アメイジングノービス ~異世界でチートツールが使えたけど物理法則さんが邪魔をする~

逢須 かた丸

文字の大きさ
170 / 250
4章 王都

セカンドファミリア

しおりを挟む
「つい最近クレバーファーラットを使い魔にしたので、一応わかりますけど、まさか俺と契約するつもりですか?」

「じゅっ、従属するわけではないからな!? 我が力を貸してやろうと言うのだ! ……悪い話ではあるまい?」

 最後の一言で、パールがちょっと不安そうにこちらを見てきた。
 繋がりを持つことで、契約者の事がなんとなく理解できるって部分が必要なのか。
 マルが元の世界のことをなんとなく知っていて、日本語めいた言葉を喋るのも契約で出来た繋がりのせいだったな。
 確かにそれなら大雑把にではあるが、意思の疎通もしやすい……。

「ほれ、さっさと手を出さんか!」

「げふん!?」

 考え込んでいる俺にしびれを切らせ強引に契約をしようとして、ドスドスと突っ込んで来たパールに衝突した。
 タックルとかそういう生半可なものではなく、トラックに跳ねられたかのような衝撃を受けて吹き飛び並んでいた椅子をなぎ倒して床と熱いキスをかわした。

「す、すまぬ。 なるほど、力を抑えぬとこういうことになるのだな……。 生きておるか?」

「HPを上げていなかったら即死だった……」

 危うく他の異世界に転生するところだった。
 衝突してみて良く解った、見た目は小柄な少女であるが、やはり相当な重量である。 床がきしむわけだ……。
 あの体積にそれだけの重量があるというのがいったいどういう仕組でそうなっているのか、まことに摩訶不思議であるが、これは早急に対処しないと危険だな。

「よし、我はこのまま動かぬから、そちらから手を置け。 何をしている、我は動かぬと言っただろう。 さっさとせぬとまたこちらから行くぞ!」

「それって、脅迫じゃないですかー!?」

 また吹き飛ばされてはたまらないので、慌てて手を合わせる。
 マルの時よりも遥かに強い力を感じる。

「さあ、名をつけよ」

「ええ!? いきなり名前つけろってパターン多すぎだろ!? そんなんポンポン思いついてたまるか!」

「ならば、今ままの名前で構わぬから、名を呼べ」

「大雑把だな!? それで良いなら、パールで」

「その名を受け入れよう。 我はパールだ」

 名を受け入れた途端、手から俺の魔力っぽい何かギュンギュンと吸い取られていく感じがする。
 マルの時はほっこりと温かい感じだったが、こちらは業務用の掃除機のように吸い取られてなんだか急激に寒くなってきた。

「って、これいつまで魔力が吸い取られて行くんだ!?」

「我の魔力量と同等までだな」

「人に25万もMPねーからあああ!!」

 MP尽きるとHPが減っていくんだったか? こんなのと普通に契約してたらミイラになるわ!
 MPも減らないようにしておいて本当に良かった……。

「ふむ、魔力の比率は、そのまま契約の優位さに比例するのだが、異世界の者は我に匹敵する魔力をもつのか。 足りない分は魔晶石で補おうと思ったのだが必要無さそうだな」

 いつまで続くのかわからなかった、エナジードレインな儀式は20分程続いて終了した。
 ってか、魔晶石使えるなら使ってほしかったのだが……。

「MPを上げていなかったら即死だった……」

 エネルギーが移動する際に、ロスか何かで熱も移動したようで、奥歯がカチカチするくらいに寒い。

「おお、知識としては知っていたが実際やるのは初めてだ。 漠然とではあるがお主の知っている物はわかるな、なかなか新鮮で面白い感覚だな。 って、なんじゃ、この服は使用人の服ではないか。 お主、我を従属させるつもりだったのか?」

「そそそれしか、ななな無かった、だけで……。 べべべ別に、たたた他意は、ななな無い」

 体温を奪われガタガタと震えながら、答えた。
 たまたまあったのがメイド服だっただけだ。

「まあ良い、街に紛れるには都合は良さそうだしの。 であれば、敬語はおかしかろう、普段通りの話し方で良いぞ。 ……なんぞ小刻みに震えているようだが、寒いのか? ここは人の感覚でもそれほど寒くは無かろう?」

「ままま魔力と一緒に、ねねね熱も奪われたようで、すすす凄く寒い!!」

 人の体温は、5度上がるよりも1度下がる方が危険だと言われている。
 今の俺の体温が一体どのくらい下がってしまったのかは不明だが、普通で考えたら大分危険な領域に達していると思われる。
 体温を上げるコードなんてわからないし、その魔法もわからないので、さっさと風呂に入るかか鍋でも食って温まりたい所だ。

「ふむ、契約時にその様な弊害があるとは知らなんだ」

「さささっさと壊した物を弁償して謝って、ななな何か温かい物でも食いに行こう」

「それはナイスアイディアだの。 人の飯がどんな物か気になってはおったのだ」

 コイツ元のドラゴン並に食うんじゃ無いだろうな?
 1回の食事で牛一頭とか言われても困るぞ?

「ともあれ、どの程度まで力を制御すれば良いのかはわかった。 少し待っておれ」

 パールは自分自身に身体強化とは逆の身体弱体化の魔法その場で新たに構築し、それを何重にも自身にかけた。
 その場で都合の良い魔法を構築出来るとか、その辺りは流石! と言っても良いかもしれない。

「むぅ、これは随分と動き難いものだな。 身体が重く感じて、まるで何かの特訓をしているかのようだの」

 魔法がうまく機能していることは、使い魔の繋がりから感じることが出来た。
 身体が重いのは、感じではなく物理的に重いせいなのでうっかり子供とか跳ね飛ばさないように注意が必要だろうな……。
 しかし、弱体化しても重さは変わらんのか。
 力が弱くなっても、ウエイトが大きい事で何か問題が起きそうだ。
 床板踏み抜くとかはやりそうだから気をつけて貰わねば。

「これでよし、主よ飯に行こうぞ!」

「ああコラ勝手に行くな」

 パールが優雅さのかけらもない、ドスドスとした足取りで部屋のドアを勢い良く開ける。
 入口付近にシスターが控えていると言っていたが、今は居ないようだ。

 と、思ったら、シスターがこちらの向かって土下座をカマしていた。

「え? 何やってんの!? むしろ謝るのはこっちの方なのに!?」

 あまりの事に震えも止まる。 土下座したシスターがピクリとも動かないので、事情を聞いてみようと思ったら、そのままの姿勢で意識を失っていた。

「これは、結界石が壊れたせいでリーラ様の神気にあてられたようだの。 生命には危険は無い」

 この世界の知的生命体は、女神であるリーラ様に逆らう事はできないようで、無意識に服従したくなってしまうのだそうだ。
 ある意味俺を除けば、リーラ様に一番近いところに居たとも言える。
 パールとの繋がりで何となく伝わって来たイメージは、アイドルのコンサートとかで興奮しすぎて失神してしまうのと同じ様な状態のようだ。
 確かにこれは気軽に降臨しちゃうと混乱を起こすな。
 仕方が無いので、誰か他の人を呼んでこようと思い教会の礼拝堂の方へ向って行く。
 そこで、俺はとんでもない光景を目にしてしまった。

「一人残らず、さっきまで居た部屋の方向に土下座して気絶してるううううう!?」

「結界石が無い状態で、リーラ様が長く居すぎたようだな」

「ヨシ、面倒事になる予感しかしないから逃げよう!」

「ふむ、一理あるの、そうしよう」

 急いで教会から出る。

「教会の外までかよ!?」

 外に出たら出たで、見渡す限りの人が教会に向って土下座をしていたのである。
 これ、どこまで被害が広がってるんだ!?
しおりを挟む
感想 139

あなたにおすすめの小説

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...