アメイジングノービス ~異世界でチートツールが使えたけど物理法則さんが邪魔をする~

逢須 かた丸

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3章 ダンジョンアタック

終息と何かの始まり

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「さて、どうやって誤魔化そうか?」


「うーん、一緒考えるとは言ったけど、流石にあれはなー……」


 スタンピードも、最後のベヒーモスで打ち止めになったようだった。
 残っていたモンスターもあらかたベヒーモスが轢き潰してしまったので、僅かに残ったモンスターを暴れ足りない冒険者達が打ち倒していき、今回のスタンピードは一人の死者を出すこともなく終息した。
 後片付けはあるが、報酬などの話は後日行われるそうで、土塁の上に居た最前線組は、先に引き上げて良いということになった。
 俺とアリーセは一足先に白兎亭に帰ってきたが、こっそり帰ろうと思ってたのに、皆が声をかけて来るものだから、ジークフリード様にも気づかれ、もの凄くいい笑顔で、後日、OHANASHIしようとなってしまったのである。
 街では、スタンピードが無事に被害なく収束したことで、ちょっとしたお祭り騒ぎみたいになっているが、俺とアリーセは白兎亭の俺の部屋で、絶賛言い訳考え大会開催中である。


「そもそも、あの魔道具はなんなの?」


「えーと、領主の館の地下にあった都市防衛魔道具のなんとかラートアーってのと同じものを魔改造したもの……だな」


「都市防衛魔道具!? それってスタンピードの時に街を覆ってた結界を作る魔道具よね? そんなものいつ手に入れたのよ」


 アリーセが驚きながらも呆れるという器用な事をして、俺に当然の質問をしてくる。


「スタンピード前に呼び出しくらって、魔晶石が欲しいって言うから何に使うのか聞いたら、その魔道具を起動するのに必要だっていうんだよ、で、俺のことよそに言わないでね? って条件で1個あげたら、動かすところ見せてくれたからコッソリ解析して、矢と同じように複製したって感じかな」


「矢と同じようにって、矢だけじゃなくて何でも複製出来ちゃうの?」


 アリーセは魔法に存在するクリエイトアローの上位互換のスキルか何かだと思っていたようだ。
 ドラゴン倒したのも物を増やすのも全部同じ『チートツール』だとは思っていないのだろう。


「ああ、解析したものなら何でも増やせる」


「条件は?」


 条件とか別にないよな? ああ、でも知らないものは無理か。


「知っているものであることと、知らないものなら解析したものを別のスキルで写し取ること……かな? あとアイテムボックスに入るものなら、解析しなくても増やせる」


「まさか、お金や魔晶石なんかも増やせるわけ?」


「むしろそれはいとも簡単に……」


 カンストしてます。 世界中でインフレさせることができるかもしれない。


「……まあ、うすうすわかってたけど、デタラメにも程があるわね」


 心底呆れた顔をされてしまった。
 呆れ顔にまだ上があったとは……。


「なんかスマン」


「イオリが居れば世界征服とか出来るんじゃない?」


「いや、そんな大それたことをする気は無いぞ、冒険したりとか世界を見たりとかはしてみたいけど」


 好き好んで苦労を背負いたくないし、領地1つで苦労してる人を知ってるからな。


「イオリにその気が無いのは知ってるけど、そういう事したがってる連中とかに知られると大変でしょって話よ」


「そういう頭のおかしな奴ってか、組織でもあんの?」


 征服王とか秘密結社とか魔王とか?
 魔王だと征服ってより、滅ぼしに来そうだが。


「そういう組織が出てきては潰されるってのを繰り返してるわよ?」


「まじか、一国程度ならまだしも世界征服とか現実味も旨味もない事したがるとか、ゴブリンよりアホなんじゃねーの?」


「現実味が無いのはわかるけど、旨味も無いの?」


「そりゃそうだろ、そもそも征服したあとが問題だ。言葉も文化も気候も考え方も違う地域をどうやって纏めるんだよ、どっかで反乱が起きてそれを把握する頃には、征服した地域の1つ2つは無くなって、はい征服できてませーんってなるぞ」


 俺は懇切丁寧に世界征服の難しさや意味の無さ、その後想定される苦労等を語った。


「ほ、滅ぼすとか?」


「何もなくない所を支配して何が楽しいんだよ、新しく入植させるったって、すぐに人が足らなくなる。 ん、話がそれたな、それでどうやって誤魔化すかなんだが……」


「ああ、なんの話をしてたか忘れるところだったわ」


 俺とアリーセは夜が明けるまで、どう誤魔化すか話し合いを続け、見知った魔道具を複製したり改造する錬金術系統のスキルを持っているということにしようとなった。
 それも無条件に複製するのではなく、魔晶石が必要ということにして、おいそれと使えるものではないという設定だ。
 魔晶石をたくさん持っていたのも、このスキルを使うためだという建前にも良さそうだ。細かいところや矛盾は、憶えていないで押し通すしか無いだろうが……。




 あれだけ戦った後なのに、朝になるまで話し合ってしまったので、流石に今からでも寝ようかとアリーセが俺の部屋から出た所で、廊下の掃除をしていたクーリアおばさんに出くわした。


「あらあ? おやおや? 二人はやっぱりそういう間柄だったんだねぇ」


 あ、絶対コレなんか勘違いしている。 


「そういう間柄?」


 アリーセは眠いのか、ゆうべはおたのしみでしたね、って言われてるってことに気がついて無いようだが、クーリアおばさんはすごいニヤニヤしてるし、若いって良いねぇとか言ってるし、いずれ気が付きそうだな……。


「いやいや、俺たちまだそういう関係じゃないですから!」


「へぇ『まだ』ねぇ、はいはい、そういうことにしとくよ、誰にも言わないから安心おし」


 いやいやそれ、いつの間にか広まってるパターンじゃないか?
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