アメイジングノービス ~異世界でチートツールが使えたけど物理法則さんが邪魔をする~

逢須 かた丸

文字の大きさ
95 / 250
3章 ダンジョンアタック

教会へ行こう

しおりを挟む
 車酔いが酷いときに無理やり寝てやり過ごすのと同じように、束の間の睡眠をとった。
 目覚めの気分は最悪だったが、ローコンディションポーションを1本いって気持ちを落ち着かせる。
 ストレスに抜群の効果があるコンディションポーションであるが、普通の状態異常ではないステータスアップ時の苦痛や不快感は軽減してくれないのが恨めしい。

「あいかわらず、この違和感にはすぐは慣れないな、ダンジョンを探しに行くまでに、少しでも動き回って慣らさないと」

 ステータスを変えてすぐなので、手足の長さが変わってしまったかの様な違和感が結構ある。
 運動不足であれば、足がもつれるとか、思った程体が動かないといった事が起こるが、ステータスをアップした場合も似た事が起きる。
 段差を登ろうとして、足が上がらす躓く代わりに、足が上がり過ぎて踏み外すのである。
 つまり、どういうことかと言うと、今俺は白兎亭の食堂に続く階段を、おじいちゃんの様に慎重に下っていたりする。
 普段は全く気にしないが、今は猛烈に手すりが欲しいと思っている。

「あんた何やってんだい?」

 掃除をしていたクーリアおばさんに発見されてしまった。

「あーいや、スタンピードで急激にレベルアップしたせいで、まだ体が馴染んでないですよ、あははは」

「そーいや最後に出てきたデカブツはアンタが倒したって話だったね。まったく人は見かけによらないね」

 自分のレベルを吹聴して回っているわけでは無いので、わりとあっさり信じて貰えたようだ。
 何か余計な事を口走らないように、スタンピードの時のことは、自分からは極力言わないようにしているのも、多分良かったのだろう。

「他の人達って、こういう時とどう対処してるんでしょうかね?」

「そうだねぇ、訓練場で体を動かしまくるのが手っ取り早いけど、酷い場合は教会に行って治療を頼む場合もあるね」

 なんと教会での治療って、そんなのにも対応していたのか。
 何か特別な事をしているのなら、やってもらいに行って、自分でも出来るようにすれば、もっとステータスを気軽に上げられるようぬなるかもしれないな。

「なるほど、それじゃあさっそく教会に行ってみます」

「気をつけて行っといで、知らない人に着いていったりしちゃ駄目だからね」

 子供じゃないのだが、なんとなくクーリアおばさんには言い返しにくいので、お礼を言って教会に向かう。
 そーいや、なんだかんだで、ちっとも教会に行ってなかったな。


 ゆっくり歩く意識をしながら、教会に向うと、ゆっくり歩いたつもりなのに、結構早く教会に着いてしまった。
 まあ、この辺の感覚はステータスアップ前からもあったけど。

 教会につくと、シスター達が一斉に俺の方を注目してきた。
 自意識過剰とかではなく、あからさまにガン見されている。
 ナニコレコワイ。

 以前も対応してくれた年配のシスターが近づいて来て、深々と頭を下げてきた。

「治療途中であるにもかかわらず、暫くお目見えにならなかったようですが、何かこちらに不手際でもありましたでしょうか?」

「え? いえ、治療に不満はまったくありませんでしたし、可能なら毎日でも来たかったくらいですよ。ちょっと忙しかっただけです」

 突然の謝罪に驚いた。 記憶喪失と言うのが嘘なので実際来る必要が無かった事と、なんだかんだで結構忙しかっただけだ。

「そうでしたか、イーリスの治療で何かご不満がおありでしたら、遠慮なさらずに言ってくだされば対応させていただきますので、遠慮なく仰ってください」

「いえいえ、彼女の治療は大変素晴らしいものでした。 本当に忙しかっただけですので、ご安心ください」

 目の前のシスターが、謝罪の言葉を重ねてくるが、来なかっただけであのシスターが咎められるのは流石に可愛そうだ。
 問題ありません本日もお願いします。と、金貨を2枚渡す。
 銀貨で良いらしいけど、ココで前回より少ない金額を出すと、不満があったように見えてしまうので、増やしておく。
 あんなに女神女神言ってたシスターが全く宗教色なく淡々と謝罪を重ねて来て、ちょっと怖かったというわけでは無い。……たぶん。
 高い金額出してるからってあそこまでなるものか?
 1回12万円出して、定期的に来たら月36万円から48万円を出す程度って考えたらそこまででも…………あるな……。
 日本円では考えてみたら、俺は超お得意様じゃねーか。 

 金額を受け取ったシスターが、うやうやしく頭を下げて、案内の者を呼ぶと言い残し何度も頭をペコペコしながら下がっていった。

 前回とは違う若いシスターに案内され、前も見た気がするモサモサな犬っぽい人や、頭に角が生えている牛っぽい人、全身鱗なトカゲっぽい人等の会話を聞きながら奥へと進む。
「今日はあのやろー来てねーな」
「ああ、なんか風邪引いたらしいぞ」
 とか聞こえてくる、風邪引いたんならむしろ来いや……。

 前回と同じ一番奥の突き当りのドアの前でシスターが立ち止まった。

「どうぞ、こちらからお入りください」

 目の前のドアを引いてくれたので、お礼を言って中に入る。
 そこには前回同様に裾の長い白い司祭服を着た金髪でおかっぱの少女が立っていた。
 ゴールデンレトリバーっぽい犬の獣人のイーリスだ。

「お久しぶりです。 ずいぶんと間が空きましたがその後お変わりはありませんか?」

「純粋に忙しかっただけでしたが、ご心配をおかけしました。 記憶の方は、例えば、ポーションについては憶えているけど、魔晶石に関する事だは、ごっそり憶えていないとか、項目毎に抜けているといった感じですね」

 一応、記憶喪失設定は通しておく。

「そうですか、では間も空きましたし、初回よりも少し強めに回復魔法をかけてみましょう」

「ああ、それと、スタンピードで一気にレベルが上がって、あちこち違和感が出てしまったので、そちらの緩和もお願いしたいのですが、大丈夫ですか?」

 記憶喪失は仮病?だが、こっちはガチで辛いからな。

「あ、はい大丈夫です! レベルアップ時の不調や違和感は、酷い人だと寝込む程ですからね。 頭の方が終わりしだい、そちらの治療もさせていただきますね」

 ベッドに寝かされ、目を閉じたイーリスがゴニョゴニョと詠唱か祈りの様なものを唱え始める。
 ぽわぽわとした温かい光が集まって来て、気持ちが楽なったような気がしてくる。

「はい、頭の方は終わりです」

 ん? ずいぶんと物足りないような……。
 あ、首の治療をしてもらってないからか。

「……ありがとうございます」

「では、体の違和感ですが、どの辺りが一番辛いですか?」

「首です」

「首ですか? 大抵みなさん手や足等に症状が出るのですが……」

 おっと、いかん思わず即答してしまった。

「実際のところ全身違和感だらけなんですけど、以前怪我を負っていたのか、首から肩にかけての部分が比較的辛いという事です」

「なるほどわかりました。そういう事でしたら、全身に対してと特に首と肩は重点的にやって行きましょう」

「よろしくお願いします!」

 俺は期待に股間……じゃなかった、胸を膨らませながら、イーリスに身を任せるのだった。
しおりを挟む
感想 139

あなたにおすすめの小説

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...