 熱い秘部の擦れと、興奮しきった互いの呼吸。隙間なく密着して、しかしなお足りないというように搔き抱かれ、腕に閉じ込められてしまう身体。触れることが許された素肌の汗ばむ熱さに、脳がじん、と侵されて、言葉も出ないまま、とろけるように肩へと頬を預けてしまう。
 こんなの、だめなのに……。
 濃密な気配と、今からされてしまうことへの予想に、恐怖とも期待とも取れない感情でふるりと身体が震えた。

「御神酒ならあったよ。いつのか分かんないけど、まあこれでいいや」

 酒と杯を探し当てたらしい。
 俺を抱いたまま器用に液体を注いだ彼は、こく、と喉を湿らせる。
 そして、濡れた唇をその赤い下で扇状的に舐めとると、残った杯を俺に向けた。

「はい、半分」
「……っ」

 差し出されたそれに、残った理性が躊躇する。
 受け取れないでいる俺に、御蔭さんは首を傾げて、

「何?酒飲めない?」
「っ!……っあ、そ、そうなんです!だからっ、んむ゛!?」

 発言の途中で、杯を煽った御蔭さんが俺に口付けた。
 舌と共にトロ…、と口内へ流れ込んできたのは、彼の体温で少し温まった度数の高い酒。
 カッと喉を焼いたそれに咳き込みそうになって、たまらず御蔭さんの胸を押すが、それを許さないとでもいうように、後頭部に添えられていた手に力を入れられる。
 そうやって逃げ道を塞がれたまま、確実に酒が口から無くなるまで、ちゅ、ちゅ…、と舌を絡められた。
 こく。
 酒に触れた唾液すら全て嚥下しきり、解放された頃には、高濃度の酒と酸素不足の両方で頭がくらくらして、身体に力が入らなくなる。

「は……っ、ぁ…」
「……んで、何だっけ?誓いの言葉?」

 御蔭さんの声も、どこか夢の中みたく遠くに聞こえていた。

「優吾くん、大好きだよ。
 僕たち、死んでも一緒に居ようね」

 頬を染め、うっとりと微笑む御蔭さん。
 それは明らかに、俺への好意を示す態度で。
 今まで誰かにそんなことを言われたことも、思われたこともなかった俺は、一生では収まらないのだと告げるその真っ直ぐで一途な愛に、執着に、素直に胸を熱くした。
 ……いや、もしかするとそれは酒のせいかも。胸どころか全身が熱い。思考がまとまらない。
 どれが自分の本当の気持ちなのか、自分でもわからなかった。
 御蔭さんから「次優吾くんの番ね」と促されるが、朦朧としてしまって「ぁ、ぇ」と涎を垂らすばかりで、意味のある言葉なんて出てこない。
 ややあって、焦れた御蔭さんが、俺の顎を掴んで詰め寄る。

「僕のこと、愛してくれるんでしょ?」

 確信を持ったように言われるが、何故そんな認識になっているのか分からなかった。
 愛なんて、俺も語れるほど詳しいわけじゃない。
 でも、ここで御蔭さんを拒絶して、彼に悲しい顔をさせてしまうのだけは、漠然と避けたかった。

「愛、します……ちかいます」

 呂律の回らない拙い声。
 それでも御蔭さんには届いたようだ。
 そのまま勢いよく押し倒されて、足を大きく広げられる。覆い被さってきた体格のいい男に逃げ場を塞がれて、視界が翳った。
 俺は勢いに驚いて彼の胸を押し、本能的な恐怖に逃げようと身を捩るが、数秒足らずの揉み合いで、身体ごと押さえつけられてしまう。
 そしてついに、穴に肉棒が添えられて──、

「~~~ッあ゛……!」
「うわ、キッツ……」

 ずぶぶぶ……!
 指とは比にならない圧倒的な質量が、狭い中をみちみちと強引に割り広げて埋め込まれる。
 内臓を押されるようなひどい圧迫感が、全身の毛穴を開いて脂汗を噴き出させた。
 苦しい……!
 ぁ、が、と口は開いているものの、まともに呼吸すらできず、俺は御蔭さんの下で身体を強張らせる。

「あー…やっばい、なんだこれ。すっげーきもちい……」
「ふっ、……っふ、ゔ……」
「はぁ……、やっと、ひとつになれたね」

 御蔭さんは俺の頭を抱き込むと、その耳元でたまらないというようにため息を吐いた。
 その後、ゆっくりとあやすように髪を梳かれる。
 てっきり俺の状態など無視して色々進められるのだろうと思っていたが、予想に反して、御蔭さんは俺の息が整うのを待ってくれているようだった。
 ちゅ、と耳に甘く口付けられたり、温かい舌で縁を舐められたりしながら時間は過ぎ、俺も段々と正常に息が吸えるようになる。固くなっていた身体からも、ゆっくり力が抜けていっていた。
 事前に解されていたとはいえ、引き裂かれそうに痛かった入口部分は今もジンジンと痛みを主張するが、それにもだいぶ慣れる。
 すると今度は、中の刺激にも意識を向けられるようになった。
 指でたくさん弄られた敏感な部分が、張り詰めた怒張で耐えず押し潰されているような感覚に、ゾクゾク…ッ、と背筋を震わせる。
 それは確かな快感だった。
 無意識に中がきゅう、と御蔭さんの肉棒に縋り付くような動きをして、同時に食い込みを増した中に、脳が甘く痺れる。
 はあ…っ、と熱い吐息を御蔭さんの首に吹きつけたことで、御蔭さんは俺の様子が変わったことに気づいたのか、「動いていい?」と静かに確認されて、俺はよくわからない朦朧とした意識の中で小さく頷いた。

「あ…っ!?」

 ずちゅ…、ずろろ……ずぶ…っ、ぬちっ、ぬち…っ
 みっちりと隙間なく埋まった肉棒が、濡れた音を立ててゆっくり律動を繰り返す。
 入口に擦れる感覚が痛くて、窮屈な中に押し込まれるのも苦しかったが、それよりも気持ちのいいところをごりゅごりゅとカリで擦り上げられる快感の方が勝って、俺は身を捩ってそれを享受していた。
 揺さぶられるたびに馬鹿になっているみたいだった。
 硬度をます怒張を押し込まれる感覚に勝手に息がつまって、ぞくぞくと突き抜けるような刺激が腰に重くたまっていく。
 はっ、はぁっ、と互いの興奮し切った息遣いが至近距離で交じり合って、周囲に熱気を籠らせていた。
 薄目をあけると、御蔭さんの気持ちよさそうな顔が見える。途端にぎゅ、と胸が甘く絞られるような感覚を覚えて、同時に身体に降り積もっていた快感が、より熱を増したみたいに身体を侵した。
 段々と御蔭さんの腰つきも激しくなり、絶頂が近づく。

「ひっ、あ……ッ!ま、まって……、だ、めっ、…~~ッッ!」

 びゅくっ……、びゅる…っ
 白濁が飛び出る感覚。同時に身体を襲う強烈な快感に、ぎゅ~~っ、と中をきつく締め付けると、少し遅れて御蔭さんも射精した。
 動けないよう抱き込まれて、まるで俺が外に出した分を補充しているかのように、びゅるっ、びゅるるっ…!と濃い精液を注がれる。
 息を詰めた御蔭さんの震えも、怒張がビクつく振動も、精液を叩きつけられる感覚もはっきりとわかって、俺は御蔭さんのものにされてしまった実感に、脳味噌をじわりと熱く滲ませながら、長引く絶頂の余韻に身を震わせていた。
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