アメイジングノービス ~異世界でチートツールが使えたけど物理法則さんが邪魔をする~

逢須 かた丸

文字の大きさ
126 / 250
4章 王都

船旅

しおりを挟む
アメイジングノービス_119


 無事に終えたダンジョンの調査から数ヶ月、あの後、ダンジョンの呼び名が『イオリの大穴ダンジョン』とか呼ばれるようになったり、クーリアおばさんが一時『白兎亭』を知人に任せ、パトリックさんを|持って(・・・)ダンジョンに突撃してしまい昇降機で行ける45階層より下の50階層のフロアボスを倒したことで、それ以降の階層存在が明らかとなったりと、イロイロあったが俺は今ダンジョンやフェルスホルストの街を離れ船上の人となっている。


 それというのも、領主のジークフリード様のご息女である、コリンナ様が王都にある魔法学院に入学する事になったので、その護衛依頼と言う事でアリーセ、エーリカ、ワトスン達と来ているのである。


 王都へ向かうには陸路でおおよそ30日、海路利用しておおよそ20日と、より早くより安全に王都に向かう為、海路が使われている。
 海路でも天候や潮の流れなどで時間がかかってしまうこともあるが、陸路を行けば当然他の領主が治める場所も幾つか通る必要が出てきて、貴族ともなればその都度歓待を受けたり贈り物をしたりと面倒くさい為、ジークフリード様の非常に強い進めで海路で行くこととなったのである。
 
 お貴族様の護衛に冒険者が付くというのもおかしな話ではあるが、向かっている魔法学院と言うのは、数代前の王が広くその才能を集めるという名目で身分を問わず入学する事が出来ると定め、学園内では身分に差をつけないとしたので、護衛や身の回りの世話をする人員に制限がかけられているのである。
 実際は貴族同士の見栄合戦で「うちは子供の為にこれだけしてやるんだぞ」という分かり易いバロメーターとして、やたらと護衛や使用人を増やしてくる貴族が後を絶たず、次第にエスカレートしていき収集がつかなくなった為に設けられた制度であるらしい。
 護衛や使用人の人数制限が設けられると、それはそれで、実際の身の安全の心配をする必要が出てきたので、抜け道として冒険者を雇うという方法を取るようになったという経緯のようだ。
 それはそれで、今度は雇う冒険者の数で競われそうではあるが、子供の護衛を任せるほど信用と信頼がもてる冒険者がそんなに沢山居るはずもなく、今のところ大きな問題は起きていないそうだ。


 そんなわけで、船で移動中なわけである。
 船は木造の帆船で、それほど大きくはない。 まあ、大きくはないというのは元の世界でフェリーとか客船を知っているからこそそう言えるだけで、この世界の人達からすれば十分すぎるほど大きい船ではあるのだが、木造のこんな船で外洋を航海するとなると金属の大きな船を知っている身としては頼りなさを感じてしまうのは仕方がないだろう。
 元の世界の帆船と違うことといえば、自然任せではなく、魔法で風を吹かせて進む事ができるので、風の無い凪の時でも船を動かすことが出来るという点だろうか?
 
 船上では食事の時間以外は、ぶっちゃけやることがないので、コリンナ様からのお願いで魔法の講義をすることになった。


「よく言われる属性というのは、イメージがしやすいというだけのもので、火が得意だから水が苦手になるという法則はありません。 ただの思いこみです。 風属性、つまり気体である水素と酸素を、火属性で燃焼させると、水属性というか水そのものが出来ますので、この属性という考え方はあくまでもイメージがしやすいので広まったとだけ頭の片隅に入れておけば良いでしょう。 現に違う解釈で魔法を行うエーリカも炎魔法が得意ではありますが、他の魔法もそつなく使用できます」


「ということは、すべての魔法は無属性ということなのでしょうか?」






「コリンナ様の場合、魔法のイメージが納得の行く現象でないと魔法が発動しませんので、無属性という分類も、すでに属性にとらわれているわけですから属性という考え自体を改めてしまった方が良いでしょう。 そうですね、一般に言う属性魔法は、便宜上『物理魔法』とでも言っておけば良いんじゃないでしょうか?」


 この世界の魔法は、コツさえ掴めば結構大雑把なイメージでも、よくわからない不思議物質だかなんだかが働いて発動するのだが、コリンナ様は魔法の才能があるにも関わらずずっと魔法が使えなかった。
 なぜ?なんで?という気持ちが強いのだろう、この世界の魔法使い達が教える精霊がどうのとか属性がどうのという曖昧なイメージの持ち方ではコリンナ様はうまく魔法を発動させられなかったようだ。
 実際に『火属性の魔石』という『~属性の魔石』なんてもの存在しているので、属性というものにとらわれがちであるが、それがあるから火がつくわけでも無ければ、風が吹く訳でもないし、電池のような使い方が主なためイメージが出来ないドツボにハマってしまったのだろう。
 その点において、科学の実験というのは、誰がやっても同じ手順ならば概ね同じ結果になるというものなので、自分がやっても同じ結果だったということで理解がしやすかったようだ。
 まあ、流石に「位置エネルギー」等の話までは理解が追いついていないが、原子は分子については、物を燃やすと燃えた分だけ軽くなるということを見せた後に、スチールウールを燃やして、燃やす前より酸素が結合することで重くなるという実験をやってみせただけなのだが、大雑把にではあるが理解が出来ているようだ。
  ペットボトルロケットや空気砲を作って遊んだりもしたが、コリンナ様は物覚えと理解が早いので、こちらとしても教え甲斐がある。


 それと同時にコリンナ様に講義の時に同席して一緒に話を聞いていたエーリカは、体の中での魔力の扱い方や集中方法など、俺の知らない不思議パワーや不思議物質の扱い方を講義して貰っている。 
 たまに襲ってくる海のモンスターは、ほぼ全てエーリカによって一掃されているが、俺の講義の後にぶっ放した魔法に関しては魔力の効率が良くなっただとか、威力が上がったとか物騒な感謝の報告を受ける事も良くあるが、俺も不思議パワーの使い方を教えてもらっているので、言わばWINWINの関係だ。


 ちなみにワトスンは、俺がスクリューを教えたせいで船室にこもって試作品の作成を行っている。
 ジェットパックの推進力を使えばスクリューがなくとも進みそうだが、あまりスピードが出ないようで、実用化出来ていないそうでスクリューに対して「これは革命だー」とか叫んでいた。


 アリーセは手持ち無沙汰なのか、船員の手伝いを行っているようだ。
 とくにアイテムボックスに真水を取り込む術をマスターしたので、そういうスキルだということにして海水から真水を作り、海上では貴重な水の節約が出来るため、船員達に随分と重宝されているようだ。
 海水だから水だけでなく塩も直にアイテムボックスに収納出来るとアリーセに教えたら。 眉間にシワが寄って「水だけでいっぱいいっぱいよ」と、詳しい説明を拒否されてしまった。


 そんなわけで、何事もなく航海は順調に進んでいる。




「海賊船だ!!」


 たった今、航海が順調では無くなったようだ。
しおりを挟む
感想 139

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...